2002.01.02

初仕事をした。
とはいっても Safety コーパイ(右席に座って操縦する訓練生のサポート役)としてである。
なかなか出来のよい訓練生なので、安心して見ていられるし、私の出る幕は全くない。
先輩として後で教えてあげるべき事項、アドバイスなどもあまりなく、私は後方のジャンプシートにただじっと座っているだけだ。

西高東低の冬型の気圧配置で、上空に強い寒気が入っていた。
日本海側は雪が降っており、九州にも雪がパラついていた。
私達が向かった熊本も同じような状況だったが、着陸に支障があるような天候ではなかった。
地上は風が強く、関空での離着陸は大きく揺れた。
いつか自分がキャプテンになったら、今日のように気流が悪くても着陸しなくてはいけないんだよなぁ・・・・・・。
その後、便乗で羽田へ向かったが、羽田の着陸前も結構揺れた。
ジャンボであれだけ揺れるんだから、小型機のA320だったらもっと大変なのだろう。

今朝は5時に起きて6時前に朝食を取った。
昼は関空で若干時間があったが、安く昼ご飯を食べることのできる場所が少ない。
東京には14:15に到着するので、実家には15:30までにはつくだろう。
おせち料理もあるはずだし、昼食を抜いて我慢することにした。

実家で母親の手料理を食べ、その後父親のパソコンの修復作業をした。
フロッピー・ディスク・ドライブの調子が悪い。 他のパソコンでフォーマットしたFDを認識できないのだ。
仕方ないので、2000個近くあるドキュメントを他のパソコンに転送し、リカバリーを2度試したものの直らなかった。
あちこちいじくってみたがダメ。
夕食も風呂の時間も惜しんで20:00まで作業したが直せなかった。
正月にせっかく実家に帰ってこれたのに、ゆっくりできなかった・・・・・・。


2002.01.03

羽田 → 中標津 の初便、837。
今日も Safety コーパイだ。
引き続き冬型の気圧配置で日本海側は大雪だったが、中標津は太平洋側なので全く問題なかった。
年明けから天候に恵まれ、きっと今年も良い年になるのだろう♪

朝は−17℃だった中標津だが、私達が到着する頃には −7℃まで気温は上がっていた。
それでも、半袖のYシャツに夏服の制服しか着ていない私にとって外は寒い。
氷でツルツルに覆われたところを、函館出身の訓練生は、ごく普通に歩いている。
私は転ばないようにおっかなビックリ。 函館出身、さすがだ。

中標津に到着してから整備さんが外部点検をした。
どうもメイン・タイヤのうちの1本に傷が入っているようで、交換することになった。
−7℃の中の作業、本当にご苦労様です!
客室乗務員(CA)のうちの一人が、どうやってタイヤ交換をするのか見学したい、と機外に出たものの、
あまりの寒さに断念し、私達と一緒にディスパッチのある部屋でくつろいでいた。
折り返し838便までは1時間5分の中開きだったが、タイヤ交換に30〜40分かかるとのことだった。
838便は満席だし、正月帰りでお客さんの持ち込む手荷物が多いことが予想された。
手荷物が多いと搭乗に余計に時間がかかってしまう。

タイヤ交換が終わり、飛行機に戻ろうとした。
キャプテンが先に歩き、雪国育ちの訓練生はスタスタ歩いて行ってしまった。
私が後からゆっくり歩いていると、CA さんが転ばないようにと、私の腕にすがってきた♪
あんたがたのもしく思えたの、初めてだよねぇ。」(CA)(仲が良いのでぶっきらぼう)
私は結婚して以来、妻以外の女性と腕を組んだこともなく、久しぶりに女性にもてた気がして嬉しかった。

やはり予想した通り838便の出発は定刻より8分遅れたが、上空の向かい風が弱かったのと、
羽田のアプローチが Visual だったおかげで、早着することができた。


2002.01.06

3日の日記に関して、パイロットは冬でも半袖のYシャツを着ているのですか?
という内容の質問メールをもらいましたのでお答えします。

もちろん、支給されるYシャツには長袖と半袖、両方あります。
1年に4枚支給されていますが、自分で半袖と長袖の枚数を決めることができます。
そして私は毎年半袖のYシャツを4枚もらっています。 何故かというと、単純に私が暑がりだからです。

