2002.06.01

妻の父の田舎(京都の奥地)へ行った。
彼女の両親とは現地で落ち合った。

義父の短パン姿を見るのは今回が初めてだったが、ふくらはぎの筋肉の発達ぶりに私は感嘆してしまった。
あまりにも形が良すぎる! しかも義父は61歳だ。
私がふくらはぎの形状をほめちぎると、義父ははちょっと照れているようだった。
義母はというと・・・・・・、あきれていた。

庭をうろついていると、小便がしたくなった。
家の中に戻るのは面倒だし、周りは畑だ。
外でしちゃえっ!
ジッパーを下げ、放尿〜♪
あ゛あ゛あ゛っーーーー!!!!
下を見ると、そこにはでっかいアリ地獄があるではないかぁぁあああ〜〜!!
私の妻が、以前、アリ地獄を見たことがないと言っていたのを思い出したのだ。
It's too late〜!
放尿を開始したのは、まさにアリ地獄の上だった。
すかさず方向転換し、的を別の場所に移した。
ジッパーを上げ、私は考え込んだ。
やっぱり、妻にアリ地獄を見せるべきだろうか?

近くにあったスコップを持ってきた。
今は跡形もないアリ地獄が、あったであろう場所付近の砂をスコップで掘り起こし、近くのコンクリートの上にまいた。
さてと・・・・、アリ地獄君はいるかなぁ〜。
どこかなぁ〜・・・・。
スコップで濡れた砂を突っつきながらほぐそうとしたが、くっついて塊になってしまいうまくいかない。
仕方ない・・・・・・。
やっぱり小さい頃からそうしていたように、私は指を使って砂をほぐしにかかった。
そこに妻が通りかかった。
何してるの?」(妻)
「アリ地獄がこの中にいるはずなんだ。」
ふーん・・・。 アリ地獄って、乾いた砂の中にいるんでしょ? なんでこの砂、濡れてるの?」(妻)
「あっ・・・、イヤ〜・・・・・・・・。 いやね、立ションしちゃったんだね、アリ地獄の上から。」

そして、見〜つけた♪
アリ地獄の姿を見ることができて、妻は嬉しかったのか?
嬉しくなかったのか?
私が早く手を洗うことに気を取られていたのかもしれない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

庭には大きな池?のようなものがあった。
それはコンクリートでできた立方体の貯水槽のようなものだった。
藻が沢山生えており、その上に殿様ガエルを3〜4匹発見!
ワァ〜オ!、と近寄ると、即効彼らは水面下に逃げ隠れた。

私はいまだかつて、動物事典でしか殿様ガエルを見たことがなかったので、とても興味をそそられた。
あの水面下で、どうやって殿様ガエルは生活しているのだろうか?

納屋に網があったので水面に突っ込んでみたが、あまりにも古くてすぐに破れてしまった。
近くのお店に買いにいこうか・・・・?

義母は言った。
水を汲み取ったらいいねん。」(義母)
私は網を使ってカエルを捕まえることばかり考えていた。
何気なく、当たり前のように言った義母の言葉に、そうか!そんな選択肢もあったか!
と喜び勇んでバケツを探した。

一辺が1.8mほどの四角形で、深さ70cm程はあっただろうか。
その中いっぱいの水を1つのバケツでくみ出すのに、
どれだけの労力が必要か?ということを私は考えもしなかった。
しかも、水を汲み出した後、それを近くに流すと貯水槽に戻ってしまう構造になっていた。
仕方なく、5mほど離れている道路のドブまでバケツを運び、そこに水を流すことにした。

地面に埋まった貯水槽にかがみ込み、バケツを入れていっぱいにし、立ち上がって道路まで行き、捨てる。
この動作を私はひたすら繰り返した。
何度往復しても、なかなか水面が下がっていかない。
炎天下、汗だくになりながら、私はとにかく往復し続けた。

30分ほど経って、妻が私を探しにきた。
私がしている行為にかなりあきれて、妻はそのまま立ち去った。
1時間ほどして、義父と義母は帰ることにしたようで、車に乗って立ち去った。
それでも私はがむしゃらに、意固地になって水をバケツで汲み出した。

貯水槽の下から30cmほどまで汲み出せば、
きっと上から殿様ガエルの様子が見えるに違いない、と確信していたのに、何かがおかしい。
どこまで水を汲み出しても見えてこない。
貯水槽の底は見えているのに何故?
どこかから逃げたのだろうか?
イヤ、そんなはずはない。
絶対どこかにいるはず・・・・・。

底から20cmほどまで汲み出したとき、恐る恐る貯水槽の中に入ってみた。
ゲェ〜、泥が底に溜まってんじゃないかよぉ〜!!
この泥の中に殿様ガエルは隠れてるんじゃないだろうなぁ・・・・・・。
いたぁぁああーーーーっ!!

