2005.02.01
強い寒気が日本を覆い、西日本、四国、九州にまで雪が降っていた。
しかも北西の風が強烈だった。
伊丹から大分へ向かった。
滑走路の西側は山。
強い北西風が吹くと、メチャメチャ気流が悪い。
午前中から午後にかけて、除々に風速が強まっていく、と空港の気象予報には書いてあった。
イヤ〜な予感だ。
大分へのアプローチを開始すると、大分のカンパニーから無線連絡が入った。
どうやら先行機は無事に到着できたようだったが、
大分の東の海上で落雷を受けてしまったと言うではないか!
その場所らしきあたりに雪雲の壁があった。
そこを通らずにはアプローチはできない。
「きっとあのへんでしょうね。」(コパイ)
「そうだね。 エコーの薄いところを通ろうか。」
恐る恐る雪雲に入ってみたが、意外と揺れなかった。
しかし、油断は禁物。
雷に当たりそうな雰囲気の発達した雲の中より、
絶対ありえない、と思えるような薄い雲の中で被雷することがよくあるのだ。
なんとか無事、そのエリアを通過し、さらに高度を下げていくと・・・・、
ギョェエ〜〜〜〜〜〜ッ!?!?!
メッチャ、揺れるじゃん?!?!?
これ以上出してはいけない速度(最高速度)と、失速する速度(最低速度)の、
丁度真中のスピードで飛んでいるのに、
速度計の針が、最大速度と最低速度の間をフルに行ったり来たりしているぅぅううううーーーーーっ!!!!
これでアプローチするのかよっ!
前便のレポートを聞くかぎり、そんなに風は強くなかったはずだけどなぁ〜。
ILSで遠回りして、こんな感じで飛行機を揺らし続けたらお客さん、酔っちゃうだろう。
できるだけ短時間で着陸してあげなきゃ。
「よしっ。 空港見えたね。
空港の周りだけ雲がないから、ビジュアルもらってくれる?」
最短コースでアプローチ。
あいかわらず気流はガッタガタ。
これじゃあ降りれないかもなぁ〜。
私が機長に昇格してから今までに経験した中でも、ダントツに悪い。
コパイ時代もこの程度の揺れは滅多に経験しなかったような気がする。
パワーをアイドル近くまで絞っても、スピードを増しながら上昇するぅーーー!!!
ひょえぇえぇえぇえ〜〜〜〜〜〜っ!!!!!
いぃ〜や、まだまだ。
負けるもんか!
風と戦いながらベースからファイナルにアラインして、500ftを過ぎ、300ftを過ぎ、
おっ! これなら降りれるかも。
200ft、100ft、50ft、30ft、20ft。
ちょっとパワーを絞って、ピッチを上げてフレアー。
流されないように・・・・・・・。
っと、ゴーアラウンドォォオオオーーーーッ!!!
まさにタイヤがつく、と思った瞬間、滑走路が左に流れた!!
いきなり横風が強くなったようだ。
滑走路の真中につくはずだったのに、滑走路の右半分に瞬間的に飛行機が移動していた。
「Flaps 3」
「ポシティブ」(コパイ)
「Gear Up。
よっしゃ、海上、雲に隙間があるから1000ftの Right Down 入って、もう一回トライしよう。」
再び上昇姿勢に入り、直線上昇し、ゆっくり右旋回し、その間もスピードがメチャクチャだ。
どうなってんの?これ?
「Flaps 2. Speed set 160. Auto Thrust on.
Flaps 2 remain, AFTER TAKEOFF CHECKLIST.
Activate confirm approach phase.