YS-11に乗っていたころ、さすがの私も冬は寒いので長袖を着ていました。
長袖のシャツには袖のボタンと、その上10cmほどの所にもう1つボタンがあります。
面倒だったので袖のボタンだけ閉めて仕事をしていましたが、あるキャプテンに
機長と副操縦士の席の間にある垂直に伸びる棒にひっかかることがあって危険だから、
上のボタンも閉めるように言われました。

外は寒いので長袖のYシャツを着ていますが、機内に入ると暖かいので
長袖のシャツを折りたたんで肘まで捲り上げていました。
すると、またあるキャプテンに言われました。
パイロットたるもの、格好が悪いからシャツを捲り上げてはいけない。
ちゃんと袖を下ろしてボタンを全て閉めるか、または半袖シャツを着るかだ、と。

これが私が半袖のシャツしか着なくなった理由です。

もう1つ。 何故夏服のジャケットしか着ないか?
最近制服のメーカーが変わりましたが、以前の制服は冬服の色が私の好みではありませんでした。
また、制帽に使われていた生地が夏服と同じだったため、冬服の色と合わなかったのです。

飛行場によっては傘が飛行機のそばに置いていない場合が多く、
飛行機の外部点検をするとき、雨が降っていると濡れてしまいます。
レインコートも以前は支給されていましたが、最近はそれがなくなりました。
かといって、日本中飛んで回る私達は、いつも傘を持ち歩くわけにはいきません。
生地の厚い冬服のズボンは、少しでも濡れると縦の折れ目がなくなってしまいます。
夏服は冬服に比べるとこの折れ目が濡れたときに消えにくいのです。

これらの理由が私が夏服の制服しか着ない理由です。

コートは支給されていますが、私が暑がりであることと、
室内で持って歩くのが面倒であるという理由から、コートも着ないのです。
寒くて震えそうなときは、全身に力を入れて筋肉を収縮させて、自家発熱して我慢しています♪


2002.01.09

先日、FAX付き電話(子機2台)を買った。
子機は1機より2台あった方が便利かと、ずっと探していたが、普通紙で値段が3万円を切るものがなく、
どうしようか悩んでいたのだ。
価格.com で見てみたところ、デザイン的に SHARP の FAPPY が良かったが、これが3万円弱。
購入者の掲示板には FAPPY の子機は調子が良くない、というコメントが多く、なかなか買えずにいたのだ。

たまたま通りかかったアウトレットで、子機2台の SANYO の FAX が3万円だった。
価格.com で買うと代金引換手数料や送料が取られるし、品物に問題があっても返品もしにくい。
店頭で買えるならそっちの方が安全だろう。
そう考えて買うことを即決したのだ。

家に帰ってから 価格.com で調べてみると、その機種は片落ちで 27,500円程度で売っているではないかぁ!!
クッソー!! 高値で掴んでしまっとぅぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜!!!!!

半年ほど前だろうか、SANYO製の子機2台ついている普通の電話がセールで1万円だったときに購入した。
あのとき、子機の調子が最悪で、電源が入らず使えなかったので返品したっけなぁ・・・・。
オイ、待てよ、この子機もあのときの子機と同じ型なんじゃないのか? 見た目も一緒だし・・・・。
どれ、どれ掲示板チェック。 ゲェ〜!? マジ〜??

掲示板には書き込みはたったの3件。

1.「こんなもん売るな!」
   7月に買って一度もまともに動きませんので結局買い換えました。
   最初は子機の電源が入ったり、入らなかったり。 次に、雑音で会話にならず。
   最後は、ファックス受信で真中10cmが印刷されない状況に。
   クレームを出し、新品を持ってきたのにもかかわらず、このありさま・・・。
   五流メーカーは逝って良し。アンハッピーSANYO....
ウッソーだろ〜!! 子機の電源が入ったり、入らなかったりだぁ〜!?
それって、返品したヤツと同じ症状じゃないかぁ〜!
ファックスが欲しくて買ったのに、真中10cmが印刷できないだとぉー! それじゃ、意味な〜いじゃ〜ん!

2.「最悪の機種です」
   五月に購入しましたが、送信するたび原稿が詰まってしまいます。
   グシャグシャになってしまうので貴重な原稿はコピーを取ってから送信しています。
   2回修理に来てもらいましたが"異常なし"で帰ってしまいます。
   グシャグシャになった原稿を見せたところ"もう売っていない機種なので交換機が無い"との事。
   まだ買ったばかりなのに"三流メーカー"の機種は二度と買いません

原稿を一回コピーしてからファックスしてるだとおー! 冗談じゃないよ〜ん!

