2002.02.01

ケーブルテレビや、一般のテレビ番組でも深夜、最近よくテレビ通販をやっている。
いらんもんばっか、売ってるなぁ〜。
一体全体、誰が買うんやぁ?と聞きたくなるものも多いと思う。
そんな中、私が注目しているのはEMSを使ったダイエット・ベルト。
このベルトは電磁波か何かを使って、筋肉を収縮させる機能がある。
ベルトとしてウェストに巻けば、10分間で600回の腹筋運動をするのと同じ効果がある!、と言うのだ。
装着するだけであなたも夢の引き締まったウエストを手にすることができる」といううたい文句。
怪しい・・・・・・、疑わしい・・・・・・。
でも腹筋トレーニングって痛いし、ツライし、買ってみようかなぁ・・・・・・。
しかも、たったの9800円・・・・・・。

松山で仕事を終え、飛行機を降りた。
交代要員の客室乗務員(CA)のうちの一人と目が合った。 何故か私を見てニヤニヤしている。
私、買ったんですよぉ〜♪」(CA)
「えっ、何をですか?」
例の、ベ・ル・ト♪」(CA)
「マジーッ?!?! 買ったんすかぁー! どうですか、調子は? 効いてます? 引き締まりました?」
目が彼女のウェストに移りそうになるのを必死にこらえながら、私は聞いた。
それが、まだ使い始めたばかりなので、よく分からないんですよ。 でも腹筋が勝手にピクピク動くんですよね♪」(CA)
「あれって専用のジェルが必要なんですよね? なくなったらまた買わなくちゃならないんですよね?」
ジェルは水溶性のものなら何でもOKみたいですよ♪」(CA)
「そうですか。 じゃぁ、成果が出てきたら連絡してください。 私のメール・アドレス教えておきますんで。」
あっ、ハイ、じゃあ経過報告入れますよ。
 CAの間では私がEMSベルトを買った、っていう話が広まってしまってるみたいなんですよねぇ。
」(CA)

実は、だいぶ前になるが、以前このCAと乗務が一緒になったときに、「ベルト」の話で盛り上がったことがある。
そのとき、彼女は運動が面倒なので、楽してウェストを細くしたい、と言っていた。
楽してウェストを細く、なんて無理だよなぁ、と思いつつ、私も、ひょっとすると?と興味があったのだが、
自分で買う勇気はなかった。

彼女の結果報告がとても楽しみだゼイ♪



2002.02.02

読者の方が、北米からメールを下さいました。
EMSについて詳しく教えて頂きましたので、本人の了解を得た上で彼からのメールを掲載します。

  EMS(Electronic Muscular Stimulation)についてですが、理論上筋肉はつくはずです。
  ただし、EMSの場合ですと部分の筋肉は鍛える事ができますが、腹筋は腹直筋のほかにも
  外腹斜筋や内腹斜筋などもあるので、その点については少し不安が残ります。
  その点、普通の腹筋運動をしている方が広範囲の筋肉(腹筋周辺)を鍛える事ができるので、
  時間と苦労はかかりますがバランスよく筋肉を鍛える事ができます。
  あと、筋肉がつくことによって新陳代謝があがるので、脂肪がよく燃やされてウエストが引き締まるのです。




2002.02.03

今日は節分。
節分と言えば豆まき。
子供の頃、実家でよく豆まきをした。
床をきれいに掃除した後に豆まきをし、終わったら1つ1つ拾いながら食べて、後片付けをしたものだ。
豆まきをした後の乾燥大豆は、何故かおいしく感じられ、喜んで頬張った。
よくよく考えてみると、乾燥大豆はそれほどおいしいものではない。
むしろ、私はマズイと思う。
それをおいしいと感じてしまうのだから、心理的影響というのは恐ろしいものだ。

減量に成功した私は、33才になった今もステイバックの中に乾燥大豆を忍ばせている。
お腹が空いて我慢できなくなったときの緊急時の食料だ。
空腹時によく噛んで食べる。
そして水を飲む。
豆は水を加えると膨らむ。
しかもよく噛むので脳が刺激されすぐ満腹になる。

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外国の空港では水飲み場がいたるところにある。
便所の出入り口には必ずある。
ところが日本の空港ではほとんど見かけない。
みんなが缶ジュースやミネラル・ウォーターを飲むからだろうか?
私はお金を払って缶ジュースを飲むようなことは決してしない。
基本的に外にいるときは水しか飲まないので、水飲み場がなければトイレで水を飲むようにしている。
蛇口の水を手のひらですくい、そこから水を飲むのだ。
子供の頃、公園で遊んでいて喉が渇くと、よくそうして水を飲んだものだ。
だが、大人になってそれをトイレでするのは、結構気が引ける。
格好悪いではないか?
それでも実行している。

高校時代にメキシコへ、イギリス人とタイ人と3人で旅行へ行った。
路上の出店で大皿でタコスを注文した。
3人とも1つのプレートから食べたのだが、私だけ下痢してしまった。
しかも日本で経験するどんな下痢よりもひどい症状で、2週間はピーピー状態が続いた。
その時同じ物を食べたイギリス人とタイ人は、本当に平気だったのである。
私には信じられなかった。
2人の友人には、私は軟弱な体をしている、と馬鹿にされた。

