2001.11.03

今日一緒だった客室乗務員(CA)の勤務は、09:50に伊丹空港に出社し、20:10に関空で終わるパターン。
彼女達は関空の近くに住んでいるので、伊丹空港へバスで移動するのだが、朝のラッシュに重なり渋滞が予想される。
そのため充分余裕のある時間帯のバスに乗らなくてはならない。
今日の勤務をするために、朝起きたのが05:30という子がいた。
8時の難波発のバスに乗った子もいた。
きっと遅くとも朝06:00頃には起きて、帰宅するのは21:00頃なのだろう。
大変だ・・・・・。

停滞前線を伴った低気圧の雲の中を行ったり来たり2往復したが、ずっとガタガタ揺れた。
シートベルト・サインはつきっぱなしの一日だった。

ある便に、よく飛行機を利用される方に与えられる
Super Flyers Card(SFC)と呼ばれる Card をお持ちのお客さんが乗ってきた。
いわばお得意さんである。
ここから先の話は、全て CA から聞いた話。

そのお客さんはいつも空港内のラウンジでチェックインするのだが、ラウンジの係員の対応が悪いと文句を言っていた。
沢山荷物を抱え込んで搭乗してきた彼の席は1A。
一列目の一番左の席で、そこは3人がけになっている。
1B、1C、つまり彼の右隣の席には、優先搭乗で先に乗っていた車椅子のお客さんが、お連れさんと並んで座っていた。
1B、彼のすぐ隣がお連れさん、一席離れて1Cには足の不自由なお客さんが座っていたのだ。
そ1Bと1Cに座っている人達を見るなり、いきなりイヤーな顔をして不機嫌そうに CA に言った。
荷物が多いので、後ろの横が開いている席に座ると。
でも、彼が移りたかったシートへ移動すると、飛行機の重心位置が変わってしまい、
操縦性に影響を及ぼす可能性があっため、CA はその旨お客さんに伝え、
機長に許可を取ってから移動してくれるように丁重にお願いした。
ところがこのお客さんは 「もう、いいっ!」 と怒って、1Aに座った。

ラウンジでチェックインしたとき、私がこんなに荷物を持っているのに、
何故、私の隣の席をブロックして空席を確保しなかったのだ、と彼は CA につっかかった。
つまり、自分のために2席確保しとけ、という意味である。
CA は何も悪いことをしていない。
それでも CA に文句を言うのはどういうつもりなのだろう?

しかも、何故、足元に荷物を置けない一番前の席にわざわざ私を座らせるよう手配したのだ、とご立腹。
でも、それはきっと SFC のお客様で、優遇するという意味を込めて、
VIP などが使用する1Aの、一番良いとされる席にしてあげよう、という
地上スタッフの好意によるものだったように思われる。

さて、1Aに座ったこのお客さんが、自分の隣の席、つまり1Bに人が座っているのだ?と文句を言えば、
1Bに座った足の不自由なお客さんのお連れさんは気分が良いはずがない。
今度は1Bのお客さんが1Aのお客さんの無礼さにブチ切れてしまい、喧嘩が始まった。
1Cに座った足の不自由なお客さんは、その間ずっとうつむき、黙りこくったまま居づらそうにしていたと言う。

足の不自由なお客様は、飛行機の乗り降りが楽なように、との配慮から、最前列の通路側、
つまり1Cか1Dの席になるように地上係員は手配するのだ。
では、何故1Cではなく、1Dにアサインされなかったのか?
それは分からない。

1Aと1Bのお客さんのやり取りは周りの人に筒抜けで、みなさん非常に迷惑そうな様子だったが、
中でも同列の1Eに座っていた1Aと同年代らしき男性が、
何度も身を乗り出して1A、1Bのお客さんの方を見ていた。