3.「満足しています。」
   とても、満足しています。
   欠点は、年配の方には、ややディスプレイが見にくいことでしょうか。
   あと、今後つけて欲しい機能として、子機、親機ごとに、ダイレクト着信時に、
   別の留守番電話を残せるようにして欲しいです。

そっかぁ〜、あなたは満足してるのね♪ 確率3分の1で満足。 3分の2で地獄ってかぁ〜?

よ〜し、返品覚悟で開封するぞぉ〜。
テープを綺麗に、丁寧に剥がして、と。
できるだけビニール袋が伸びたり、箱の表面の紙がはがれたりしないように注意、注意。
器具が1つ1つ入れてあるビニールの袋もなくさないように、順番にしまって。
ケーブルを束ねてある黒い針金線も、なくさないように。
おーっ! なかなかきれいなファックスじゃないかぁ〜♪
イヤ、イヤ、外見にだまされてはいかんぞよ。 使えないかもしれないんだし・・・・。

大急ぎでセットアップして、実家に電話して子機の音質を確認。
おーっし、いい感じじゃん♪ もう1つの子機に転送して、っと。 おっ、こっちも音質はOKだぞ。
さらにこちらから義姉にファックスを送り、コールバックを依頼。
なになに、綺麗に送れてるって。 よっしゃぁ〜、そっちからも送って♪
んっ? なんだこの絵は? これって○ん○の絵じゃないのかぁあ〜♪
いいセンスしてるじゃ〜ん。 って、そんなことはどうでもいいのよ。 画質は? OKじゃん!
グー、グー、完璧だぜぃ!
で、掲示板にはなんて書いてあったっけか?
「最初は子機の電源が入ったり、入らなかったり。 次に、雑音で会話にならず。
 最後は、ファックス受信で真中10cmが印刷されない状況に。」

ってことは〜、今調子が良くても、今後悪くなる可能性もあるってことぉ〜??
仕方ない。 しばらくはダンボール一式、とっておくか・・・・・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今日、関空であるキャプテンに会った。
札幌時代、私に留守番電話をくれたキャプテンだ。

「○○さんに以前もらった留守電、壊れちゃいました。」
あ〜、そんなの全然いいよ。」(キャプテン)
「それで、仕方なくファックス付き電話買ったんですよ。」
へぇ〜、ナオらしくないじゃん。 ちゃんといつも通り拾わなきゃダメじゃん。」(キャプテン)
「イヤー、結婚するとなかなかそういうわけにもいかんですよ。」
ふーん、言ってくれればあげたのになぁ。」(キャプテン)
「えっ?! もしかしてファックス余ってるんですか?」
あぁ、この前電話新しいの買ったからな。」(キャプテン)
「子機もついてるんですよね?」
うん、ついてるよ」(キャプテン)
「マジッすかぁあ? ゲェ〜、聞けばよかったぁ〜! で、なんで新しいのに代えたんですか?」
インターネットがあるのに今時ファックスなんていらないでしょ?
 それに日本の電話っていらない機能が付き過ぎててイヤなんだよね。
 もっとシンプルでデザインの美しいのが欲しくて、スウェーデン製のを買ったんだよ。
 ファックスなんて古い、古い。
」(キャプテン)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

熊本は3℃だったし、今日はとても寒〜い一日だった。


2002.01.13

松山−千歳を往復した。
行きの 松山→千歳 は 33,000ft で向かった。
定刻を25分遅れて松山を出発したのだが、強い追い風を受け、到着時刻を短縮できそうな状況だった。

松山を出発前は千歳の使用滑走路は 19L だった。
南風が吹き、19L を使うときは着陸までに時間がかかるし、着陸後も地上滑走が長いため遅れることが多い。
さらに誘導路に積雪があり滑りやすいと、地上滑走のスピードを落とさなくてはならず、これも遅れる原因となる。
しかし、運良く天気予報通り私達が千歳に到着する前に風の向きが変わり、使用滑走が 01R になった♪
ほとんど待たされることなく進入を開始することが出来たため、
25分遅れの出発を15分遅れにまで縮めることができるはずだった。
ところが、不慣れな外国のエアラインが私達の2機前におり、かなり減速していたようで、
私達は「コの字」を描くように誘導され、減速させられ、結局到着は25分遅れだった。