日本人はきれい好きで、清潔過ぎる生活をしているために、免疫、体の抵抗力が衰えているのかもしれない。
大腸菌やその他の菌、ウィルスがウヨウヨいるかもしれないトイレの蛇口から水を飲むことで、
少しでも不潔な環境に慣れておくことも大切かもしれない。
そのせいか、最近めっきり風邪をひかなくなった。

困っているのは、トイレの蛇口に栓がないことだ。
手をかざすと水が出るようになっている場所が最近はほとんどだ。
しかも性能の良いやつになってくると、手を洗うように動かしていないと水はすぐ止まってしまうものもある。
水を飲もうとしてかがみ、手のひらを蛇口の下に出しても、水を受けるためにジッとしていると水はすぐに止まってしまう。
仕方なく、右手で水を受け、水を飲む間、左手を蛇口のそばで動かし続けるのだ。
面倒だし、ムチャクチャ格好悪いし、ハイテクもほどほどにして欲しい。
私達が蛇口の閉め忘れをするから、こういう機能のついたものが設置されていくのだろう・・・・・。

もう1つ、トイレの蛇口で水を飲むときに困るのは洗面台が濡れていることだ。
蛇口のそばまで頭を下げるため、前髪が濡れてしまう。
自分で蛇口を開閉するタイプのものは仕方がないとして、
何故自動で水が出たり止まったりする蛇口のついた洗面台の周りが濡れるのだろうか?
どういう手の洗い方をしているのだろう?
不思議だ。

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節分に話を戻そう。

朝、買い物から妻が戻った。
冷蔵庫には太巻き(海苔でまいた太目のお寿司)が1本入っていた。
今まで妻が太巻きを買ってきたのを見たことがなかった私は聞いてみることにした。
「何で太巻きを買ってきたの?」
えっ? 節分だからだけど?」(妻)
ナヌゥ〜〜?!?!   (??;)
節分のとき、太巻きをある方角に向かって食べるでしょ?」(妻)
(・・?) エッ
節分の次の日には、お弁当に前日の残り物の太巻きが入っている子が多かったよ。」(妻)

妻の言い分によると、毎年違った方向に向かって太巻きを(自分もその方角を向いて)食べるのだそうだ。
そうすると良いことがあるらしいのだが、
1.今年はその方角がどっちの方角なのか?
2.誰が、どういう方法(ラジオ、テレビ、etc.)で、その良い方角を教えてくれるのか?
分からない、と言う。
そんなの信じられ〜〜んっ!!
地方によって色々な文化があるので、きっと私の知らない何かが関西にはあるのだろう・・・・・・・。
それとも、単に私がいつもの非常識ぶりを発揮しているだけだろうか?
まっ、いっか。

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太平洋を東進している低気圧の、最後の端の部分が高知沖にまだ残っていた。
兵庫県を含めた近畿北部は既に低気圧は通過しており、天気は良好だった。

伊丹を16:30に出発し高知へ向かった。
日が沈む頃であり、サングラスをかけていても西日がまぶしい。
高知へ進入を開始し、11,000ft で雲に入った。
最新の高知空港の天気は曇り。
間もなく日も沈むし、曇りならサングラスはいらないだろう。
サングラスをはずして雲の中に入っていった。

ガタガタに揺れながら雲の中を高度を下げた。
高知空港へは東から西へ向かってアプローチするため、管制官は飛行機を一旦空港に対して東側に誘導する。
高知山脈を南下し海上に出ると、3,000ft で雲の下に出た!
そこから右旋回するのだが日差しが真正面から差してくるため、とてもまぶしい。
一瞬右手に目を背けると、すぐ真上の雲から海面に向かって突き刺さるようなニジが見えた。
ウワァ〜オ♪

高知空港から17km東から ILS の電波に乗って最終の着陸態勢に入った。
空港まであと13kmの地点で右後方を振り返ったが、そこにはもうニジはなかった。

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関東出身のキャプテンと話をしていて、太巻きストーリーを思い出した。
「キャプテン、今日って節分ですよね?
 節分には太巻きをある方角に向けて食べると良いらしんですけど、ご存知でしたか?」
へっ? ・・・・・・・・・・・・・、イヤァー、聞いたことありませんねぇ〜。」(キャプテン)
ほぉーれ、みんしゃい。
やっぱりそんな話、聞いたことありませんデス!

 後日関西のニュース番組で知ったのだが、太巻きを向けて食べる方角を 『恵方』 と呼ぶらしい。
恵方は新聞やテレビのニュースで知るようです。




2002.02.09

昨日のニュースでは、今日は寒気が入り北陸より北の日本海側は雪になる、と言っていた。
今朝、新聞で天気図の気圧配置を確認。
西風も強そうだし、きっと雪が降るんだろうなぁ、大館能代。
先日、大館能代に降りれずダイバートして秋田へ行ったばかり。
何かイヤ〜な胸騒ぎがした。

朝は羽田−中標津を往復した。
羽田に戻ってから大館能代の天気をカンパニー無線で確認したところ問題なさそうだ。
でも疑ってしまう。
本当に大丈夫なんだろうか?
今朝、会社のコンピューターで青森空港の天気予報を見たが、午後からとてつもなく悪くなることを予想していたし・・・・。