この1Aのお客さんは、CA にノートを渡した。
機長にサインをして欲しい、とのことで、航空ファンの方にはそういう方が時々いる。
そんな時は、どんなに短い路線で息つく暇もないほど忙しくても、なんとか時間を作って書いてあげるようにしている。
今日は短い路線であり、しかも上空ではずっと揺れが予想され、ノートに字を書くには不可能なことが分かっていた。
そこで、私は忙しい機長に代わって、
頑張って地上にいる間に彼が要求した全ての事項を彼のノートに記入した。
キャプテンはカバンから、こういうときのために持ち歩いているANKの飛行機のシールを1枚取り出してくれた。
それをノートに貼って完成!
まさか、そのお客さんがみんなに迷惑をかけているとも知らず、丁寧に心をこめて奉仕してしまった。

エンジンをかける前からクレームをつけて隣のお客さん達を不愉快な気分にさせ、
上空では寝ていた(寝たふり?)ものの、降りるときにも文句を言い出した。
足の不自由なお客さんは、搭乗旅客全員が降りてから最後にゆっくり降りていただく。
1Aのお客さんはかなりご立腹だったので、少しでも早く降りて頂いて機嫌を直してもらおうと
VIP 待遇で最初に降りるように CA は促したのだが、最後に降りるからいいっ!、と言ったっまま席に居座った。
さらにその後 CA とのやり取りは続いたが、1Bのお客さんは怒りをかみ殺しているような表情をしていた。

彼は最前列に座っていたため、他のお客さん達は中央の通路を通って前方の出口から出て行く際、
みんな振り返って眺めていたと言う。 これでは足の不自由なお客さんは、いい迷惑である。
その中の一人、おばさんが、「大人気ないねェ。」と CA に言い残して降りて行った。
心遣い、という言葉、一瞬でも彼の心によぎっただろうか?

今日は、ただでさけ気流が悪く、お客さんへのサービスも行き届かず、みなさんにご迷惑をお掛けしていた。
さらに最前列に座っている1Aのお客さんが大声で足の不自由なお客さんとお連れの方を相手にクレームをつけて、
周りの人達の気分を害してしまったように思われ心が痛む。

私達、パイロットは直接お客さんにクレームをつけられることはない。
CA って大変な仕事なんだなぁ、とつくづく思えた。

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私が札幌でYSに乗務していた頃の話。 釧路発丘珠(札幌)行きの便での出来事。

YS−11 に搭乗するには、折畳式の飛行機のドアから伸びる階段を上がる。
この階段の最上段の部分は、畳み込まれる際に持ちあがるような仕組みになっているのだが、
ここに足を引っ掛けるとこの部分が持ちあがり、弁慶の泣き所をぶつけてしまう可能性がある。
この部分は飛行機の構造上、仕方のないことなのだが、時々、本当にたまにここに足を引っ掛けるお客さんがいる。
さらに弁慶の泣き所を打ってしまう本当にアンラッキーなお客さんが、ごくまれにいる。

乗客全員の搭乗が終わり、CA がコックピットに報告に来た。
そのとき、あるお客さんが足をぶつけてしまい、ご立腹である旨、私達に伝えた。
なんでここが持ち上がるんだ! だから足をぶつけてしまったではないか!」 とお客さんに怒鳴られたので、
皆様がつまずかれるわけではありませんが・・・・・。」 と CA は思わずムッと来て言ってしまった。
これはマズイ。
これではまるで、あなたが悪いのですよ、と指摘しているようにとれる。
とりあえずお客さんは着席した、と CA は私達に告げた。

上空に行って CA が先程のお客さんに謝り、足の様子を聞きに行くと彼曰く、「ダメかもしれない。
すぐに CA はインターフォンでコックピットに連絡してきた。

丘珠空港に到着し、お客さんが降機していった。
と、何やらコックピットのドアの向こう側でもめている。
さっきのお客さんだろうなぁ・・・・・。
次第に男性の声が大きくなり、しまいには怒鳴り声に変わった。
貴様ぁっ〜! ・・・・・・・。
普段は温厚なキャプテン。
険しい顔になり・・・・・、こんなに優しい、感情をあらわにしないキャプテンが怒ったぞ、と分かる表情になった。
俺、後ろ行ってくるわ。
極めて穏やかに、でも厳しい口調でそう言い残して席を立った。
まだ新米だった私は、このキャプテンの行動にビビッてしまったが、とりあえずカンパニー無線で連絡を入れた。

しばらくしてキャプテンは戻ってきた。
何とか引き取っていただいたとのことだった。

CA に対して彼は怒鳴ったらしい。
お前のその態度はなんだぁ! まるで俺が悪いといっているみたいじゃないか!
 俺は釧路では有名で権力のある医者で○○という。 この路線にはしょっちゅう乗っているお得意さんだぞ。
 おまえ、名前はなんていうんだ? 名刺を出せ。
 おまえが二度と飛べないように、会社を首になるようにしてやるから覚えていろ!