貯水槽の底に残った、最後の水と泥をどけるため、
私は貯水槽の中に入り、ちりとりですくってバケツをいっぱいにし、
貯水槽から上がり、近くの庭に捨てては、また貯水槽の中に戻った。
これを何度繰り返しただろう?
1時間半は作業を続けたようだった。



水と泥、全て汲み出してしまうと殿様ガエルが干からびてしまうかもしれない。
少しだけ残して、捕獲に移った。

ちりとりとバケツを使ってカエルを追い、1匹ゲ〜ット!
さらに・・・・・・、2匹目、ゲ〜ット!
バケツを貯水槽の外に置き、ちりとりだけ持ってさらに探した。
いた、いた。
3匹目、ゲ〜ット!
ケツに放り込んだ。
もういないかなぁ・・・・・・、おいそこのオマエ、死んだフリ、してんじゃねぇ〜ぞぉ〜。
4匹目、ゲ〜ット!
泥まみれで貯水槽から上がり、バケツの中を満足気に見た・・・・・・。
え゛え゛え゛ーーーーーーー?????!!!!!
なんで2匹しかいないの??
なんと、草むらに2匹発見!!!!
クッソーッ!! こんなに苦労したのに、取り逃がしたかぁぁああぁぁああ〜〜〜〜!!??
追いかけたが彼らはあっという間に草むらの奥に逃げ込み、消えていった。



 しょげ返りながらも、少しだけ満足げに井戸へ行った。
 泥水を落とし、冷たい井戸水で洗うと、
 冷たいせいかカエルの動きが鈍くなった。
 
 最初から冷たい水につけこんどきゃ、
 冬眠したみたいに動けなくなって
 逃げられないで済んだのになぁ・・・。


 妻を呼び、記念撮影〜♪





カエルを貯水槽に戻し、私は妻に命じられるまま足と腕を洗った。
帰る準備をして、荷物を車に積み、貯水槽を見ると・・・・・。
なんとぉ〜っ!? 4匹、居るではないかぁぁああぁぁああ〜〜〜〜!!??
クッソーッ!! 戻ってきおったなぁ〜!
でも足と腕を石鹸でしっかり洗ってしまった私。
もう泥水の中には入れない〜♪
あきらめて帰ることにした。

2時間半、車を運転し、我が家に到着。
車を降りると・・・・、ゲェ〜!!??
腰と下半身が筋肉痛になってんじゃねーかよぉー!?
バケツに水を汲み、立ったり、座ったり、上ったり、歩いたり、1時間半もすればこうなるか・・・・。
それにしても、33歳にもなって、殿様ガエルを捕まえるために、
なんで私は 「バケツ・プレイ」 して喜んでるわけ?
スカッと晴れわたった空を見上げながら、ちょっとだけ虚しくなった瞬間だった。



2002.06.06

裏庭でウェート・トレーニングを済ませてから、暑い中、ジョギングへ行った。
全身の筋肉を疲労させて、さらに走るのは結構きついものがある。
しかも今日は良い天気で気温はかなり高い。

体も気分もグッタリ。
ゼーゼーいいながら走っていると、遠くに乳母車?が視野に入った。
んっ?? 何だあれは?
なんであんな所に乳母車が放置されているんだ?

アパートの前に、ポツンと乳母車が置いてある光景が、とても不自然だった。
走って近づいていくと・・・・・
そばには誰もいない。
どうやらアパートの入口に乳母車が放置されているようだ。
そこは、ちょうどT字路になっている角にあたる。
車のとおりはほとんどない場所だが、時には作業用の大きなトラックが曲がることもある。
巻き込まれる可能性がないともいえない。
危ないなぁ・・・・・・。
でも、乳母車も自転車とある意味一緒か・・・・・。

私は走りながらさらに近づき・・・・・・・、ふと乳母車の中を見ると・・・・・・、
ゲェェエエェェエエ〜〜〜〜〜〜〜!!??
赤ちゃん、入ってるじゃん!!
置き去りにす゛る゛な゛ぁぁあ゛あ゛あ゛ーーーーーーッ!!!!