羽田を離陸し、カンパニーへ羽田空港の出発時刻を無線で通報する。
そのとき、最新の大館能代空港の気象情報を伝えてきた。
出発時刻は了解しました。 なお、Latest の大館能代の天気を送ります。 14:15のスペシャル。
 風、250°から22ノット。 Heavy Blowing Snow(強い吹雪)。 視程400m。
 RVR500m〜1300m upward。 Vertical Visibility 200(鉛直視程200feet)。
 気温−6℃。 気圧 29.73 です。 いってらっしゃ〜い♪

いってらっしゃい、って、行ってもこれじゃ降りれないじゃ〜ん?
降りるためには視程は 400m じゃなくて 2500m 以上必要だし、
鉛直視程は 200feet じゃなくて 1,000feet くらいは欲しいんだぞぉ!
もうっ、本当に大丈夫なのかぁ?
着陸できる最低気象条件を下回るのが20分、上回るのが20分、
行ったり来たり(良くなったり悪くなったり)してるって、さっきカンパニーで言ってたなぁ。
きっと着陸できるタイミングもある、ということなんだろう。
それとも、今日も秋田に行く羽目になんのかなぁ?
参ったなぁ・・・・。

とりあえず大館能代まで行くことになった。
14:45まで除雪作業をしてブレーキが効きやすい状況を作ってくれるようだった。
大館能代空港のカンパニーで最新の天気を送ってもらうと、これがなかなかよろしい。
視程6km?
いいじゃん。
そうこなくっちゃ。
エッ?
でも、風が強いなぁ。
50°から 19ノットで最大33ノットかぁ。
どれどれ、横風制限をチェックしとくか・・・・・。
(19+30)÷2=24.5ノットかぁ。
で、大館能代の滑走路は290°だから、250°から風が吹くと40°斜めから吹いてるわけだろ?
Braking Action(滑走路の滑りやすさ)Good で横風制限20ktなら、40°斜めだと31ノットまでOK。
で、Braking Action Medium to Good だと横風制限15ktで、40°斜めだから23ノットまでOK。
んっ? 24.5ノットなわけだから・・・・、Medium to Good だと超えてるじゃん?!
滑走路がGoodでないと着陸できないわけぇ〜?
ウソだろぉ〜。
かなり雪降ったみたいだし、Good のわけないじゃん。
どんなに除雪したところで、良くて Medium to Good だろ?

14:45を過ぎて、除雪が終わり・・・・・、Braking Action を無線でカンパニーが送ってきた。
Medium to Good です♪」(カンパニー)
ガビィイ〜ン!!
進入できないじゃん!!
もう、どうしてくれるわけ?
「えーっと、Medium to Good だと横風制限超えてて、降りれないんですけど。」
今、風が弱くなってきてます。 250°から14ノット、最大20ノットです。」(カンパニー)
な〜んだ、それを早く教えてよ。
それならアプローチできるさ。

大館能代空港の VOR の電波、272°に乗って西へ飛ぶこと11マイル程度。
2,600feet まで降下してから右旋回し、Runway 11 の方角へ機首を向けると、
ヨッシャー!
滑走路、余裕で見えてるじゃん。
これなら楽勝だぜ♪
あと心配なのは、強い西風でガタガタに揺れるくらいだな。
ILSの電波に乗って滑走路に近づくと、空港周辺の雲の状況が良く分かる。
ILS 11 で東向きにアプローチし、途中から右旋回して滑走路と平行に飛び、
Runway 29 側から西向きに着陸しなくてはならない。
Runway 11 に着陸するのならOKなのだが、右旋回した所に薄く透けてはいるが、低い雲がある。
あの中に入ったら滑走路見失うかもなぁ。
そうしたらゴーアラウンドだわな・・・・。

Runway 11 に向かって接近し 1,220feet で水平飛行に移り、右旋回した。
滑走路を左手に見るように滑走路と平行に飛び、滑走路の東側に回る。
このとき、やはり薄い雲に入ってしまった。
かろうじて滑走路は見えており、そのまま進入を続けても良かったのでが、強い西風で気流は最悪だった。
滑走路が見えにくい中、気流ガタガタで無理してアプローチしなくてもいいかな?
もう数分すればこの雲も飛行場の東へ抜けてしまうだろうし。
晴れているときなら、少々気流が悪くてもなんとかなる。 1回ゴーアラウンドしてもいいかも・・・・・。
そんなことを私は考えていたのだが、キャプテンも同じことを考えていたようだった。
1回やり直そうか?」と声をかけ、パワーを全開にして上昇した。

4,000feet まで上昇してからすぐ、再度ILSで進入を開始した。
東向きにILSの電波に乗ったとき、さき程より空港周辺の天気は回復していた。
問題なのは強い西風だけだ。
2,600feet から高度を下げていくと次第に揺れは激しくなり、1,220feet で滑走路と平行に飛ぶ頃には
飛行機が木の葉のようにワッサワッサ、ユッサユッサ揺れていた。
キャプテンはオートパイロットをはずし、左旋回して機首を Runway 29 に向けた。
今まで追い風だったものが急に向かい風になり、飛行機は持ち上げられ若干高くなってしまった。
滑走路からの高さ200feet(60m)付近で、キャプテンはゴーアラウンドした。
もう1回着陸をやり直しだ。
1,800feet まで上昇し、右旋回した。
客室乗務員(CA)にすぐ着陸する旨、インターフォンで連絡し、再び着陸体勢に入った。
機首を Runway 29 の方向に向けると今度は高さはピッタリだった。
飛行機は相変わらず木の葉のようにワッサワッサ、ユッサユッサ揺れていたが、
キャプテンは完璧に飛行機をコントロールし、高度を下げ、滑走路にフワッと Touchdown。
即 Full Reverse をかけて停止した。

