2004.12.02

ほぼ、半年ぶりに右席に座り、副操縦士業務をした。

スケジュールが発表されてから、副操縦士業務ができるかどうか、ドキドキしていた。
もう、6年以上、A320の右席に座り、副操縦士をしているにもかかわらず、
操作手順は簡単に忘れてしまうものだ。
自宅で休みの日に椅子に座り、コックピットに座ったつもりで手を動かしてみる。

あれぇ〜?
このスイッチの次に、どれさわったっけ?
このタイミングでなにするんだっけ?
案の定、所々忘れているではないかっ!?

飛行機のマニュアルを読み直し、復習。
何度も復唱し、ようやく感覚が戻ってきた。

そして、今日が本番。
一人前のレギュラーの副操縦士のように、完璧に業務をこなすことができたぁ〜♪って当たり前か・・・・。

久しぶりに右席に座ってみて感じたこと。
お尻にとってもしっくりくる。
居心地の良い席。
以前と比べて、フライトの時に考えることが違う。
考えることの絶対量が少なく、楽。

きっと、訓練でもまれて、勉強して、ちょっとだけ成長したのだろう。



2004.12.11

05:58に伊丹空港に着くと、まだターミナルに入るためのドアが閉まっていた。
06:00までは一般旅客用の自動ドアは開かないのだ。
従業員用の入り口はあるが、遠回り。
2分程度なら待った方がいい。
一般旅客と自動ドアの前で06:00まで待った。

NH501 伊丹→宮崎  07:10−08:15
NH342 宮崎→名古屋 08:45−09:55
NH705 名古屋→千歳 10:50−12:25
NH712 千歳→名古屋 13:55−15:40

千歳ではキャプテンになって初めての雪氷滑走路での離着陸、かと思いきや、
思いっきり路面は乾いていた。
ホッ、としたような、ちょっと残念だったような。
副操縦士のときは滑走路に雪が積もっていると離着陸できない。
なにぶん初めてなので、少しずつ慣らしていった方が良い。
いきなり何も見えないほど吹雪いている中、操縦するなんて、たまったもんではない。
しかし、やっぱり、イヤなことは先送りしたいものだ。

NH705で千歳に到着後、NH712まで時間があった。
しばらくはスタンバイルームにいたが、ステイバッグに新聞を入れていることを思い出した。
出発時刻の25分前に飛行機に戻れば時間的に十分余裕があるが、今日は40分前に戻った。

飛行機に乗り込む前、外部点検をしていた。
すると、整備さんがこっちへ向かって歩いてきた。
どう見ても、私の方向に向かって歩いてくる。
なんで、こんなに早く来たんだろう?
まだ出発まで時間があるから、整備部でゆっくりしてればいいのに・・・・・・。
あっ、まさか、キャプテンの私が飛行機に戻る姿を見て、
時間的にはまだ早すぎるけど、飛行機に来てくれたのか?

「あのぉ〜、すみません。 ひょっとして、私が戻ったから出てきてくださったのですか?」
はい、そうです。」(整備さん)
「すみません。 私、新聞を読みたかったので、ちょっと早めに戻ってきました。
 整備さんはまだ休んでいて下さって良かったのに。」
いえ、仕事ですから♪」(整備さん)

キャプテンOJT中、教官に言われたことがある。
お昼の時間帯に便間で時間があったとする。
自分が雑誌や新聞を読みたいから、といって、キャプテンは飛行機に早めに戻らない方がいい。
もう次便のブリーフィングが始まるのか、と、客室乗務員(CA)が弁当をかき込む可能性があるからだ。
飛行機に戻ったとき、CAさんに声をかけ、
まだいいですから、ゆっくり食べてください、と言ったとしても、やっぱり急ぐ人がいる。
だから、そういうときは飛行機を降りる前に、
自分は早めに戻ってくるけど、○時○分からブリーフィングをするので、
それまではゆっくり弁当を食べていてくださって、結構ですよ♪、
と声をかけておく方が良い。
その教官に、そう教わった。
キャプテンを中心に飛行機が運航されるから、
自分の行動が他人にどう影響するのか考えながら動くように、との指導だった。