帰りは向かい風の弱い低めの 28,000ft を飛ぶことにした。
お客さんは40名程度しか乗っておらず、25%の搭乗率。
できれば高い高度で燃料をあまり消費することなく飛行したかったが、遅れを考えると止むを得なかった。

千歳空港を離陸し、17,000ft を過ぎると揺れが始まった。
千歳への進入中に揺れが止まったのと同じ高度だ。
きっと、降下を開始して揺れだした 26,500ft を通過して上昇すれば揺れは収まる、と考えていた。
27,000ft を通過すると予想通り、ピタッと揺れは収まった♪
ここでシートベルト・サインを消灯した。

飛んでいる飛行機からのレポートによると、28,000ft では南西に向かうに従って揺れが始まる、とのこと。
秋田近辺揺れが始まったので 24,000ft まで降下し気流は再び良好になった。
さらに南西に進むと、名古屋から岡山、特に小豆島近辺で、18,000ft 〜 26,000ft の間、
どの高度も激しいタービュランスに遭遇した、とのレポートが無線を通して聞こえてきた。

名古屋の手前で 20,000ft まで降下。
丁度雲の上の部分が 20,000ft ギリギリ、恐らく 19,500ft ほどで平らな海原のようだった。
雲の海の上を滑るように、完璧に気流スムースの中、快適なフライトと景色を楽しんだ。
だが、それもつかの間。
雲の高度は除々に下がり、それとともに揺れが再び始まった。
18,000ft まで降り、それでも揺れが止まらず、最終的には 16,000ft まで降下した。
これは、行きに飛行した 33,000ft の半分以下の高度だ。
もちろん燃費は悪いし、空気に対する相対的な速度も遅い。

もし、24,000ft で千歳から松山まで飛べれば、向かい風が弱かったため、間違いなく定刻に到着できたはずだったが、
高度を降ろす羽目になり、結局定刻より6分遅れて松山に着陸した。

遅れた時間を取り戻すこともできず、燃料も 24,000ft を飛んだ場合よりも 500kg 程余計に使ってしまった。
もし 31,000ft で飛んでいれば、さらに 300〜400kg の燃料を節約することができただろう。

とても残念な結果になってしまった。


2002.01.15

先日、図書館に行ったときの出来事。

家に帰る前、お手洗いへ行って用をたした。
そこは暖房もきいておらず、便器やタイルの感じが、私の小学生時代のものに似ており、懐かしかった。
手を洗う洗面台のわきに、何故か冷却水の装置が置いてあった。
この装置だけが妙に新しく、急に喉が乾いているように思え、水が飲みたくなった。

前かがみになり、冷却水の装置の水が出るところに口を持って行き、ボタンを押した。
う〜ん、なかなか冷たくって、おいしいじゃん♪
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク、ゴク、ゴク。
下から出てくる水が口に当たり、下に落ちていく。
その水が泡立っている? んっ?! なんで泡ができるんだ?
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク。 あれっ、なんか苦いよ、これ?
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク。 この水、臭うなぁ? しかも、この臭い、知ってるぞ? どっかで・・・・・?
冷却水から口を離して水が出ている部分の数センチ下を見ると、
うがい薬です。 飲まないでください。」 と大きく書いてあるではないかぁぁああ!!??
イッカ〜〜ン! とっさに「吐き出さなくては!」と思い、指を喉に突っ込もうと考えたが、ここは図書館。
しかもトイレにはドアがなく、外から筒抜けで、通路には誰かがいる。
口の中にイヤ〜な刺激を感じつつ、どうすることもできずに何度もツバを飲みこんで図書館を後にした。


2002.01.17

佐賀空港へのアプローチ・タイプは VOR/DME ILS 29 Approach だった。
6,500ft 近辺が Cloud Top(雲の頂上)。 雲の中は揺れるかと思ったが、気流は意外とスムースだった。
佐賀 VOR の手前で Flap 1 をセットし、上空を 5,000ft でヒット。 速度は約180kt。
3,000ft を過ぎたあたりで雲の下(Cloud Base)に出た。
VOR からの Outbound 120°で約10マイル飛行し、そこから左旋回。
旋回が終わり、高度 2,400ft で Inbound 286°に乗ると、正面に滑走路が見える。