乗客全員が飛行機を降りてから、私達はコックピットを出た。
清掃さん達がシートクッションを何枚かはずしていた。
どうやらかなりの人数のお客さんが酔ってしまい、戻してしまったようだった。
CAさんの中にも、かなり気分が悪くなったひとがいた。
悪いことしたなぁ。
でも仕方なかったよな。
滑走路面が雪に覆われていて滑りやすいときは、少しでも不安があったら無理して降りるより、
着陸をやり直した方がいいからな・・・・・。
だけど、あれだけ揺れれば、しかも30分も上昇降下を繰り返せば、誰だって酔ってしまうだろう。
着陸できたからこそ折り返しのお客さんも乗せることが出来たわけし・・・・・。
ご搭乗頂いたみなさん、今日は本当にすみませんでした。
これに懲りずに、また飛行機に乗ってくださいね。



2002.02.13

私は昔から髪が多かった。(今はてっぺんが若干薄い)
学生時代は長めのヘアースタイルが好きで、耳が隠れる程度は伸ばしていた。
だが、とくに横のボリュームが多く、髪を伸ばすとタダでさえほっぺたパンパン、太く、丸っこい顔が、
さらにまん丸く見えてしまい、イヤだった。

そんなとき、会社の同期の髪型を見て思った。
これだ!!
それはツーブロックと呼ばれる髪型だった。
首筋を刈上げる要領で頭の横の部分、耳から上に向かってバリカンで刈上げる。
頭の上の部分の髪は耳まで伸ばしておき、刈上げた短い髪の上からかぶせるのだ。
これなら髪を伸ばしても顔が横に広がって見えない。
また、パイロットは身だしなみが厳しく、長い髪は良いイメージを与えない。
ツーブロックなら襟からもみ上げにかけては刈りあがっているので、だらしなく見えないのだ。

参照♪

オーストラリアの訓練生時代にこの髪型の出会い、
以後、私はずっとツーブロックだ。
訓練生時代、寄宿舎のカフェテリアで働いていたおばさんと親しくなった。
あるとき、ふとしたことから彼女がバリカンを持っていることを知った。
床屋でツーブロックにしてもらうとき、とても簡単に思えた私は、同期の誰かに髪を切ってもらうことを思いついた。
寄宿舎から町までは遠く、髪を切るためにわざわざ出かけるのが面倒だった。

ある同期に頼んでみたところ、失敗するかもしれないからと、最初はイヤがっていたが、
私が強引に頼み込んで、結局彼は引きうけてくれた。
バスルームで散髪は行われた・・・・・・・・。

髪はできるだけ長くしたい。
でも髪が多いと暑い。
そこで、うんと上の方まで刈上げてもらうことにした。
通常、ツーブロックといえば、髪の生え際から上方6〜7cm程度までしか刈上げない。
しかし私は10cm以上刈上げるように、しかも最も短い歯で肌が青く見えるほど刈上げるよう同期にお願いした。
上からかぶせる髪の長さは変わらないが、量が相対的に減る。
まさに理想的だ。

無事に髪を切り終えた。

屋外を歩いているときに、風が強いと上からかぶせた長い髪が持ちあがる。
通常なら刈上げた部分の髪はそれほど短くないので、遠くから見れば黒く見える。
しかし、今回は風で上の髪が持ちあがると、その下は青く見えてしまう。
しかも、かなり上まで刈上げたいたため、見た目がとても変であることに気が付いた。
これは絶対に変だ。
教官に見つかったら絶対に怒られる。
マズイ!

では、いつ、一番見つかりやすいだろうか?
飛行機の外部点検をしている時だ!
翼や胴体の下、タイヤを点検するときに低い姿勢になって首を傾けるとき、
とくに横から風を受けるとかぶせた髪が持ちあがったり、逆立ったりする。
外部点検の時は気を付けよう。
回りに教官がいないことを確認すること。
できるだけ低い姿勢にならないこと。
横から風を受けないこと。

ある日、訓練飛行のため、駐機場に行った。
いつも通り外部点検から始めたのだが、この日は風が強かった。
できるだけ風が吹いてくる方向に顔を向けるように、後ろ歩きをし、ときには横歩きをしながら飛行機の周りを歩いた。
それでも時々はかぶせた髪が風に持ち上げられる。
周囲をキョロキョロ見渡し、教官がいないことを頻繁にチェック。
時々通る飛行機以外、誰もいない。 うん、きっと大丈夫だ。
その後、何事もなく飛行機に乗りこみ、訓練飛行を終えた。

寄宿舎に戻ってくると、いきなり隣の部屋の同期(K君)が怒鳴りこんできた。
今日はオマエのせいで大変だったんだぞ!
な、なんのことだ?
今日は会ったの初めてだし・・・・・・。
チェック(試験)がオマエのせいで台無しにだったんだぞ!
彼の話を元に再現すると、こういうことらしい。

K君は今日、試験の日だった。
エンジンをかけ、地上滑走を始めてしばらくすると、隣に座っていたS教官が大きな声を上げた。
なんだぁっ! あれはぁぁああ!!!!(S教官:ほとんど叫び声に近い怒りのこもった声で)
S教官の目が釘付けになった方向を見ると、そこにはツーブロックの上の髪がたなびき、ハゲを露出している私がいた。
あっちゃー、と思った彼は大きい声で言った。
すみません!」(K君:大きな声で叫ぶように)
なんでオマエが謝るんだ!(S教官:かなり激怒モードで)
すみません!」(K君:激しく叫ぶように)


参照♪

(以下 K君の心境)
なんであいつ(私)はオレの試験の日に、ああいうことしてくれるんだ??
オレに何の恨みがあるんだ?