そういう類のことを口走ったとか。
CA の言い方は確かに悪かった。
でも、俺は権力があるのでお前を首にしてやる、はないだろー!

いつも笑顔の、強い性格の彼女が泣いてしまった・・・・・・。
こういうとき、どう振舞えば良いのか?
う〜ん、難しい・・・・・。



2001.11.04

アンビリーバボーの心霊写真の特集で、家の壁に貼ってあるポスターから霊は出入りする、
と言っていたのを聞いて思い出した。

学生時代、実家での出来事。
深夜、目が覚めると、そこには白い影があった。
私の体に覆い被さるようなその影を、シバシバする目をこらして見つめていると、
それは次第に人間の形に見えてきた。
ベットの横に立ち、身を乗り出して私の顔を覗きこんでいる!
エッ!
これって・・・・幽霊???
ふーん・・・・。
で、なんか用があって僕チンを起こしたのかなぁ・・・・・・。
白い影の顔らしきあたりの、恐らく目があるであろう場所を、ジーーーーッ と私も見返した。

にらめっこはしばらく続いたが、白い影は徐々に浮き上がるように遠ざかり、
スーッ と後ずさりするように部屋を横切って、壁に吸い込まれるように消えていった。
私は手元のスイッチで部屋の明かりをつけると、影が吸い込まれた場所にはポスターがあったのだ。
プレイボーイについていた、私好みの美人女性の大きなヌードのポスターだった。

その後、もろん私は電気を消してすぐに寝てしまった。

ポスターの目に霊は吸い寄せられ、そこから出たり入ったりする、とアンビリーバボーで言っていた。
う〜ん、私を見つめていたポスターの霊は、もしかすると美女の妖精?だったのだろうか?



2001.11.07

高知空港で地上滑走中、滑走路より北側の芝生にトンビが6羽ほどいるのを目撃。
私達が近づくと、北へ向かって(滑走路から遠ざかるように)飛び立ち逃げていった。

滑走路の手前まで来ると、着陸機があるので滑走路の手前で待機するように管制官から指示を受けた。
向かって左手には伊丹から飛んできたうちのA320が海上に見えた。
正面の滑走路に目を移し、さらに右の方へ視線を移して行った。
ありゃ、500ft Maker と呼ばれる滑走路のマーキング(道路に書かれる「止まれ」のペイントのようなもの)の
ちょっと手前でトンビが2羽日向ぼっこしている。
着陸するとき、丁度飛び立ったらエンジンに吸い込む可能性があるな・・・・。
「キャプテン、着陸機に教えといてあげますね。」
カンパニー無線で一報入れた。
「こちら ANK 702便。 一方送信です。 500フット・マーカーの所にトンビが2羽います。」

次第に着陸機が接近し、滑走路末端を通過した。
すると、500ft マーカーにいた2羽のトンビの他に、滑走路脇の芝生からいきなり5〜6羽のトンビが飛び立った。
ウヒャ〜ッ??!!
私は、ゴーアラウンドするかなぁ、と思って見ていたが、
舞い上がった沢山のトンビの間をすり抜けるように、きれいにタッチダウン!
飛行機はトンビを避けながら着陸することはない。
たまたま飛行機が通った一直線上に、トンビ達の隙間があったのだ。
珍しい光景を目の当たりにした。
1羽のトンビも傷つけることなく、飛行機もダメージなしで、良かった、良かった♪