赤ちゃんは何も知らず、何も気にせず、手をギョッと握り締めてスヤスヤ眠っていた。

車が曲がるときに巻き込まれる、という危険性だけではない。
このご時世、他人の赤ちゃんを連れ去る人がいるかもしれないではないか?
そんなことありっこないとは思うが、用心するのこしたことはない。

私は不安だったので、お母さんが出てくるまで赤ちゃんのそばにいてあげようか、とも思った。
でも、穴だらけの袖なしシャツを着た、汗だくのオヤジが乳母車のそばにいることの方が
傍目からは、危険すぎる光景かもしれない。
それに、クタクタの体を押して走っているのに、今、足を止めたら、きっともう動けないだろうなぁ・・・。
薄情かとは思ったが、私も赤ちゃんを一人残して走り去った。

そこは直線の道路だった。
私は何度も何度も振り返ったが、乳母車はいつまでも動かされなかった。

お母さん、赤ちゃんを道端に放置しないでくださいね!



2002.06.07

古くなって黄ばんだヘインズのT−シャツを、今朝、袖をハサミで切ってノースリーブにした。
ステイ先でジョギングするとき用に作ったのだ。
G短パンと同じくらい、妻には不評の代物だ。
でも、使い古したT−シャツは生地が薄いし、襟がヨレヨレに伸びきっているので、涼しいし、乾きやすい。
ホテルで汗だくになっても、次の日までには確実に乾いてくれるから便利なのだ。

高知のホテルにチェックインした。
黄ばんだ袖なしT−シャツに、チョー短い短パン(G短パンではない)、
スネ毛ボーボボ、スニーカー姿でホテルの部屋を出た。
できることならこの姿、キャプテンや知り合い、ホテルの人、普通のお客さんには見られたくない。
私にも、まだ羞恥心が残っている。

エレベーターへ行き、下行きのボタンを押した。
誰も乗ってなきゃいいなぁ・・・・・・・。

ピーン。
ドアのまん前に立って待機。
エレベーターのドアが開いた。
ゲェェエエ〜〜〜〜!!??

エレベーターの中央には、人一人立てるだけのスペースがあり、
正面奥にモッサモサのウェディングドレスを着た美人花嫁と新郎、
介添え人、正装の親族の方々が乗っているではないかぁあっぁあーーーー!!!!
花嫁とバッチリ目が合い、しむわぁとぁぁああぁぁああ〜〜〜〜!!

きっと、この予期せぬ出来事に、私は目が点になり、口をあんぐり開け、
さぞみっともない姿をさらけ出していたのだろう。
新郎、新婦、一同、みな微笑んでいるぅ〜♪
私はドアから中に入ることが出来ず、そのまま立ち止まって無言のまま固まってしまった。

どうぞ♪」(介添え人)
介添え人が上品に手をさし出し、私にエレベーターの中央に乗るように促した。

「イエッ! 結構でっすっ! どうぞ、どうぞ。 アッ、イヤァ〜、どうぞ、どうぞ。」
後ずさりして斜め後方にずれ、ドアの端の彼らの視界から消えるように私は移動した。

フゥー、ビックリした。



2002.06.08

今日は松山ステイ。
ウォーキングへ行った。

歩道のある比較的広い道路を歩いていたとき、地面で何かが動いた気配がした。
足元を見ると、そこには何やら細長い物体がうごめいている。
んっ??
ミミズか?
イヤ、黒いし光ってないぞ・・・・・・。
ウワォー!?
これってヘビ??