その後S教官はムッとしたまま、しばらく口をきかなかった。
この気まずい雰囲気、どうにかならんのか?
タダでさえ試験でナーバスなのに、こんな重苦しい雰囲気は耐え固いじゃないか!
S教官がやっと口を開いた。
「最近、ああいう髪型が流行っているのか?」(S教官:怒った口調で。)
イエ、えーっと・・・・・・。」(K君)

地上滑走し、離陸の許可をもらい、滑走路に入り離陸し、訓練空域へ行って試験課目を終了し、
飛行場へ戻って着陸後、地上滑走し注機場へ戻り、エンジンを切った。
その間、S教官は腕組みをしたまま物思いにふけるように、一言も口をきかなかったのだ。

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オマエのせいで審査の雰囲気が最悪だったんだぞ!」(K君)
「ゴメン、ゴメン。 ちゃんと周囲を見渡して、誰もいないことを確認したんだけどな。 イヤー、悪かった、悪かった。」
なんでオレが審査のときにいそういうことするんだよ。」(K君:ほとんどあきらめに近い声で)
「すまなかった。 オレが悪いわ。 本当にゴメン。」

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校舎の一角に日本人教官がいる、通称「ANK事務所」と呼ばれる場所があった。
オーストラリア人の教官がたむろしている場所と違い、とても重苦しい雰囲気の事務所だ。
特別な用事や提出物でもない限り、出来るだけ近づかないようにしていたのだが、
今回の件があってから一層行きにくくなった。
数週間、ほとぼりが覚めるまで決してあそこに行くのは止めよう。
そう決めてはいたのだが、そういう時に限ってどうしても提出しなくてはいけない書類があったりする。

覚悟を決めてANK事務所へ向かった。
ドアを開ける前に身だしなみのチェック。
靴はちゃんと光ってるよな。
靴下は黒で無地、OK。
ズボンも洗濯したばっかだし、ベルトも黒。 ネクタイは曲がってないよな。
こういった事項に注意を払っていなかったために、ブチ殺された(ムチャクチャ叱られる、という意味)同期がいた。
今日はいつもにも増して、少しでも日本人教官の気を引かないように気を付けなくてはならない。

この書類を提出する引き出しは、入り口を入って、向かって左手の奥。
引き出しは上から○段目。
ドアをノックして、「失礼します!」と大きな声でお辞儀して、引き出しまで一直線に向かい、
所定の引きだしをサクッと開け、書類を提出したら後ずさりするように、
教官に後ろから見られないようにソロソロと音を立てずにドアまで戻り、
後手でドアを開け、「失礼します!」と礼をして、とっとと逃げるぞぉお!
事務所のドアの前で、あらかじめ自分がこれからする行為をイメージしながら再確認。