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後で客室乗務員(CA)に聞いた話。
お客さんが搭乗中のこと。
CA がキャビン・アナウンスをしている最中、自分の声以外にバックグラウンドで何か聞こえたらしい。
お客さんも気付いてけげんな顔をしながら、首をかしげ、天井を見る。
頭上のスピーカーから聞こえる CA の声に隠れて、男性の声が・・・・。
しかも英語だ!
よ〜く、耳をすまして聞いていた CA は見破った。
これは管制官と通信しているキャプテンの音だ!
えっ?
でも、なんでキャビン・アナウンスに混じって聞こえるの?
もちろん CA には分からないし、私達パイロットも全然気がついていない。

当便が着陸後、乗客が全員降機し終え、CA がコックピットに入ってきた時に私達に教えてくれた。

もちろん整備さんにもそのことを伝えた。
このとき操縦していたのは私で、ATC を担当していたのはキャプテン。
キャプテン側の無線機を使って送信していた。

次便はキャプテンの操縦で、私が無線を担当していた。
私の無線機から送信したにもかかわらず、
やはり同じようにキャビン・アナウンスの最中にバックグラウンドに私の声が聞こえたらしい。
当然、着陸後整備さんに伝えたが、どうするとそのような混信が起こりえるのか?分からないと言う。
しかも、混信があるのはお客さんが搭乗している最中のアナウンス時だけであり、
その後のアナウンス時には混信しないのだ。
実に不思議な現象。
整備さんは、この謎々にどういった解答を出したのか?
とても興味があるのだが、私の勤務はそこで終わってしまったため、知る由も無い。



2001.11.13

今日乗る飛行機に乗り乗りこみ、コックピットに入った。
まず、上着を脱ぎ、ハンガーにかける・・・・・。
あれっ?
ハンガーはキャプテン用とコーパイ用、2つはあるはずなのだが、1つしかない。
これに私が上着をかけるとキャプテンはハンガーにかけられない。
上着をしまう場所には、色々な非常用装備品がしまってあるのだが、手探りで底の奥の方を探す。
おっかしいなぁ、大抵は1つハンガーが落っこちてるんだけど、ないぞ??
仕方ない、たたんで座席の後ろのどこかに置いておけばいいか・・・・。
洋服をかける場所の少し内側の床の部分に、何かが落ちているのを発見。
裏に安全ピンがある、プラスチックの小さなプレート。
手にとると、それは A社の乗員が胸につけるネームプレートだった!
あっれぇー?
これってなくすと確か始末書もんだったよなぁ。
外部点検を終えてコックピットに入ってきたキャプテンに聞くと、
入社直後にネームプレートをなくし始末書を書いたことがあるとのことだった。
後でディスパッチに届けてあげようっと♪
(結局、届けるのを100%忘れて持って帰ってきてしまった。 後日、持っていく予定!)

出発前の準備をしながら、エンジンをかける前のちょっとした時間のあるとき、
外を見ると小さな飛行機が伊丹空港の Runway 32R に降りてきた。
無茶苦茶遅いっ!って、あれ、モーターグライダーじゃん!!
グライダー(滑空機)はエンジンのある飛行機に引っ張ってもらったり、
地上に設置された強力なバネに引っ張ってもらって上空に行き、
後は上昇気流を見つけながらエンジンなしで滑空する飛行機だ。
そんなグライダーの中に、エンジンを持っているものがある。
自力で離陸、上昇し、その後エンジンを切って滑空するのだ!
遊ぶために飛行機を買うなら、この動力付き滑空機、モーターグライダーが一番良いと、
以前あるキャプテンが言っていた。
フワッといかにも軽そうに、長い翼をしならせて着陸した。
伊丹空港は旅客機ばかりで、滅多に小さな飛行機を見かけない。
とても珍しいものを見ることができた。

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今日の 伊丹 → 高知 の巡航高度は 12,000ft。
いつもは 16,000ft であり、今日は無線が届きにくい。
(低高度だと、山などの障害物に邪魔をされ、無線の電波が遠くまで届かないことがある。)
そこで、高知空港の電波を使わず、近畿のカンパニーで高知空港の最新の天気をもらった。