OK、じゃあ CA さん呼んで気流悪くてすぐ降りるんで、
今から10分前の合図出すけど座ったままでいい、って言っといて。
後でアナウンス入れるって、伝えて。」
コパイさんがインターフォンで CA さん達を呼び、右旋回を終え、翼が水平になるころ、
私の座っている左席から飛行場の様子が見えてくる。
(右旋回中は海しか見えない。)
「あれぇ〜。 空港、雪かぶってきたなぁ。 これじゃビジュアルは無理だわ。
しょうがない。 ベクターILS、もらってくれる?」
「フラップ上げたいけど、上げると気流悪すぎて降ろせなくなるかもしれないから、
Flap 2 のまま飛ぶね。」
管制官にベクターしてもらっている途中、キャビンにアナウンスを入れた。
しばらくしてカンパニーが申し訳なさそうに、言いにくそうに呼んできた。
「えぇ〜っと・・・・。
さっきまで風はそれほど強くなかったんですが、
183便がアプローチを開始し初めた頃から、急に風が強くなり出しまして、
現在、290度から20kt、ガスト35kt入ってます。
Runway コンディション、Wetです。」(カンパニー)
へっ? それって、滑走路WetコンディションのA320の横風リミット、ビミョーに越えてるじゃん?!
コパイにブリーフィングせな。
「じゃあ、規程通り、着陸許可の発出までに風を確認して、リミット内なら降りるよ。
その時超えてたら最終的に500ftまでに風を聞いて、リミットを超えてたらゴーアラウンドね。」
これで横風がリミット内に収まらなかったらどうしようか?
リミット内に収まってたとして、さっきみたいな風が吹いてたら、着陸できないかもしれないなぁ〜。
燃料はいっぱい積んでるから、風が弱まるまで上空で待機することも可能だけど、
これからは弱くなるより、どちらかというと強まる傾向だよなぁ〜。
それに、ずっとこんな感じで揺れてたら、お客さん、酔って吐く人が続出するだろうなぁ。
まいったな。
ダイバートすることも考えた方がいいかもな・・・・。
いや、今はこの一回にかけよう。
ダメだったときのことは、また後で考えるとして、今は集中、集中。
そんなことを考えながらILSのファイナルに乗った。
さっきより天気はだいぶ悪いな。
全然、飛行場見えないじゃん。
どこで滑走路見えるかな。
気流が悪いときは、できるだけ早めに見えてくれないと、アライン難しいよな・・・・・。
(アライン=滑走路の中心線の延長線上に飛行機を乗せる
「Cleared to land runway 01. Wind 300 degrees 20kts gust 27kts.」(管制官)
「横風、Within Limit ね。 降りるよ。」
「1000」(コパイ)(1,000ft通過)
まだ見えないじゃん。
「Approach Light Insight」(コパイ)
OK、OK。
見えたぞ。
あれっ?
さっきよりは気流、マシな感じだ。
それでもガッタガタであることには変わりない。
100ft、50ft、30ft、20ft。
タイヤが、今、つく!と思った瞬間、フレアをかけてちょっとピッチアップした。
すると、ビュヨ〜〜ン、と飛行機が浮き上がった。
パワーは絞っている。
「滑走路長いから、もうちょっと(ゴーアラウンド)がまんするよ。」
エルロンで水平を保ちながら、一定でない横風に左右に振れる機首をラダーでコントロール。
「よしっ、つけるよ。」
滑走路に対して左を向いたまま左のメインギヤをつけ、
エルロンを左にとり、飛行機を左に傾けながら機首を滑走路の方向にラダーでアラインさせると同時に、
右のメインギヤをつけつつ、すぐフルリバースを入れながらノーズギヤをつけた。
エルロンを風上いっぱい、前方にフルに倒して保持。
よっしゃーーっ!!!
もらったぜ!!