副操縦士に対しては、○時○分に飛行機へ向かうので、それまで自由にしていてください、
と時間指定する。
そうすることで、副操縦士はトイレ、タバコ、弁当、等、時間管理ができる。
乗員同士は同じ部署で働いているから言うタイミングもつかみやすいし、
導線が一緒だから相手が何を考えてるのかよく分かる。
だから気を使うのも容易だ。
でも、整備さんについては全く意識していなかった。
各空港毎に、整備部がどこにあって、どの人が自分の飛行機を担当しているのか分かっていれば、
話しかけて打ち合わせもできるが、それは不可能なこと。
私が新聞を読みたいから、という理由で、必要以上に整備さんに早く飛行機に来てもらってしまって、
大変申し訳なかった。

客席に座って、雑誌を読み、CAさんに出される飲み物を飲みながら、くつろいでいる整備さんもいるが、
今日の人は違った。
飛行機の搭乗口の外で、立ったまま新聞を読んでいる。
そこは、千歳なだけに、機内より気温が低い。
中で待機してくださるようにお願いしたが、自分はここで結構です、と丁重に断られてしまった。
飲み物はいかがですか?と聞くも、いらない、と言う。
コーヒーは好き嫌いがある。
外は寒いし、緑茶ならいいか・・・・・。
私はCAさんにお願いして温かい緑茶を入れてもらい、それを整備さんに持っていった。
「お疲れ様です。 どうぞ、飲んでください。」
あっ、ありがとうございます。」(整備さん)

飲み物を渡して、機内に戻り、新聞を読みながら、ハッと気付いた。
キャプテンが差し出す飲み物を、いらない、と断る整備さんって、いるだろうか?
外は寒いので、トイレが近くなるといけないから飲み物を控えているかもしれない。
良かれ、と思ってしたことだったが、余計なことだったかもしれない。

Push Backを終え、エンジンをかけ、整備さんとのインターフォンを切り離すとき、心を込めて言った。
「どうもありがとうございました。 行ってまります。」
次からは、もっと色々なことに気を付けよう。

明日も同じCAさん達。
「明日も大変ですねぇ。」
そうですね。」(CA)
「飛行時間6時間45分なんて、私、飛ぶの初めてです。 きっと、メチャメチャきついんでしょうね。」
えっ? 私達はそのぐらい、いつも飛んでますけど・・・・。」(CA)

うわっ! また、余計なことを言ってしまった。



2004.12.12

NH385 名古屋→大分  08:05−09:20
NH386 大分→名古屋 09:50−10:55
NH303 名古屋→沖縄 11:30−14:00
NH306 沖縄→名古屋 14:35−16:30

フライト・タイム 6時間45分
スーパー・ハードなパターンだ。

Show Upは1時間前の07:05。
逆算すると、05:30に起きることになる。
昨晩は「バク天」を見て、すぐ寝るつもりだったが、ちょっと遅れてしまった。
それでも21:15以降から記憶がないので、睡眠時間はまずまず、
と言いたいところだが、全然足りな〜い。

これだけ長距離飛ぶのに、便間が30分、35分、というのは異常にタイトだ。
普通に飛んでいたら、遅れることは目にみえている。
しかし、スピードを出せば、燃料消費量が増えてしまい、儲けが減ってしまう。
地球の温暖化を考えても、やっぱり燃やす燃料は少ない方がいい。
風を使って、燃料をケチりながら飛び続けた。