ドアをノックして恐る恐る事務所に入った。
「失礼します! 書類を提出しに来ました!」
ん、ハイ。」(教官の一人)
3人の教官はチラッと私を見て、すぐ視線を机に落とし、それまでしていたであろう業務を続行した。
ヨッシャァアー!
S教官は全然気が付いてないぞ。
きっと忘れているに違いない。
一直線に引き出しへ向かい、書類を提出し、計画通り後ずさりしてドアまで戻った。
ドア・ノブに手をかけ、「失礼しますっ!」とお辞儀をし(深々とすると髪がめくれるので少しだけ)、ノブを回した。
もらったぁあ〜!!と思った瞬間、S教官が顔を上げた。
「ちょっと待てっ!!」(S教官)
いきなり怒鳴られ、ドキッとした私は、お辞儀をするために若干腰を曲げていた姿勢から、
ビクッと一気に直立不動の姿勢になった。
野獣に睨まれた子ウサギのように、私はその場に固まった。
S教官と視線が合った。
マズイッ!
すぐに目を反らしたが既に遅過ぎた。
他の教官も目を上げ、私をジッと見ている。
S教官の視線は私の目から、やや上に向かって移動した。
かなり長い沈黙の末、S教官は言った。
「そこで回れ!」(S教官)
「ヘェッ??!!」
「聞こえただろっ! そこで回れっ!」(S教官)
「ハイ・・・・・。」
一瞬ためらったが、命令には背けない。
イヤとは言えない。
直立の姿勢で、ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように、私は360度回る羽目になった。
左周りで、少しずつ回った。
90度を過ぎて横向きから後向きにさしかかった時、回転速度を上げた。
一瞬のうちに真後ろを通過し、再び横向きになったところで速度を落とし、ゆっくりもとの正面の向きに戻った。
ホーーーッ・・・・・・。
「もう1度回れ。」(S教官)
穏やかに、だが力強く、決してNOとは言えない口調で言い放った。
マジッすっかぁぁあ〜〜??
再び私は左回転でゆっくり回転していった。
横向きになって一気に加速しよとした瞬間、
「止まれェエッ!!!」(S教官)
怒鳴られ、ビクッとして膝が内股に曲がってしまった状態で立ち止まった場所は、まさに後向きだった!!
しばらくの沈黙の末、S教官は穏やかに、だが力強く、決してNOとは言えない口調で言い放った。
「髪を持ち上げろ。」(S教官)
「ハイッ??」
「聞こえただろっ! 髪を持ち上げろと言っておるんだァア!」(S教官)
ひぇぇええ〜〜ん、困ったなぁ。
でも逆らえないしなぁ・・・・・・・。
高頭部に手を持っていき、しぶしぶ私はツーブロックの長い後ろ髪を持ち上げた。
ANK事務所のドアに向かって後向きになったまま、しばらくジッとしていたが、なかなか何も言ってくれない。
これではいいさらしものではないか。
数秒だったか、数十秒だったか、はたまた数分だったか、私には永遠に感じられた沈黙を破ってS教官は言った。
「回れ。」(S教官)
先ほどまでとは明らかに違う、投げやりともあきらめとも哀れみともつかない口調だった。
再び正面に向きなおり、3人の教官の視線をヒシヒシと感じながら、
両手を前で交差させ、モジモジしながら私は立ち尽くしていた。
「オマエなぁ、何だその髪型わ。」(S教官)
「あっ、ハァア・・・。」
「一体どうしたんだ、その髪型?」(S教官)
同期にやってもらったなんて言ったら、アイツも怒られる可能性ありだし、何て言えばいいかなぁ・・・・。
「あっ、イエ、あのぉお、実は・・・・・・、
 えーっと、先日町へ行ったときに床屋へ寄ったらですね・・・・・、うーんと・・・・・、
 なんか新米さんというか、研修生みたいな人がいて・・・・・、
 練習台になってくれたら安く髪を切ってくれる、と言うんで・・・・・、
 それでお願いしたらこんなになってしまったんです・・・・・・。」
「そういう髪型が今は流行っているのか?」(S教官)
「イエッ、そういうわけでもないんですけど・・・・・。」
「あのなぁあ、オマエ、それ、カツラをかぶっているように見えるのだ。」(S教官)
「え゛ぇ゛〜、ほんとですかぁ???」
「そうだよ。 オマエ、それ、おかしいと思わんのか?」(S教官)
「あっ、ハァア・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」(教官一同腕組みをしたまま沈黙)
私はただひたすらモジモジ立ちすくんでいた。
しばらくしてS氏は言った。。
「明日までに何とかしてこい。」(S教官)
「えっ、何とかするって、どうすればいいんですか?」
この髪型で何とかしろったって、剃るしかないじゃん?! 勘弁してよ〜。
デブでしかもハゲっていったら、もう完璧プロレスラーじゃん!
「どうするもこうするも、そんなことはオレは知らん。 とにかく今日中に何とかしてこい。」(S教官)
「え゛ぇ゛〜。 これから町へ行くんですか? この髪型を何とかしろ、と言われましても剃るしか他に方法はないですし・・・・」
「だったら剃ればいいじゃないか!」(S教官)
「イヤッ、それだけは勘弁してください。 あと数日もすれば下の毛も伸びてきますし、きっと目立たなくなりますので。
 お願いです。 勘弁してください。 今日町へ行っても床屋は閉まっているし(真っ赤なウソ)、
 今日はこれから勉強もしなくちゃならないし(これももちろんウソ)、お願いします。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」(教官一同腕組みをしたまま沈黙)
「分かった。 今回だけは許してやる。 二度とするなよ。」(S教官)
「分かりました! ありがとうございます。」
「本当に分かったのか?」(S教官)
「ハイ! 分かりました! ありがとうございます。 失礼しますっ!」
今度は深々と頭を下げ、後手でドアを開け、何度も頭を下げてお礼を言いながら、私はANK事務所を後にした。

事務所のドアを閉め、ホッと胸を撫で下ろし、一息ついているところへ、
事務所から出てきた私の行動を一部始終見ていたオーストラリア人の教官がニヤニヤ笑いながら言った。
Hey Naoki. What did you do this time?」(今回は何をしでかしたんだい?)
なにぃい〜、this time ってどういう意味なわけ?
それじゃぁ、まるで私がいつも叱られてるみたいじゃないかぁ〜、って確かに叱られてるわなぁ・・・・・。
「Well, Captain S hated my hiar style and he wanted me to shave my head!」
Are you going to?」(オーストラリア人教官)
「Noooo! Of course not!」
私は上の髪を持ち上げて、オーストラリア人教官にツーブロックを見せながら言った。
Captain S might be right, you know.(S教官が言うようにした方がいいかもな。)」(オーストラリア人教官)

その後、私はどっちの方向から風が吹こうとお構いなく飛行機の外部点検をしたことは言うまでもない。
迷惑かけて、K君、ゴメンナサ〜イ!