高知空港までの距離が40マイルを切った。
そろそろ降りないといけないのになぁ。
関空の管制官は降下するように指示を出さないし、キャプテンも降下の許可をもらって、と私に言わない。
おっかしいなぁ。
忘れてるのかなぁ・・・・・。
高知まであと38マイル、37マイル、36マイル、まだ降ろさないのかな?
35マイル、34マイル・・・・・。
あっ、そうか!
16,000ft じゃなかった。
12,000ft を飛んでるんじゃん。
12,000ft だったら 27マイルから降下しても間に合うもんな。
すっかり勘違いしていた私。

時々隣に座っているよく知っているキャプテンの顔を見ながら、名前が思い出せなくなるときあがる。
キャプテンにそう言うと、キャプテンはもっとスゴイことを言っていた。
飛行機を離れてトイレに行ったときなど、今日一緒に飛んでるコーパイさん誰だったっけ?
って分からなくなることがあるらしい。
まだ40才前なのに・・・・。

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夜の便で高知空港に着陸後、外部点検をするために外に出ると整備さんに呼ばれた。
着陸するとき鳥に当たりました?」(整備さん)
「いえ、そんなことないと思いますけど、でも暗かったのでよく分かりません。 どうしたのですか?」
整備さんについて右のメイン・ギヤ(タイヤ)に行った。
ブレーキ・ディスクに懐中電灯の光を当てて見せてくれた。
ほら、なんかゲロみたいなのがくっついているでしょ?」(整備さん)
「ありゃりゃ、ほんとだ。 これって、小鳥ですかねぇ。」
いや〜、これが何かは分かりません。 じゃあ、雑巾でふき取っておきますので。」(整備さん)
ブレーキ・パッドに幅10cm程度の汚れがついていた。
それが何かは分からないが、小鳥ちゃんじゃなければ良いのだが・・・・・・。



2001.11.17   関空で自社便、連続3機♪

関空へ Visual Approach Runway 24。

関空の管制官と無線交信を始めたが、関空はすいているようだ♪
よっしゃ〜、アプローチは1番だぜ。
と、突然、計器上に TCAS が先行機の機影を映した。
10マイルしか離れていない前方にいる!
高度は?
へっ?
私達より 7,000ft も下にいるの?
随分と低いなぁ。
なんでこんなに早く高度を降ろしたんだろう?
私達は 17,000ft で飛んでいたのだが、その飛行機は 10,000ft 付近を飛んでいる。
10,000ft での最高飛行速度は 250kt。
私達はその時 300kt。
同速度で飛んでいたとして、1,000ft の高度差で約 5kt 高い高度にいる飛行機の相対速度は速い。
7,000ft 違うと、5kt × 7,000ft = 35kt も違うことになる。
先行機が 250kt で飛んでいるとすると、私達の相対速度は 335kt ということになる。
これでは10マイルの距離が、アッという間につまってしまう。
私達が減速しようとした時、丁度管制官に呼ばれ、250kt へ減速するよう指示された。
管制官はさらに先行機を呼び出した。
それはうちの722便(高松→関空)、B737 だった。
なるほど、距離の短い路線を飛んでいるので、低高度を飛んでいるのだ。
早目に高度を降ろしたわけではなかった。
722便に対して管制官は、再び指示するまで 250kt 以下に減速しないように指示した。

722便にピッタリくっついて Visual Approach を開始。
722便の後すぐに着陸できると思い、所定の場所で空気抵抗の大きいギア(タイヤ)を降ろした。
すると、管制官に言われた。
722便の着陸後、我々の着陸前に出発着を1機離陸させたいらしい。
もぉー、そういうことは早く言ってぇ〜。
ギア降ろしちゃったじゃ〜ん。
滑走路を見ると、そこには青い A320 がいる!
どうやらうちの271便のようだ。
自社便だと分かると急に寛大になってしまう。
271便が遅れたら大変だし、私達は定刻に着けそうだし、着陸が後回しになってもOK!