それは体長15cm、太さ5mm程度のベイビースネークだった♪
頭の大きさは私の小指の半分もない。

う〜ん、いっちょまえにクネクネできるんだぁ〜。
おい、しっかりしろ〜。
クネッてるわりに全然前に進んでないぞぉ〜。
人通りのおあまりない歩道にしゃがみこんで、しばし観察。

これって、まさか毒ヘビじゃないよなぁ〜。
もし毒ヘビだとしても、このサイズなら噛まれてもきっと大丈夫〜♪
頭を抑え込み、ゲットォ〜♪

先日、ハイキングに行ったときに初めてヘビを掴んで以来、これが生涯2度目のヘビ。
お腹をさすってあげてから、近くの草むらに放してあげた。
コンクリートの上に出てきても食い物ないからな。
しっかり獲物キャッチして大きくなれよ!って、あんなに小さい口で、一体何を食べるのだろうか?



2002.06.09

今日は、ちょうど本州の上空に深い気圧の谷があった。
しかも移動速度は非常に遅く、関空−女満別の運航時間帯は気流の悪いことが予想された。

上空を飛行中の飛行機からのレポートによると、
案の定、20,000feet から 39,000feet にかけて、どの高度も揺れが続いているようだった。
こうなったら、もうどうしようもない。
より揺れない高度を探す意味もないので、関空→女満別は 37,000feet で我慢して向かった。
雲があろうとなかろうと、ずっとガタガタ揺れが続いてしまった。

お客さんには大変申し訳なかったが、避けられない天気は仕方がない。
我慢してもらうしかなかった。

帰りは 28,000feet を飛んでみた。
函館の上空まではうんざりするほど揺れたが、どうやら気圧の谷が抜けたようで、函館から先は気流は良好だった。
それにともない、今まで気流のレポートで騒がしかったカンパニー無線が静かになった。
きっと、28,000feet だけでなく、他の高度も安定してきたのだろう。

午前中からお昼過ぎにかけて仕事をしていたみなさん、お疲れ様でした♪



2002.06.16

関空のディスパッチへ行き、関空 → 松山(271便)のブリーフィングを受ける前、天気図をチェック。
271便はいつもと同じ 20,000feet の巡航で問題なさそうだ。
空港の天気も良さそうだし。
次の237便はどうかなぁ・・・・・。

松山 → 千歳(237便)は、通常、瀬戸内海から名古屋の上空を通って新潟へ向かう。

梅雨前線の雲が太平洋側を覆っている。 そこに入ると揺れそうだ。
コンピューター画面で雲の写真、水蒸気画像、、赤外線画像を見ると、
どうやら237便の運航で雲にかかりそうなのは名古屋付近だけだ。
過去数時間の画像を連続して動かすと、今後、雲がどちらに移動するかが分かる。
名古屋の雲はなくなりそうにない。

通常ルートとは別に、岡山から日本海側に抜けるルートがあったなぁ・・・・。
でも、確か、中国地方の上空は東西に行き来する飛行機が多く、
なかなか南北には通してくれなかったような気がする。
岡山から日本海へ行ければ、きっと揺れないだろうなぁ・・・・。

ディスパッチに置いてあった飛行計画によると、237便は 27,000feet で計画されていた。
名古屋近辺と東北地方は 28,000feet〜36,000feet まで揺れが予想されていたからだ。
じゃぁ、何で 37,000feet にしないんだろう?
お客さんが満席で、しかも長距離を飛ぶために燃料を沢山積まなくてはならず、
飛行機が重すぎて上がれないのかぁ。
弱ったなぁ・・・・。

37,000feet で行くより 27,000feet の方が沢山燃料を使うし、
27,000feet は追い風が弱いので、到着に時間がかかる。
また、千歳空港は南風で滑走路は19を使っており、北風が吹いているときよりアプローチに時間がかかる。
さらに着陸後、Runway 19 だと Runway 01 のときより5分ほど地上滑走に時間がかかってしまう。

271便を飛び終えて、松山のディスパッチへ行き、再び天気をチェックした。
37,000feet も揺れてる??って、このデータは名古屋付近だな。
27,000feetも揺れてるのかぁ・・・・。
25,000feet 推奨ってか・・・・・。
でも時間かかるよなぁ・・・・。

するとキャプテンが言った。
日本海に出るルートで行ってみようか?」(キャプテン)
日本海に出るルートの方が名古屋を経由するルートより5分程早い。
また、使用燃料も 500ポンド近く少なくてすむ。
いいじゃん、いいじゃん♪