客室乗務員(CA)が着陸後のアナウンスを入れていた。
「悪いんだけどさ、CA のアナウンス終わったら、
気流が悪くてゴーアラウンドして心配かけてすみません、みたいな内容で、
あと、到着遅れのお詫びのアナウンス入れてくれる。
タクシーとATC、カンパニー、こっちでやっとくから。」
いい感じでコパイはキャビンアナウンスを入れてくれた。
「ありがとう。」
この大分でのゴーアラウンドが、10年近く飛行機に乗っていて
自分でする初めての本気のゴーアラウンドだった。
460便で那覇から大分へ再び戻ったとき、やっぱり気流は悪かったが、
183便の時に比べると、ずっとずっとマシだったのは幸いだった。
後で CA さんに聞いた話しによると、
客室後方のお客さんはキャーキャー喜んでる人が多かったが、
前方のお客さんの表情はこわばっていた、とか。
どちらかというと、前方より後方の方が揺れるのに、だ。
喜んでくれたのなら良かったが、怖がらせてしまったお客さんには大変申し訳ない。
ごめんなさい、です。
後方でゴーアラウンドのアナウンスを担当した CA さん、
口にあてたハンドセット(固定電話の受話器のような形状のもの)が、
しゃべろうとした瞬間、揺れで腕ごと頭の上までいってしまったようだった。
それって、よっぽどひどかったのね。
今日は福岡がらみの便と、雪で欠航した便とで、全国的に大幅にダイヤが乱れてしまい、
沢山のお客さんに迷惑をかけてしまった。
2005.02.02
大分の伊丹行きの始発便。
機長になって初めて雪氷滑走路、つまり雪に覆われた滑走路での離陸をした。
札幌や新潟へも頻繁に行っているのに、どうして一発目が九州の大分なのか?
そういえば、昨年も大分で雪が積もり、
空港までなかなかたどりつけなかったときがあったような気がする。
今日も空港まで1時間半近くかかってしまった。
大分とは相性が悪いのかなぁ・・・・・・。
2005.02.14
名古屋空港の搭乗待合室内を歩いていて、珍しい光景を目にした。
おばあちゃん三人組のうち、一人はベンチに座り普通に弁当を食べていた。
残り二人はみんなと反対を向いて床に座って、シートに弁当を置いて食べていた。
つまり、床に座って、ベンチを机の代わりにしているのだ。
なんとっ!?!? そういう使い方があったか!!
でもタイル張りの床は冷たいに違いない。
地上係員(GH)の誰かが気がついて、どこからかクッションか座布団をゲットして、
差し出してあげればいいのに。
ターミナルの床に座るおっばちゃん、きっと飛行機での旅には慣れてないはずだ。
「おばあちゃん、これ使って♪」 って座布団差し出したら、
きっと喜ぶと思うんだよなぁ〜。
名古屋発千歳行き、705便。
出発機と到着機が多すぎて、なかなか出発できず待つこと20分。
自衛隊の輸送機、J−air の CRJ 2機、うちの
B737、タイのA330、小型セスナ、
他にも離陸機が待っていたような気がする。
その隙間に到着機も何機も降りてきた。
可哀想な自衛隊の輸送機は、Downwind で着陸の順番待ちでグルグル回されていたが、
痺れを切らしたか、ILS へのベクターをもらって飛び去って行った。
Push Back から25分してようやく滑走路に入り、後ろを振り返ると、誰もいないっ!!
なんじゃい! うちがビリかいっ!!
これだけ待たされると、いくら千歳空港が ILS
01R をやっており、
最短コースで着陸しても遅れを取り戻すことは不可能だ。
到着時刻を計算するコンピューターによれば、定刻から5分遅れを予想していた。
うぅ〜〜〜〜ん、まずまずか・・・・・。
千歳へ近づくにつれて、南からの到着機がほとんどいないことは分かっていた。
よっしゃ! ガンガン飛ばせるかなぁ。
千歳の管制官と無線交信を初めてすぐ気がついた。
あれぇ〜、どこから入ってきた飛行機かは分からないが、うちの前に随分いそうな感じ・・・・。
減速させられ、ジグザグに飛ばされ、前に何機も入れられ、もうお手上げだ。
やっと、3000ft までの降下と ILS 01R approach
の許可が来た!!
あれぇ〜、なんか無線静かなんだけど・・・・・。
TCAS が計器に映し出す機影を見る限り、うちの後ろに到着機はいなかったのだった。
クッソ! またビリかよ!
高度を下げ 3000ft まで降りると空港が見えた!
おっ! また千歳空港は晴天じゃん?!