強烈なジェット気流の中、ほとんど遅れず那覇まで到着できたのには満足だった。
那覇行きの303便に関するブリーフィングを名古屋で受けたとき、
今日は那覇で航空ショーをやっていて、
それにともなう飛行ショーにより那覇到着、出発便に遅れが生じる、との Information があった。
那覇の天気が悪かったため、私達にとっては幸い、見物人にとっては不幸なことに、
飛行ショーはキャンセルとなり、到着時に待たせることがなかった。
しかし、いつもならPBB(ターミナルから直接飛行機に乗り降りできる)Spotのはずの303便が、
今日に限ってOpen Spot(バスによる乗り降り)だった。
Open Spotだと乗り降りに時間がかかり遅れることが多い。
Open Spotになったのは、きっと航空ショーがらみの理由だったのだろう。
案の定、隣の飛行機の搭乗が終わるまで(14:25)、うちの便(306便)には
バスでお客さんが来ない、と地上係員に言い渡され、これで出発遅れはほぼ確定した。
事実、8分遅れで出発したのだった。

この8分、上空でつめるのは至難の技だ。
もともと早い速度で飛んでおり、しかもジェット気流の追い風も100%利用しているので、
これ以上スピードの出しようもない。
当初、飛行機の計画離陸重量が重くて33,000ftまでしか上がれないはずだったが、
実際の重量は軽くなり、37,000ftに上がれるではないか。
今日、ジェット気流が一番強かったのって、35,000ftよりちょっと上だったかなぁ〜?
朝見た天気図を思い出し、とりあえず上がってみることにした。
やはり、35,000ftが一番ジェット気流が強く、33,000ftと37,000ftではほとんど変わらなかった。
それでも、FL370の方が速度が時速に換算して10km/hほど速い。
たった10km/hでも結構差が出る。
コンピューターの計算した名古屋到着予定時刻は・・・・・、やっぱり10分遅れだ。
客室乗務員(CA)さんにインターフォンで呼ばれた。
名古屋で札幌に乗り継ぐお客さんがいて、札幌行きの出発時刻は16:50。
定刻で306便の到着が16:30。
10分遅れると16:40。
乗り継ぎに10分しかない。
これは大変だ。
なんとかせなぁ〜。

沖縄から本州に近づくと除々にジェット気流が強まってきた。
しかも、完璧にま後ろから吹いている。
風速が変わると少し揺れるが、少々なら仕方ない。
減速しないで我慢。
名古屋への降下開始地点では、到着は定刻より7分遅れ程度まで縮んでいた。
名古屋空港、混んでるかなぁ〜。
混んでると、さらに遅れるなぁ〜。
でも、なんか管制官と交信してる飛行機、少ないなぁ〜。
もうちょっとスピード出しとこうかな・・・・・。
あれぇ〜、ほんとに前に誰もいないんじゃないか?
名古屋の管制官と交信してみると・・・・・
You are number one.」(管制官)
ヨッシャァーーーーーッ!!!!!!
飛ばしたかいがあったぞぉ〜!!!!!!

できるだけスピードが落ちないように高めにアプローチ。
なんと幸運なことに、ILS34なのに風は南風。
どこまでも、どこまでも追い風だ。
ILS34のファイナル、ギリギリ、もう本当に我慢できないまで減速しないで、引っ張って、引っ張って。
コンピューターをチラッと見ると・・・・、
う゛ぉ゛お゛ぉ゛お゛ーーーーーっ!?!?!
定刻2分遅れまで縮まってる?!?!
もうちょっと減速を遅らせよう。
さらに引っ張って、引っ張って、う〜ん、もう限界だぁぁぁあああーーーーっ!!!!!!
またチラッ、とコンピューターを見ると、
ぎょぇぇええ〜〜〜〜〜っ!?!?!
定刻じゃん?!?!

着陸して、滑走路を出て、Spotに入って、時計を見ると・・・・、定刻〜♪

全員、お客さんが降機して、コックピットを出た。

CAさんにお礼を言われた。
乗り継ぎのお客さん、ダイヤモンドとプラチナだったんですけど、
 『さすがキャプテン』って大喜びでしたよぉ〜♪
」(CA)
はっ?
プラチナとダイヤモンドって、何のことだ・・・・・?
ジュエリー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「プラチナ」はANAの利用頻度の多いお得意さんだろ。
で、「ダイヤモンド」ってなんだ?
初めて聞いたぞ??
そういう名称の会員さんがいるのかなぁ〜?
まぁ、どうでもいっか。
喜んでもらえて良かった、良かった。

飛行機を出ると、そこにはすでに次便のANAのクルーが待っていた。
ANAのキャプテンに言われた。
随分、頑張ってとばしてきたんじゃないですか?