計画されている飛行機の重量より、お客さんが乗り終わり、
貨物を搭載した後の実際の重量の方が軽い場合が多い。
離陸重量の予想は 147,000ポンド。
このウェイトでは 37,000feet には上がれない。
仮に実際のウェイトが 145,000ポンドになれば、上昇中に 6,000ポンド近く燃料を燃やすはず。
37,000feet に到達する前に、重量は 139,000ポンドまで減っている計算になる。
37,000feet に上がれる重量は・・・・・、141,000ポンド程度じゃん♪

コックピットに戻り、お客さんが全員乗り終わって離陸重量が分かった。
142,000ポンドかぁ。
これなら 37,000feet は楽勝だゼイ。

松山空港を離陸し、すかさず 37,000feet を管制官にリクエストした。

上昇しながら 25,000feet を通過中に風を見ると、追い風 70kt だった。
それが 37,000feet に達する頃には 140kt まで増速していた。
70kt の違いといえば、時速130km程も違う。
コンピューターが計算する千歳空港到着時刻は定刻より15分早い!
早くつけるし、燃料を使う量は少ないし、いいことばかり。
う〜ん、かなりラッキーだ。
上空でカンパニー無線を聞いていると、名古屋近辺はかなり揺れているようだった。
やっぱり岡山から日本海に抜けて正解だね♪

秋田から青森に向かっている途中、管制官に 25,000feet に降下するよう指示された。
なぬぅ〜?
なんでさ?
千歳へ向けて降下中、35,000feet 〜 28,000feet が揺れるとカンパニーで言ってたし、
降りたくないんだけどなぁ。
でも仕方がない。
管制官の指示には従わなくてはならない。
客室ではサービスが終わったようだけど、ベルトサイン、つけようかなぁ?
28,000feet 以下は揺れないんだったら、つけたくないなぁ・・・・。
えーい、つけないで降りてみるか!

降下するにつれて追い風が減り、それとともに揺れが始まった。
んーーーー、でも、これならまだ我慢できる程度。
ちょっと減速して、スピードブレーキを引っ張った。
揚力を減らしたほうが、きっと揺れないんじゃないか、って誰か言ってたっけ。

計器画面の設定を変えると TCAS が前方20マイルに機影を映しだした。
こいつだぁ。
高度 23,000feet で飛んでいる飛行機を発見。
そんな低い高度では、そりゃスピードもでないはずだわ。
千歳までまだ距離があるし、37,000feet で追い越させてくれれば良かったのに。
我々も、彼らも、誰も減速せずに、普通に飛んでいても私達が先を越して、
さらに管制間隔を保てるくらい引き離せただろう。

そんなことを考えていると・・・・、管制官に右へ旋回するよう指示された。
ジグザグ飛行をさせて先行機との距離を保とうとしているのだ。
私達はすぐに減速を開始。
時速100kmほど減速したが、まだ足りなかったようで、
右へ旋回した後、今度は大きく左に旋回するように管制官は指示してきた。
もうっ!
せっかく追い風にのって、ここまで燃料節約してきたのに、これじゃ、全然意味ないじゃん!

しばらくして TACS を見ると・・・・・
ゲェ〜〜〜!?
マジッすかぁ〜〜!?
さっきまで1機しかいなかったのに、2機に増えているではないかぁぁぁあああ〜〜〜!!
う〜ん、2機が重なっていたから TACS は1機分しか映さなかったのだろうか?
もう1機は 27,000feet で飛んでいる。

この重なっている2機も距離が離れなくては千歳へアプローチすることができない。
私達の前にいる 23,000feet を飛んでいる飛行機まで減速する羽目になり、
その結果、私達の到着はさらに遅れることになった。

千歳へは定刻より10分早く到着したものの、当初は15分早着する予定だったので、
結局、27,000feet で普通に飛んで、待たされなかった場合と同じだけ時間を食ってしまった。

上空でキャビンアナウンスを入れたとき、もしものために10分早着する、と言っておいて良かったぁ〜♪

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千歳 → 羽田 に便乗で乗った。
羽田到着後、CAさんと話しをする機会があった。
彼女は20年もCAとして勤務しているベテランだ。
学生時代からグライダーを飛ばすのが趣味で、今でも時々飛ばしに行くのだそうだ。
彼女が入社した当時は、まだ女性がパイロットになるシステムはなかったが、
今は女性のエアライン・パイロットがいる。
今の時代に生まれれば良かった、と彼女は語った。