空港の北5〜7マイルには佐賀市がある。
私の座っている右席から佐賀市の町が見えるのは、この Inbound 286°に乗ったときだ。

Inbound 286°に向けて左旋回中、機体が左に傾いているため私の座っている右席から見えるのは空と雲だけ。
旋回が終わり、右の翼が下がり、水平になったとき、佐賀市の町にかかっている虹が見えた!
どこも途切れていない、とてもきれいな、完璧な形の虹だった。
半円の頂上の部分が Cloud Base ギリギリで、まるで虹が雲に接し、
雲の板が地面に落ちないように支えているようだった。

滑走路に向かう直線コース約10マイルは、カンパニー無線からレポートがあったとおり気流はスムース。
ターミナルへの誘導路は滑走路の中央にあるため、Runway 29 に着陸後、
反対側の滑走路の端まで行ってUターンして戻ってくる。
町の上にかかっていた虹は、もうそこにはなかった。
んっ? 目をこらしてよく見ると、雲に覆われた灰色の背景に、うっすらとボヤケ、消えかけた虹がかろうじて見えた♪


2002.01.23

ディスパッチから飛行機に戻り、コックピットの準備を終えて客室にいった。

整備さんがボールペンで手の甲にメモ書きしている♪
私も覚書は左手の甲にするので、とても親近感を覚えた。

なおさん、何を書いてるんですかぁ?」 と、CAに半ばからかわれることが多い私は、
仲間を見つけると嬉しくなってしまう。

「整備さんも手がメモ帳なんですね。 私もなんですよ♪」 と、次の便の出発時刻、
会社に提出する書類、等について書かれた手を見せた。
手って一番便利ですよね。 看護婦さんも手にメモを書くって知ってました?
 整備の仲間にはここに
(つなぎの膝の部分をペンで指し示しながら)書くヤツも多いんですけど、
 やっぱり手が一番便利です。 手の甲では書ききれなくて、手のひらにまで書くこともあります。
(私は手のひらに汗をかきやすいからボールペンで字が書けないんだよなぁ・・・・・。)
みんなで共有する情報や、連絡事項なんかは、ここに(バインダーをペンで指し示しながら)
 書いて保存しておくんですけど、自分だけが知ってればいい内容はやっぱり手に書きますよ。
 ここに書いておけば決して見忘れることがないですからね!
(私は見る前にお風呂で垢すりで洗って消してしまって、分からなくなることあるんだよなぁ・・・・。)
私がメモを書いた左手を見せて話しかけたのがよっぽど嬉しかったのだろうか?
機関銃のように息をつく間もなく、整備さんはしゃべり続けた。

とっても嬉しそうな笑顔していたし、仕事中でもなかったみたいだったし、声をかけて良かったァ♪


2002.01.24

今日の勤務は 羽田 → 中標津 → 羽田 → 大館能代 → 羽田 。

朝から大館能代は雪のため天候が悪く、着陸できるかどうかギリギリの天候だった。
私達は朝一番の中標津行きに乗務していた。
中標津に到着すると、なんとか朝一の大館能代便が着陸できた、との連絡をディスパッチで受けた。
とはいえ、本当にギリギリの気象条件のもと、よく降りたなぁ、と感心するほど天候は悪かった。
中標津から羽田へ向かう途中、恐る恐る上空でカンパニー無線を通して大館能代の天候をチェック。
随分良くなってきていた♪
羽田に着陸後、ディスパッチに無線で確認したところ、大館能代の天候はさらに回復し、
着陸には全く支障のない状態が今後続くのではないか、と思われた。

羽田 → 大館能代 行き、447便は定刻を5分遅れで出発した。
お客さんの集まりが悪かったようで仕方なかったのだが、
この遅れが後で大きな影響を及ぼすとは、夢にも思わなかった。

大館能代空港へ向けてアプローチを開始し、高度を下げていった。
カンパニー無線で何度も何度も連絡を取りながら、最新の気象情報を手に入れた。
かなり良い状況が、ここ数時間ずっと続いている。 問題ない。
着陸まであと数分というところで、カンパニー無線に呼ばれた。
最新の気象情報を聞いて愕然とした。
視程1000m?! ついさっきまで3500m以上あったのに!
なんと、着陸のために進入を開始できる最低気象条件(2500m)を下回ってしまったのだ!
なんで今ごろ。 あと数分もってくれればOKだったのに・・・・・。