羽田や伊丹では、うちの会社の飛行機の離着陸は他社に比べて少ない。
関空という国際空港で、自社の飛行機が3機も続けて離着陸するのは、なかなか気持ちの良いものだ。
大空港を占領してしまったような気分になる。

勤務が終了後、私は DH(便乗)で関空から高知へ移動した。
このとき乗務していたパイロットと客室乗務員(CA)のうちの一人が、たまたま夫婦だった。
乗員と CA が結婚するケースは少なくないが、夫婦で同じ便に乗務しているのを見るのは、私にとっては初体験。
だからといって特別に何があるわけでもなく、プロとして仕事を遂行する2人の姿は単なる仕事上の同僚という感じで、
当然のことながら、私には少し不思議な光景だった。

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高知の町を歩きながら何気なくダイエーに入った。
普段、決して立ち止まることのない洋服売り場を通過しようとしたのだが、
オール1,000円の看板が目に入ってしまった。

安いものに弱い私。
安いし、好きな服だし、体にピッタリだし、買っちゃえ!
そうして買った服が、家には山のようにある。
500円、1,000円、高くても1,500円程度の服だからと言って、買えばどんどん貯まってしまうし、
数を買えば支払った金額の合計も馬鹿にならない。
結婚して、妻に指摘されて初めてこの事実に私は気がついた・・・・・。

ベージュの紐でウエストを結わくカーゴ・パンツが1,000円かぁ。
冬に毎日穿いているユニクロで買ったスウェット・パンツは3枚もあるけど、いっぱい毛玉ができてるんだよなぁ。
家着ならいいけど、あれで外を歩くの、ちょっと気が引けるかなぁ。
このカーゴ・パンツなら穿いてて楽だから家着でもOKだし、外着にもなるよなぁ。
でも他にも穿くパンツはいっぱいあるし、買って帰ったらまた怒られるかなぁ。 どうしよっかなぁ。
これって、もともといくらだったんだ? と、値札に貼られた1,000円のシールを剥がすと、2,900円だったようだ。
う〜ん、6割5歩引きかぁ。

実は、欲しいと思ったカーゴ・パンツがもう1着あったのだ。
値札に貼られた1,000円のシールを剥がすと、こちらは定価3,900円だったようで、なかなかいい生地だ。
これも欲しいけど、2着も買って帰ったら、絶対文句言うだろうなぁ。
それに、少しきつめだし、これを穿くぐらいなら、きっとジーンズを穿いているだろうなぁ。

よーっし、決めた。
紐でウエスト結わく方だけ買って帰ーろうっと。
更衣室を出たが、やはり決心がつかない。
一旦商品を2つとも戻し、店内の別のフロアをウロウロし、再び戻ってきた。
そして、やっぱり紐の方だけ買うことにしたのだった。
テレカ買うと思えば大したことないじゃん。
たった1枚分だよ?
こうして我が家の洋服ダンスは、無意味にギュウギュウ詰めになっていくのであった。



2001.11.18    裸で出勤?

今朝、ホテルを出発する時刻は 06:35 だった。
朝ご飯をホテルで食べるので、レストランには 06:10 頃までに行けば良い、と考えていた。
私は朝食に行く時刻の約40分前には起きるようにしている。
つまり、05:30 には目覚ましをセットしていなくてはならない。
ところが、昨晩、何を勘違いしたか、私はアラームを 05:55 にセットしていた。

アラームが鳴る前 05:45 に目が覚めた。
寝覚めが良く、朝からハイテンション。
シャワーを浴びた後、便座に座って新聞を読みふける。
でも、何か変だ。
高知発の朝一の便に乗務する朝は、いつもとてつもなく眠いのに、今日は調子が良すぎる。
?????
今日は、ホテルを出るのが 06:35。 だから・・・・、朝ご飯は 06:10 でしょ。
で、今は・・・・ 06:17??!!
ゲェ〜、なんでぇー!!??
そうだ、06:35 までにレストランに行けば良いと、どっかで勘違いしたんだな。
クッソォー!!
間に合わないじゃんかよー!
朝から腹ペコだし、バイキングで食いまくってやろうと思ったのに、20分はないと食べ尽くせんぞぉー!
う○こなんてしてる場合じゃな〜い!!