J社には現在3名の女性パイロットがいるそうで、そのうち1名が初めて産休を取ったのだそうだ。
乗務からはなれるなんてもったいない、とみんなから早く帰ってくるように願われている。
もう1名は現在移行訓練中とか。

20年前に比べると勤務は確実に厳しくなってきており、
もうエアラインのおいしかった時代は終わった、と言っていた。
私の今日の乗務パターンを話すと、彼女は呆れ果てていた・・・・・・・・・・・・。



2002.06.17

中標津 → 羽田(838便)は最初 35,000feet で飛行した。
途中から梅雨前線に伴った雲がせりあがっており、その上を飛ぶために 39,000feet まで上昇した。
仙台を飛行している頃、東北の中央から羽田に向かって 39,000feet を飛んでいる飛行機を発見。
ポジションは、私達から見て右斜め後方だった。
同じ高度で飛んでいる私達で、目的地は同じく羽田。
当然、、私達が優先されるものと思っていた。

突然、他機との関係で、35,000feet に降りるように、管制官から指示された。
35,000feet は揺れることが分かっており、降りたくない。
なんで後からくる飛行機に 39,000feet を譲らなくてはならないのか?
距離が詰まってきているなら、昨日の 松山 → 千歳 で千歳へアプローチしたときのように、
彼が減速するなり、ジグザグ飛行をすれば良いではないか?
私達は昨日、そうさせられたのだ。
それでも管制官の指示には従わなくてはならない。
35,000feet は揺れるので、降下する代わりに旋回したいのですが、どうでしょう?と提案した。
管制官からこの提案に対してOKがきた上に、
私達が先に羽田に到着出来るようにショートカットさせてくれようというのだ。
う〜ん、嬉しいではないか♪

羽田が近づいてくると今度は羽田とは全然違う、あさっての方向へ旋回するように指示がきた。
ヌワァニィィィ〜〜〜〜!!??
彼らを先に行かせるんかいっ?!
私達より後にいる彼らを!
冗談じゃないぜぇ〜? まったく!
昨日は後から追いついたのに後回し、今日は前を飛んでいるのに後回し。
一体全体、どうなってるわけさ?
その上、後にいる彼らを先に行かせるために旋回させた上、
降下するように指示され、揺れる雲の中へ突入した。

もう、なんかイヤになっちゃうよん!



2002.06.19

伊丹 → 高知 へ自社便で移動して、その後3時間空きからの乗務スタート、という変則パターン。

たまたま手元に間違って持ってきてしまった書類があった。
高知 → 伊丹 を飛んでいる乗員に託送してもらい、伊丹の事務所へ持って帰ってもらおう。
その便は関空から高知に入り、折り返し伊丹へ戻ることになっていた。

で、と・・・、誰が乗ってるのかなぁ・・・・・?
キャプテンは・・・・・
ゲッ!?
○○さんじゃん!
○○さんといえば、偉〜い人だ。
間違って他人の書類を持ってきちゃったなんて言いにくいなぁ・・・・。
そうだ、整備さんの所へ行って、社用メールっぽく茶封筒に入れてコーパイさんに渡せばいっか。
1枚の紙切れだったので、露出したまま渡すつもりだったが、一応、公の種類っぽく偽装することにした。

関空から到着した便は定刻を大幅に遅れていたので、
キャプテンは飛行機で待機し、ディスパッチへは来ないか?と思ったが、
ヘビースモーカーなので、タバコを吸うためにディスパッチへやってくるようだった。

ディスパッチの戸棚を見ると、沢山の飛行機関連の本が並んでいる。
・・・・・・・・・・・、そうだ!
飛行機の勉強してるフリ、しとくか♪
戸棚から飛行機の性能に関する本を取りだし、
ディスパッチの入り口に向かい合うように置いてあるカウンターに本を起き、
読みふけっているフリをしてキャプテンが現れるのを私は待った。