何度もカンパニーに天候を聞いてみたが、全く天気は回復しない。
それでも飛行機の気象レーダーに映しだされる雪雲には隙間があるように思われた。
この隙間が空港上空にくれば、きっと天候は回復する。
そして一瞬でも視程2500m、という数値が出れば進入できる。
進入を開始できれば運良く着陸できるかもしれない。
ここ数時間は良かったのだから、必ずアプローチのチャンスはあるはず。
そう確信していた。

空港上空に雲があるときの視程は600〜800m。
雲の隙間が接近すると、1000m、1500m、と上がってくるのだが、どうしても2000mを超えない。
あと10分、もう10分、と待ったまま、いつしか燃料が底を尽きだした。

結局、1時間5分、上空で待機してから、秋田空港へダイバートすることを決定した。
もっと早い時点で決めていれば良かった・・・・。
天候が回復すると信じて、視程が2500mになったらすぐにアプローチできるように、
雲の中、2,600feet で揺れながら待ち続けた。
もし最初から進入が不可能であることが分かっていれば、天気が回復するまで雲の上、
10,000feet 付近の揺れない場所で待つことも可能だったのだ。
気分の悪くなったお客さんもいたに違いない。 そう思うと、なんとも申し訳なかった。
羽田をもし定刻に出発できていれば、ひょっとすると着陸できていたかもしれなかった。
そう思うと、とても悔しかった。

秋田空港へ着陸後、ディスパッチへ行き、トイレで用をたして、ディスパッチに戻った。
コンピューターで最新の大館能代の天気を調べると・・・・・・、なんと着陸できる気象条件まで回復しているではないか!
クッソー! でも仕方ない。
秋田空港の女性の管制官の明るい声が、唯一私達の心を慰めてくれた。

秋田を上がり、羽田へ向かった。
雲一つない関東平野の夜景がとても美しかった。

朝、6時に起きて、7:35に出社。
羽田に戻って仕事が終わったのは夕方の6:50だった。
とても長く、疲れた一日だった。


2002.01.28

スタンバイ稼動して 羽田 − 大館能代 を飛んだ。
つい3日前も同じ便を飛んだが、雪のために降りれず秋田空港へダイバートした。
今日こそは絶対降りてやるという気持ちでいたため、オリジナル・スケジュールのスタンバイより勤務時間は長かったが、
やる気満々で伊丹空港を出発した。
それに、今日一緒のキャプテンは面白い人だし、最近一緒に飛んだことがないので楽しみだった。
伊丹 → 羽田 を便乗で移動してからの勤務だった。

午後の大館能代便に使われる飛行機は、その前、朝の 羽田 − 中標津 に使用されている。
便乗で羽田に到着後、すぐディスパッチへ行って天気を確認。
今日は道東の天気が悪かったようで、中標津便は欠航になっていた。
中標津便だけ飛ぶ予定だった副操縦士は、飛ばずにとっとと帰ってしまっていた。
キャプテンは中標津と大館能代を飛ぶパターンだったので、大館能代行きの時刻まで事務所でスタンバイしていた。
さて、大館能代は・・・・? 緩んではいたが冬型の気圧配置だった。
天候はそれほど良くはないが着陸できない程でもなさそうだった。

機長によると、今日、中標津を飛ぶ予定だった副操縦士は・・・・・
私、今年度、5回 羽田−中標津がアサイン(勤務として割り当てられた)されてるんですけど、
 そのうち3回も欠航したんですよね。

こういう天気に恵まれない人は本当にいるから面白い。(乗客には申し訳ないが)

「私も3日前、大館能代に降りれなくて秋田にダイバートしたんですよ。」
まったく、なんでオレはいつもこんな連中とばっかり乗らなきゃなんないわけぇ? ったく、冗談じゃないよ。」(キャプテン)
(もちろん単に口が悪いだけ。CAに人気のある面白いキャプテン)