一昨日、左足の親指の先端を大怪我し、バンドエイドでは小さすぎるし、包帯巻くと靴が履けない。
ティッシュを折りたたんで親指にかぶせ、家から持ってきた普通のセロテープでグルグル巻きにした。
服、靴、垢すりタオル、歯ブラシ、剃刀、脱ぎ捨てた下着やワイシャツを片っ端からカバンにぶち込んだ。
靴下はいて、ズボンをはいて、ポケットに財布を突っ込んで、ネクタイは片手に、カバンを持って出ようとした。
いかん、Yシャツ着るのを忘れていた!!
上半身はだかでどーすんだよっ!!

ホテル内のレストランについたのは 06:22。
あと15分もないのにキャプテンはまだいない!
まっ、いっか。
とりあえず自分だけでも食っとかんと・・・・・。
お盆に乗りきらないほど食料を積み上げている最中に、キャプテンがようやくレストランに到着。
話をする暇もないほど、手当たり次第に飲み込むように食べた。
“早食い”は私達乗員の必須条件。
ほぼ同時刻に高知空港を出発する A社の乗員さん達の姿はなかった。
一人分の食事が手をつけていない状態で置いてあった。
きっと、起きるのが遅れて朝食ぬきになってしまったんだろうなぁ・・・・。
って言うか、私達も早く出発しなくっちゃ♪!?



2001.11.21   国内線は?

今日はスタンバイ。

伊丹空港は2つのビルに分かれている。
車、バス、モノレールで空港内に入ると、手前のターミナルがANA、奥のターミナルがJAL、JASだ。
私は2つのターミナルの真中辺りを歩いていた。

そこへ、モノレールから降りてきたおじさんに話し掛けられた。
背広を着た50才ほどの紳士だが、どうも旅慣れていないようでオドオドしていた。

あのぉ〜・・・・、国内線はここでいいんですよね?
「はっ? 国内線と言われますと?」
あっ、え〜と。 伊丹・・・・・・・・・・・・・、大分なんですが・・・・・・・・・。
???????・・・・・・・・・・・・
そうか、きっと航空会社のことが言いたいのだな。
「え〜と、エアライン・・・・・・・・・。」
 (じゃ分からないか。 なんて言えばいいんだ? いきなり全日空と言えばANAひいきみたいだし・・・・。)
何故か適切な言葉が出てこないまま、しばらく向き合った状態で沈黙が続いた。
え〜〜〜、ぜ、ぜ、全日空は?
「あ、ハイ、全日空でしたらあちらのターミナルになります♪」
はぁ、ありがとうございます。
これが本当に日本人同士の会話なのか?と思えるような、たどたどしい会話になってしまった(苦笑)。
どちらの航空会社をご利用ですか? と言えば良かったのか。

さっ、と足早に立ち去った男性の後ろ姿を微笑ましく眺めながら、気がついた。
もうダメだなぁ。
こういうときに、「いってらっしゃい♪」 とか 「お気をつけて♪」 と無意識に出てくるようにならないといかんなぁ。
場面に応じて適正な言葉が、考えなくても自然に出てくるようになりたいものだ。



2001.11.25

やっとサングラスが完成した。
2年ほど前から、作ろう、作ろうと思いつつ、うまく作れる自信がなくて後回しにしていた。
製作行程もアップしましたので、興味のある方、見てみてくださいね♪
明日これをかけて乗務するのが、とっても楽しみ・・・・・・。

サングラス




2001.11.26   犬みたいですね♪

愛読書の中に、D・カーネギー著の「カーネギー人生論」という本がある。
高校時代に出会った本で、記憶するほど何度も読み返している。
その中の一節に、犬になろう、という言葉がある。
犬は誰を見ても嬉しそうに尻尾を振って寄っていく。
(もちろん中には吠えたり、噛み付いたり、愛想の悪い犬もいるが)
そんな愛らしい犬を見ると、私達は気持ちが和む。
どんなにイヤなことがあった一日でも、笑顔を取り戻すことが出来るのだ。
もし私達が犬のように無条件に相手を好きになれたらどうだろう?
プライドのような類、全てを捨てて、誰にでも尻尾を振ってついていけたら、相手に嫌われることってあるだろうか?
相手に好かれたい一心でお世辞を言ったり、手土産を持参するよりも効果があるのではないだろうか?
そういったことが「カーネギー人生論」には書かれていた。