お〜、お前、こんなところで何やってんだ?」(キャプテン)
「あっ、ハイ、今日は変則パターンで3時間待ちなんですよ。」
おぉ、そうか・・・・・、何、読んでんだ?」(キャプテン)
キャプテンはタバコに火をつけながらカウンターに歩み寄り、おもむろに私の開いている本を覗き込んだ。
「勉強してるフリしてるんですよ♪」
お前、こんなもん読んでどうすんだよ。」(キャプテン)
開いているページは、あまり知らなくて良いことが書いてある場所であることを、簡単に見破られてしまった。
そんな所に立って本を広げてたら、いかにもフリしてるみたいにバレバレですよ。」(コーパイさん)
「そーっすかぁ?
 いや〜、ちょっとでもしてそうなフリしてポイント稼ごうかと思ったんですけど、バレてましたぁ?」
お前ら、ちゃんと今のうちに勉強しとくんだぞぉ〜。
 最近の若いもんは、義務を果たさないで権利ばっかり主張するから困ったもんだよなぁ、オイ。
 お前は義務果たさなかったら権利なんてないんだからな、分かってるな。
」(キャプテン)
ちょっと怖い表情で、でもちょっぴり笑顔を見せながら、キャプテンはくわえタバコで言った。

偽装社用メールの件については、何も聞かれずに無事に渡すことができた。



2002.06.22

高知空港へアプローチ中の出来事。

500feet 近辺でアプローチコース上の低い所にトンビを1羽発見。
気持ち良さそうに舞っている。
う〜ん、かなり邪魔だなぁ・・・・・。

「もうちょっと近づいてからゴーアラウンドするかどうか考えます。」
とキャプテンに一声かけてアプローチ継続。

定刻より7分も早いのかぁ・・・・。
ゴーアラウンドしちゃおぅっかなぁ・・・・・。
練習にはなるんだよなぁ・・・・・。
1回、回っても定刻にはつけそうだし。
どのくらい接近してからゴーアラウンドすると、近すぎてエンジンに吸い込んじゃうのかなぁ・・・・・。
出力MAXで吸い込んだら、きっとエンジンお釈迦だわなぁ・・・・。
どのタイミングでゴーアラウンドすること決めようっかなぁ・・・・。
でも、燃料、もったいないなぁ・・・・・。
お客さん、怖がるかなぁ・・・・・。
運良く、トンビが目の前に来てくれると合法的にゴーアラウンドできるんだけどなぁ・・・・。
そうしたら、何てアナウンス入れようかなぁ・・・・。
おっ!
寄って来た、寄って来た。
いい感じ、いい感じ。
そのままそこに居ろぉ〜。
そうしたらゴーアラウンドすっからなぁ〜。
待っとけぇ〜。
さーて、一発いくかぁ〜〜〜・・・・、って、あ゛あ゛ぁ゛〜、動ぐな゛ぁ〜〜〜!!

飛行機が接近すると、スーッと左斜め下に降下していったトンビ。
くっそーっ!
ゴーアラウンドできなかったじゃんかよぉ〜!
まぁ、いっか〜・・・・・。
「じゃぁ、このまま着陸しまーす。」


高知のディスパッチルームへ行った。
「いやぁ〜、1回トンビ食べてみたいんですよねぇー。」
バッタ食べてるからなぁ。 肉食の鳥の肉は臭くて食べられないよ。」(キャプテン)

ディスパッチルームにいた人が言った。
滑走路脇の草を刈るとバッタが食べやすくなってトンビが降りてくるんですよねぇ。
 滑走路上でメスがバッタを食べてると、オスが降りてきてメスに乗っかって交尾を始めるんですよ。
 そうすると、飛行機が来ても、2羽とも全く動かないんですよ。

へぇ〜〜、知らなかったなぁ。

キャプテンが言った。
肉食のトンビはまずいけど、キジはうまいんだよな。
 昔、小型機に乗ってた頃、対馬に行ってキジに当たってさぁ。
 無線で当たったって言ったら、すぐ地上の人が出てってキジ拾ったらしんだ。
 後日その人に言われたよ。
 『キジ鍋うまかったですよ♪』 って。 オレも食いたかったなぁ。

小型機はエンジン音が小さいのでキジは逃げないが、
ジェット機では間違いなく逃げてしまうだろう、とキャプテンは言っていた。
つまり、私がキジ鍋にありつける可能性はゼロってわけか・・・・・・。

ちなみにキジは大陸から飛んでくるらしく、
キャプテンは鳥取空港や米子空港でも見かけたことがあるらしい。
「へぇ〜、キジって渡り鳥なんですか?」
キャプテンは笑っていた。
きっと違うんだろう・・・・・。