上空を飛んでいるとき、到着予定時刻を飛行機から地上に送る。
それがディスプレーに表示され、早着、遅れを見ながら、
何時何分に自分の乗務する飛行機へ向かうかクルーは考える。
通常、ディスプレーに表示される時刻より、遅れて到着する場合が多い気がする。
今日は、恐らく表示された時刻より8分近く早かったのではないか?
降りてくる飛行機を待つ立場としては、かなり焦るケースだ。

FL370を飛んだことで、FL330で飛ぶことを想定した計画の消費燃料より500kg近く節約できたし、
不可能と思えた定刻到着も成し遂げたし、
お客さんも喜んでくれたし、次便のクルーにも迷惑をかけないで済んだし、
とっても良い一日だった。

ホテルに向かう途中、すでに外は真っ暗。
朝、ホテルを出たときも真っ暗だった。
日の出から日の入りまで働いたのかぁ〜、と思った瞬間、ドッと疲れが出た。
明日も早いんだよなぁ〜。
「さんまのスーパーからくり」見ながら日記書いて、早く寝ようっと。



2004.12.17

広い店での出来事。
小学校1年生ぐらいの男の子が、お母さんを探していた。
どうやら迷子のようだった。
すでに店員さんが対応していた。
しばらくして子供を探す女の子を連れたお母さんに出会った。
きっとこのお母さんだ。

私は買い物を済ませ、さあ帰ろう、と振り返ると、さっきのお母さんと男の子を発見。
良かった。 見つかったか。
すると、店員さんがお母さんに向かって話しているのが聞こえた。
お子さんから目を離さないでください。」(店員)
そりゃー、無理さ。
子供なんてちょっとした隙にどっかへ行ってしまう。
お母さん、その店員さんの言葉を聞き終わり、ちょっと頭を下げ、
その直後、無言でいきなり男の子を殴った。
今のは、ビシッ、じゃなくて、ボコッ だぞ、おい?!?!
いったいぞ、それ!!
もちろん男の子、号泣。

テニスのフォアハンドを連想するような強打だった。
テイクバックにも力が入り、腰を回転させながらラケット引く。
そこからボールに向かって上半身を回転させながら腕を振りぬく。
まさにそんな感じだった。

その子がどんな子だか私は知らない。
買い物に行く度に迷子になるのかもしれない。
口で言っても絶対に言うことをきかない子かもしれない。
痛みに鈍感でビンタぐらいでは効き目が全くないのかもしれない。
どんな子だから分からないから、お母さんのしかり方を非難するつもりはない。
私自身、体罰が悪いこととは思わない。
それにしても、Max Powerで殴るほどのことだったのか?
他の子供を傷つけるようなことをしたわけでもない。
例えば、喧嘩して金槌で相手の子供の頭を思いっきり殴った、とか、
カッターで切りつけた、とか、
そんなことを私の子供がしたら、多分、同じように殴ってしまうと思う。
迷子だろ? 普通じゃん?

さらに気になったことがある。
迷子になったことを怒るなら、見つかった直後のはず。
「あんた、どこ行ってたの! 心配したでしょ!」 → ビシッ! という順番が妥当だ。
私の視野に入ったとき、すでにお母さんと男の子は出会った後だった。
そして、お母さんは店員さんの言葉を聞いて殴った感じがした。
勝手な想像だが、
「なんで私が店員さんに怒られなきゃいけないのよ? 腹立つわぁ。お前のせいだ。」 → ガツンッ!
なんとなくそんなイメージだった気がしてならなかった。

光景が目に焼きつき、とっても心が痛かった。

こんな場合、どうする?
色んな場面を想定し、しかるべきか? ほっておくか?
やってはいけない理由を分かるまで口で説明するか?
他人の経験や対応の仕方も含め、いつも妻と話し合っているが、
こればっかりは正解が見つからないことが多い。
怒り方(しかり方)って難しい。