乗務まで少し時間があったので、羽田でいつも行く地下にある食堂へ昼ご飯を食べに行った。
今日のメニューは何かなぁ・・・・。 オッ、エビ・フライじゃ〜ん♪ でも350円かぁ。
高いなぁ。 それにカロリー高いし。 他には、と・・・・。
んっ? シャケの切り身が250円? ずい分、大きいじゃなlい。
よし、これこれ、これを食べよう。
12時5分に行ったのだが、すでに長蛇の列。
あれっ? エビ・フライはあるけど、シャケがないぞ?
あの魚の切り身はなんだ? 白いぞ? あんまりおいしそうじゃないなぁ。
おかしいなぁ。 さっきショウケースで見たの、シャケだったよなぁ。
何? サワラ?! なんでだよ。 サワラってあんまりおいしくないじゃん。
「あのぉ〜、スミマセン。 今日の魚はシャケじゃないんですか?」
ゴメンネ。 もう終わっちゃったんだよ。」(食堂のおばさん)
ぬぁにぃ〜?! まだ12時10分じゃんかよぉ〜! 何で終わっちゃうんだぁー。
一体、何切れ用意してたんだぁ〜? もーーー、あのシャケが食べたかったのになぁーーーーー。
仕方なくサワラを取った。
ご飯、サワラと大根おろし、ヒジキ、出汁に浸したタマゴとワカメ。
なんとも健康的ではないか♪ しかも576円♪
テーブルにつき、まずはサワラをパクッ。 マッズー! あ〜あ、まっ、いっか・・・・。
今日は伊丹への帰りが遅いし、途中、お腹が空くだろうから・・・・・。
そうだ、4階にある食堂に行ってゆで卵を買おう。 確か1個30円だったっけな。
昼食のメニューに満足がいかなかった私は、4階の食堂のメニューをチェックしにショーケースへ向かった。
ゔお゙お゙お゙お゙ーーーーー!!!! なんか、うまそうなチキンやら魚やら、いっぱいあるんじゃんかよぉーーーー!
最初からこっちに来て食っときゃ良かったなぁ・・・・・。 (TT)

昼ご飯を食べ、本屋で立ち読みをし、フライト・バッグの整理をし・・・・・。
あれっ?! サングラスがないよ?(自作の18Kで作ったサングラス)
マジー!? どこに置き忘れたんだぁ?? まさか無くしちゃったわけじゃないよな?
あぁ〜ん、あれ作るのに何ヶ月かかったと思ってるんだぁ? クッソー!
前回は羽田勤務だったから、実家に置き忘れたんか?
速攻、実家に電話したが、ないようだ。
マジかよ? やだよぉ〜! ほんとに無くしてたらどうすんだぁ〜?
心拍数が上がり、額に冷や汗が・・・・・・。
もしかして伊丹に置き忘れてきたかな?
妻に電話した。
あるよぉ〜。
良かったぁ〜♪
最近、よくモノが無くなるようになった気がする。
しかも、どこに置いたか覚えていないケースが多々ある。

羽田を離陸し、大館能代へ向かった。
幸い天候は良好な状態が続きそうだった。
今日さぁ、もし大館能代に降りれたらそれはオレの日頃の行いのせい。
 降りれなければあなたの日頃の行いのせい。 分かってんだろうね?
」(キャプテン)
「ハイ、ハイ、そうですね。」
やっぱさぁ、オレ、最近、聖人君子みたいな生活態度してるからかなぁ。」(キャプテン)
「ヘェ〜、聖人君子みたいな生活態度は最近始めたんですか?」
違う、違う。 過去も、現在も、未来も、ずっとだよ。 当たり前だろぉ?」(キャプテン)
まったく、もう・・・・。 ああ言えばこう言うキャプテンだ。

大館能代空港は西風が強く、アプローチはかなり揺れたが無事着陸することができた。
折り返し便は、羽田へのアプローチも待たされることなく、定刻より早着。
私はスケージュールでアサインされていた便より一つ早い伊丹行きの便に乗ることができ、
大満足の一日だった♪


2002.01.29

高知空港を Runway 14 から17:50に離陸した。
3,000ft を過ぎる頃、正面より若干左、080°の方向に赤く三角形の物体が見えた。
高度を上げるに従い三角形は大きくなり、外縁が丸みを帯びていった。
月だ! 四国山脈の下から月が昇ってきたのだ。
6,000ft を過ぎると月は完全に丸の形状を現わした。
どことなく縦に潰れ、横に広がった形ではあったが、欠けている場所はなかった。
さらに高度を上げると潰れた円形は完全な円になった。
そこには長い耳のウサギのような影がくっきりと映っていた。