当時訓練生だった私達全員にとってオヤジ的存在だったS教官を、私は大好きであることを、ここで付け加えておきたい。

おしまい♪



2002.02.17

お昼に時間のある勤務だった。
伊丹空港でいつも行く社員食堂へ行った。
ショーウィンドウに並ぶメニューの中で、見るのはいつも決まっている。
500円の定食か600円のデラックス定食だ。
今日の500円定食はロールキャベツ。
う〜ん、なかなかおいしそうだ。
でも、その隣のデラックス定食も魅力的♪
昨晩は質素な食材だけで腹ペコを我慢したし、揚げ物食べちゃおうかなぁ〜。
100円も高いんだけどなぁ・・・・・・。
よっし! 今日は揚げ物に決定!
食券を買うためにレジへ行く。
小銭入れを出し、10円玉と50円玉をチェック。
ラッキ〜♪
丁度50円玉1枚と10円玉5枚あるぜい。
しかも500円玉も1枚あるではないか!
なんてついてるんだ。
小銭入れのコインが減って、財布が薄く、軽くなるのがとても嬉しい。
丁度札入れには1万円札が1枚しか入っていない。
1万円札って、崩して1000円札になるとあっという間に無くなってしまう気がする。
だから、できるだけ1万円は使いたくない。

お新香は取り放題。
2種類あって、着色料をいっぱい使っていそうなタクアンか、複数の野菜を混ぜた漬物。
私は野菜の漬物が大好きなのだが、最近はタクアンばかりだ。
野菜の漬物のときは大盛りにしてもらったお茶碗に漬物を沢山のせて頬張る。
これがたまらんのだ。
ゲェ〜、今日も沢山かぁ・・・・・・。
タクアンは素通りして定食コーナーへ進んだ。

ご飯は大きな青いプラスチックケースに入っている。
丁度私の前でご飯が空になり、別の青いケースを持ってきた。
オォ〜、ご飯温っかそうじゃん♪
お新香ないけど、やっぱり大盛りをお願いしちゃおうっかなぁ〜。
「ご飯、大盛りでお願いしま〜す。」

禁煙席に座り、割り箸を割って、まずはご飯をパクッ♪
???????????????????????
何か味が変だぞ?
もう一口、パクッ。
???????????????????????
芯が残るような、しかも妙な味がする。
茶碗を目の高さまで持ち上げて、米粒をよーく見る。
外側が毛羽立ったような、見たことも無い形状をしている。
もう一口、パクッ。
マッズー!

ご飯をもらった方を振り返った。
食堂のおばさん以外誰もいない。
どうすっかなぁ。
まぁ、食べられないこともないんだけど、それにしてもマズイなぁ。
2、3口、口に入れて、よく噛んでみた。
いくら噛んでもおいしくない。
我慢する必要ないよなぁ・・・・・。

お茶碗を持っておばさんの所へ行った。
「あのぉー・・・・、これ、ご飯、味が変ですよ。 炊きあがってないような感じで・・・・。」
奥から年配のおばさんが出てきてご飯を味見してくれた。
「アラッ! これ炊きあがってないよ。 芯、残ってるよ。」
奥から男性も出てきて3人で話していた。
「ゴメンねぇ♪」と、別の青いプラスチックのケースからご飯を入れてくれた。
再び席へ戻ってご飯を試食。
今度はOKだ。

さてと、揚げ物、揚げ物。
パクッ♪
んっ?
揚げたてで熱いのだが、味が想像していたようにおいしくない。
近くに家族連れが座っていた。
お父さんらしき人も、私と同じデラックス定食を取ってきたばかりだった。
きっと、あの人も、おいしくないなぁ〜、と思いながら食べるんだろうなぁ。
ショーケースに置いてあるのを見ると、おいしそうに見えるのに、期待はずれでガッカリしていることだろう。
せっかくの楽しい家族旅行のはずなのに、可哀想に・・・・。

そういえば、この前カレーうどんをたのんだら、
汁の中に半分固まったかたくリ粉の塊がいくつも入ってて、驚いたっけなぁ。
でも、500円の魚の煮付けの定食で、ムチャクチャうまいこともあるんだよなぁ。
まっ、時には仕方ないさ。
次回に期待するとしよう♪



2002.02.28

関空へ向かう途中、55階ほどあるりんくうゲートタワービルの上の方が、低い雲に隠れて見えなかった。
随分低いなぁ、あの雲・・・・。 何故かイヤーな予感。
関空への橋を渡っている途中、風向計が見えた。
ふ〜ん、今日はRunway24かぁ〜。

キャプテンと一緒にディスパッチへ向かった。
へっ??
関空は Runway 06 を使ってるって??
風はどっちから吹いてるの? 030°〜 060°??
おっかしいなぁー、さっき見た風向計は絶対 240°から風が吹いているように示してたのに・・・・。
再び胸騒ぎ。

最初は関空→松山。
九州から四国、紀伊半島にかけて停滞前線があり、あまり天候は良くない。
しかも松山は ILS が使えない(きっと修理しているのだろう)。
ILS なら 267feet(約80m)まで降りて、滑走路が見えれば着陸できる。
ILS が使えないと VOR Approach になるため、520feet(約160m)までしか降りれない。
たった80mの違いなのだが、これが大きい。
しかも視程は 2400m 以上ないと進入を開始することができないのだ。

だが、520feet/2400m で降りれない程天気が悪くなるはずはない、と確信して出発。
私が操縦することになった。

ところが、私達が到着する頃、松山の上空には日本航空、全日空、日本エアシステムが待機しているではないか!
う〜ん・・・・、そんなに天気が悪いのか・・・・・。
幸い天候は除々に回復し、進入を開始して良い条件になった。
最初にアプローチした全日空が着陸し、日航、日本エアシステムと続いた。
最後に私達の順番がきたのだが、約30分、上空で待機する羽目になってしまった。