16才の時にその本に出会って以来、
もう17年間もその言葉を心に刻みながら生きてきたつもりだが、なかなか思うようにいかないものだ。

先日、関空で仲良くしている(そう思っているのは私だけ?)客室乗務員(CA)に久しぶりに会った。
笑顔の素敵なその彼女に私はいたずら(チョッカイ?、でもセクハラではない)をするのが好きで、
その日もコンピューターに向かって何かをしている彼女にソーッと近づいて行った。
上半身をかがめて姿勢を低くし、出来るだけ静かに歩み寄ったが、途中で気がつかれてしまった。
ディスプレーを見ながら真剣なまなざしだった彼女の表情は、一瞬にしていつもの笑顔に変わった。
そして言った。
なおさんって、犬みたいですよねぇ♪
??????

これって喜ぶべきことなのだろうか?
「犬みたい」、って、行動、動作が怪しくって、犬みたいってこと??
イヤイヤ、きっとカーネギーさんが唱えているように、犬になりきれているってことだろう。
そうだ、そうだ。
きっとそうだ。
そういうことにしておこう。



2001.11.27   ♪夫はぁ〜仕事とぉ〜に、皿洗いぃ〜♪

今日、妻は友人と3人で京都に遊びに行ったのだが、妻は09:00に家を出る予定だった。
私は仕事で09:20に家を出る予定。
私は朝07:00に目が覚め、妻は07:30に目覚ましで起床。
朝ご飯を食べ、妻は家を出る支度を開始した。
それにしても時間がかかること!
どうして女性はこうも時間をかけるのだろうか?

ようやく化粧が終わったかと思えば、
んーー、今日はこの服だと寒いかなぁ・・・・・。」 と、洋服を着替え始める。
そんなもの前日に全て決めて、置いておけばいいのに、とつい思ってしまう。
私なら床に落ちているズボンをはき、洗濯籠に入っているT−シャツの中から、最も臭くないものを取り出し、
靴下を履けば準備完了〜♪
家を出よう!と思ってから、玄関を出るまで1〜2分もあれば充分だ。
(どこまでが本当なのかは、な・い・しょ♪)

「今日は何時に帰ってくるのぉ〜?」
夕方には帰るよ。
妻はドタバタ支度をしながら返事した。
「メシはうちで食べるんでしょ?」
うん、その予定。

麦茶を飲むためキッチンへ行った。
そこには朝ご飯に使った皿が散乱していた。
お昼前から京都に行って歩き回り、夕方帰ってきたら疲れてるだろうなぁ。
夕飯はどうするんだろう?
今日、私はステイなので自分の分だけ残り物で適当に済ますのだろうか?
もし帰ってきてから食べるものを用意するなら、面倒だろうなぁ。
妻を見ると、まだ出かける前の準備をしている。
時計を見た。
う〜ん・・・・・、きっとお皿は洗わずに出るつもりだろうなぁ。
疲れて帰ってから、台所が汚れてるのと、片付いてるのとでは、やっぱ、片付いてる方が楽だよなぁ。
その上、食事の準備までするとなると・・・・・。

普段は家のことはほとんど何もしない私だが、出勤まで少し時間があったのでお皿を洗ってあげることにした。
黙って洗うのもつまらないので、即興で作曲し鼻歌を歌いながら洗ってみた。
「妻はぁ〜、京都へぇ〜、遊びに行きぃ〜♪ 夫はぁ〜、仕事とぉ〜に、皿洗いぃ〜♪」
もちろん妻に聞こえるように歌った。
そんな歌、歌うんやったら私が洗うよぉ〜〜〜!!」 と、妻は大爆笑しながらキッチンへ飛んで来た。