「怒る」、「叱る」、「誉める」 ことに関して、
お母さんや先生からメールを頂き、大変参考になるお話を聞かせて頂きました。
どうもありがとうございました♪



2004.12.20

今日は、「新任機長研修」 なる日だった。
参加者は私も含め同期4名と年上の方2名、合計6名。
名称からして、退屈な一日になると思っていたが、予想に反して内容は充実していた。
2日前に当日のスケジュールをもらっていた。
グループ・ディスカッションや発表形式の参加型研修ではなく、講話ばかりで、
睡魔との戦いが勝負になるはずだったのに、意外と話しが面白く、聞き入ってしまった。

当然のことながら、最も楽しみにしていたのが昼食会。
こういう場では、ご馳走してもらえるに違いない。
イヤ、うちの会社のことだから、自腹って可能性もあり得る。
会社の常務も交えての食事ではあったが、私はお腹が空いていた。
隣に常務が座っている。
みんなゆっくり食べている。
がっついているのは私だけ。
きっと、ご飯はおかわりできるはずだ。
個室だったのでウェイターは近くにいない。
私は席をたった。

「すみません。 ご飯のおかわりもらってきます。 おかわりできますよね?」
できると思うけど、別料金かもよ。」(年配の新任機長)
「そっかぁ〜。 それは困ったなぁ〜。」
大丈夫。 お金なかったらツケきくし。」(年配の新任機長)
「えっ?! 私が自分で払うんですか?」
そりゃそうさ。 分割もできるし、大丈夫だよ♪」(副部長)
なんだ、からかわれてるのか。

出席予定者のうち一人だけ来ておらず、空席に膳が置いてあった。
あれって、もし来なかったら食べていいかも・・・・・。

ご飯のおかわりが来てから気が付いた。
みんながゆっくり食べているのは、常務の食べるスピードに合わせているからみたいだ。
しかし、私以外にとっとと食べ終わった人が2名いた。
そこへ遅れていたもう一人に参加者がやってきた。

なんだぁ〜。 来ちゃったか。 せっかく狙ってたのに。」(年配の新任機長)
いや。 私も狙ってたんだけどなぁ。 残念。」(副部長)
図々しいのは私だけではなかったようだった。

メシ代はやっぱり会社もちだった。
ご飯のおかわりも別料金、取られなかった。
良かったぁ〜♪



2004.12.29

伊丹発大分行きの最終便、189便。
お客さんの搭乗が始まってすぐ、カンパニー無線で連絡が入った。
成田からの便の乗り継ぎのお客さんを待つため、出発時刻は20:05頃になる、とのこと。
定刻は19:40だから25分遅れだ。
189便への乗り継ぎは1名。
551便への乗り継ぎは2名。
551便の乗員が怒っていた。

19:45発の予定なんですけど、20:05まで待つんですか?
 お客さんには何て説明すればいいんですか?
」(551便のクルー)
成田からの便の到着遅れと言ってください。」(カンパニー無線)
そうですか。 困りましたねぇ〜。」(551便のクルー)