所定のコースを飛んで、最低降下高度 520feet まで降りて水平飛行。
そのまま滑走路に近づく。
計器に表示される滑走路までの距離が、3.0という値までに滑走路が見えなければゴーアラウンドしなくてはならない。
3.5、、、3.4、、、3.3、、げっ、まずいかも、、3.2、、、3.1、、あっ、見えた♪
右に旋回して滑走路と平行に飛び、反対側に回って Runway 32 に無事着陸した。

上空で順番待ちしたため、到着は30分、定刻より遅くなってしまった。

仕方ない。
次の千歳行きで取り戻そう。
松山→千歳も私の担当だった。
追い風に乗り、かなり時間を短縮できるかと思ったのに、千歳への着陸の順番は5番目ェ〜??!!
30分遅れが35分遅れになってしまった。

飛行機から乗客が全員降り、キャプテンと私もコックピットから出た。
地上係員が客室乗務員(CA)に言っている言葉が聞こえた。
次の便のお客さんの案内時刻は48分です。
んっ?
腕時計を見ると・・・・・・、今、40分だ。
48分にお客さんを案内なんて、出来るわけないじゃないですか? と、心で思いつつも笑顔、笑顔。
ハ〜イ♪
客室の清掃をしなくちゃならないし、私達パイロットは遠くのディスパッチルームまで行かなくてはならない。(小走り)
トイレにも行きたい。
CA さん達は空き時間にお昼の弁当を食べなくてはならない・・・・8分で?
整備さんは燃料を入れなくてはならない。
千歳 → 松山 は飛行時間が長いため、沢山燃料を積むのだが、これに時間がかかってしまう。
結局、燃料を入れ終わったのが50分過ぎ。
やはり、35分遅れを取り戻すことが出来ず、千歳を出発した。

上空では向かい風を時速300km程度受けて押し戻されながら、
それでも途中ショートカットしながら飛行し、到着は定刻の25分遅れにまで縮めることが出来そうな雰囲気だった。

近畿の上空まで来た。
ハァ〜、やっと近畿かぁ〜。
もう少しで四国だなぁ・・・・・・。
カンパニー無線が聞こえてきた。
へっ?
東京 → 松山 の飛行機が大阪にダイバート?
飛行機は東京に戻して、乗員は便乗で松山に入れ?
松山の天候、まだ回復してないわけ?
それとも、さっきよりさらに悪化したわけ?
私はカンパニーを呼んで、状況を聞いてみることにした。
九州から四国にかけてエコーを伴なった雲が連なり、当分回復する可能性はないー?
しかも天気予報では視程 1200m を予想してるってぇ〜、って、2400m なきゃいけないのに?
そりゃ降りれないわさ。
もー、どうすんの?
冗談じゃないよぉ〜?!
で、降りれなかったら大阪に行くのですね・・・・・・・・・・・・・・・・。
朝も危なかったけど、またかぁ。
今日の松山、最悪のコンディションだなぁ。

燃料計算して、とりあえず上空で30分待ってもOKだった。
私達が松山の上空に到着してしばらくすると、天気がほんの少しだけ回復し、進入を開始して良い条件が整った。
よっしゃぁ〜、行くぜぃ〜♪と思いきや、私達の前に着陸機がいるだぁ〜。
もうっ!
そんな話、聞いてないよー!
今のうちに早く降りねば、また天気が悪化して進入できなくなってしまうではないかぁー!
待つこと30分。
やっと私達の順番がきた!
幸い、天候はアプローチできるギリギリの状態を保っていてくれた。
これはひょっとして降りれるかなぁ〜。

所定の経路で降下し、再び滑走路へめがけて 520feet で水平飛行。
3.5、、、3.4、、う〜ん、ヤバイなぁ・・・
3.3、、、3.2、、マジ?
3.1、、、お゙お゙〜、見え゙だぁぁあー!
今度は左へ旋回し、Runway 14 へ向かった。
もう滑走路はすぐそこだっ!
って、あれぇ〜、ちょっと滑走路を見失いかけてる・・・???
雲、邪魔、どけ、どかんか!どいてちょおー?
キャプテンはすかさずゴーアラウンド!

上昇をしながら数秒後、キャプテンに言われ、私は管制官にもう一度アプローチをさせてくれるよう無線で要求した。
え゙え゙〜!
所定の上昇経路に沿って飛行し、5000feet まで上昇して松山空港の上空で待機しろぉー??!!
なんでぇ〜?
よしっ、もう1回お願いしてみよう!
管制官は再び同じことを言いかけたが、その声は途中で途切れ、別の管制官の声が聞こえてきた。
要求通り、再度アプローチを認めます。
お゙お゙ー、ありがとー!
後ろにいた先輩管制官、マイクを引ったくったんかぁ〜?!
とにかく、ありがとー!

一旦 4000feet まで上昇してから再び降下して、滑走路に向けて同じ経路を 520feet で水平飛行。
今度は距離3.5で滑走路が見え、左旋回し Runway 14 に着陸した!
到着は定刻より1時間遅れだった。

着陸できたとはいえ、雲が邪魔でゴーアラウンドするかしないか、ギリギリの状況だった。
私達の後からボーイング767がアプローチしてきた。
B767は私達の乗るA320より大きい。
飛行機は大きいほど細かい動きをしにくい。
このため、天気が悪いときは着陸しにくいはずなのだ。 それでもB767は松山に着陸した!
ゴォー!!という逆噴射の音を聞きながら、スッゲェーなぁー!!と私は心の中で感動していた。