成田からの便が遅れてくるのは、もっとずっと前に分かっていたはず。
にもかかわらず、お客さんが搭乗しだしてからカンパニーで連絡してくるのは、納得できない。
怒るのも無理はない。
便の出発そのものを遅らせれば、搭乗開始を遅らせることができ、
お客さん達は狭い機内で待たないですむ。
携帯電話も使えるし、タバコも吸えるし、機内で待つよりターミナルで待つ方がずっといいに決まってる。
搭乗を終えたお客さんに対して、成田からの便からの乗り継ぎのお客さんを待っている、
とアナウンスを入れれば、後から乗ってくる成田からのお客さんは肩身が狭い。
お前のせいで遅れたんだ!と怒られなかったとしても、みんなの視線は冷たいはずだし、居心地は最悪だ。
便を遅らせ、搭乗時刻を遅らせれば、誰のせいか分かりにくくすることができる。
成田で珍しく雪が振り、除雪作業に時間がかかり、遅れてしまったらしい。
除雪作業に慣れない空港では、当然遅れが生じる。
仕方のないこと。
だからといって、数名のお客さんのために何百人も待たせて良いものなのか?
10分程度ならまだしも、20分以上となると、ちょっと状況は違ってくる。
大分行きのお客さんだって、一刻も早く大分に着きたい人だっているはず。
数名のために待つことも大切だが、その人には申し訳ないが大阪で一泊していただいて、
次の日の初便で大分に帰っていただくこともできたはず。
その辺の判断は大変難しい。
大阪のカンパニー無線を担当してる人が決定するわけではないので、
その人に私達乗員が怒りをぶつけてもしょうがないが、そこ以外に文句を言える場所もない。
先に搭乗したお客さんが上空でクレームをつけたとして、対応するのは私達乗務員。
何かあったら私達の責任なので、もう少し考えて、
せめて搭乗時刻を遅らせる、ぐらいのことはしてくれても良さそうなものだ。

成田からの便は13番ゲートに到着。
我々189便は11番ゲート。
551便は6番ゲート。
うちの方が13番ゲートにはるかに近いにもかかわらず、Push Back を先にしたのは551便だった。

成田からのお客さんが搭乗する前に、お詫びのアナウンスを入れようと思ったが、
私が思っていたより早く搭乗したため、アナウンスを入れ損ねてしまった。
出発はやはり20:05だった。

Push Backを終え、Runway 32Rに向かう途中、551便は Runway 32L からすでに離陸していた。
なんて運のいいやつらだ。
551便と私達189便のPush Backの時間差、およそ2分ほどの間に、他に3機も出発機が入り込み、
すでに遅れているのに、さらにRunway 32Rの手前で待たされた。
ここでもお詫びのアナウンスを入れよう、入れようと思いつつ、
もしかすると32Rと32Lで出発機の順番が入れ替わる可能性もあり、
英語でのアナウンスも入れる必要があったので時間的余裕はない、と判断し、あきらめた。
離陸後は夜のフライトでもあり、寝ているお客さんもいるだろうからアナウンスをためらった。

上空で客室乗務員(CA)にインターフォンで呼ばれた。
先ほどのおきゃくさん、席を移りたいとのことですが、よろしいですか?」(CA)
遅れて入ってきた成田からのお客さん、やっぱり回りの人に対して気まずかったようだった。
そりゃそうだわなぁ。

今日は22,000feetを飛んでいた。
九州上空はFL220以上が揺れていた。
大分への通常の降下開始点は九州よりはるか東。
降下開始前ならアナウンス入れれるかも・・・・・、と思っていると、
予定外の揺れに降下時期が早まってしまい、ここでもアナウンスを断念。
早めに降ろしたわりに、途中で水平飛行するよう管制官に指示され、
どんどんPathが高くなり、Speed Brakeを引かねばならない状況となった。
さらに少しでも早く到着するためVisual Approachを計画していたので、
距離と高度の関係を降下中、何度も暗算で計算しなくてはならず、
結局、飛行中のアナウンスは無理、と判断した。

大分には25分遅れで到着。
Spotに入り、エンジンを切り、チェックリストを終え、整備さんにシップの状況を連絡し、
PBBを見ると、まだ飛行機に接続されていない。
ドアを開けるまで、もう少し時間がある。
ここだぁぁぁああーーーーっ!!
日本語で短めにアナウンスを入れ、英語でアナウンスを入れ出すころには、
すでにドアが開き、お客さんが足早に降機を始めていた。
マッ、マズイッ!!
大急ぎで英語のアナウンスを切り上げた。
すると間髪入れず、CAが「前方のドアから降りてください。」という内容の定番のアナウンスを入れた。
ドアが開くと同時に彼女達が入れるアナウンスの邪魔をしてしまった!
ごめんなさいっ!!

帰省で家路を急ぐみなさまに、大変なご迷惑をおかけしました。
ご協力とご理解、本当にどうもありがとうございました。