滑走路には全く雪が積もっていない。
んでもって、空港の周りは全方位、すぐ近くまで雪のカーテンに覆われている!
今年の冬は、千歳で全然雪にあたらない。
またまたラッキ〜♪
遅れて到着したけど、気分はかなり良かった。
今日、一緒に乗務していたキャプテンは自衛隊、航空自衛隊出身のもと戦闘機乗り。
私は右席で副操縦士業務をしていた。
色々な話が聞けて面白かった。
戦闘機乗りはパラシュートをしょってコックピットに入る。
そのパラシュートが背もたれのクッションになるんだぁ〜。
へっ? お尻の下には海上に脱出したとき用にゴムボートがくっついてて、
それがお尻部分のクッションになるのぉ。 すげー、すげー。 知らんかった。
非常食も積んでるし、海水を脱塩して飲み水を作る道具もあるんですって?
海水が飲めるなんて、便利だなぁ〜。
それはどこかで売ってないのかなぁ〜。
それ以外にも、あるコパイがウ○コしててお尻から何かが出てきて、
引っ張ってちぎったらそれが虫で、病院に持っていったらサナダムシだった、
なんていう話も聞けたりして、キモ過ぎて鳥肌が立ってしまったが、とっても興味深かった。
当の本人は自慢気に話していたらしいので、ビックリだ。
千歳空港での中空きの時間は約1時間。
そして折り返し名古屋へ712便で戻った。
途中、秋田を過ぎた頃、変な声が聞こえてきた。
お゛っ!
カンパニー無線でキャビンアナウンスを全国放送してる!
それは羽田発熊本行き。
岡山の上空で入れていた。
どこで気がつくかなぁ〜、と聞いていると、なんとっ!、最後までしゃべりきったではないか!?!?
「お疲れ様ですぅ〜、って言ってみましょうか?」
「よしといた方がいいよ。」(元戦闘機乗りのキャプテン)
全国放送が終わり、誰か何か言うかなぁ〜、と聞いていたが、誰も何も言わなかったぁ。
つ、つまらな過ぎる・・・・・。
誰か、突っ込めぇ〜。
な〜んて、人の事、言ってる場合じゃないんだよなぁ〜。
今日、客室乗務員(CA)さんとインターフォンで話してて、
話し終わったと思ってマイクから音を出すボタンをインターフォンから管制に切り替えて、
その後まだ用事があって、しゃべっちゃったもんね。
「あっ、それから、暑かったり、寒かったりしたら、いつでも言ってくださいネ。
調整しますから♪」
あのときも誰からも返事なかったなぁ〜。
「じゃ、ちょっと温度下げてもらえます? 管制塔の。」 みたいに差し込んで欲しかったなぁ〜。
秋田を過ぎた頃、インターフォンで CA さんから連絡があった。
小さな女の子が苦しそうだったので、体温を計ったら40℃もあった、と言うではないかっ!!!
なんて可哀想なんだ。
小林製薬の 「熱さまシート」 をしてるらしかった。
それ以外にしてあげられることはない。
行きかなぁ、帰りかなぁ。
せめて帰りだったらいいんだけどなぁ〜。
お大事にね!
2005.02.15
303便で那覇空港に到着した。
お客さんが全員降機し終え、コックピットを出た。
すると客室乗務員(CA)さんからの報告があった。
名古屋 → 那覇 路線はほとんどB767が飛んでいるが、
たまたま303便だけはA320が飛んでいる。
あるお客さん(A)は、B767だと思って乗ったのにA320だったため、
シートピッチが狭い(座席間の縦間隔が狭く前の席の背もたれがより近い)、とお怒りで、
前方のお客さん(B)がくつろごうと背もたれを倒したところ、
Aさんはその背もたれを手で抑え、倒させないようにしたのだった。
前方のお客さんが背もたれを倒すのを阻止しようと、
後方のお客さんが手で抑える、という行為はよくあるようで、
CA さんが入れるキャビンアナウンスも、そこの所を念頭に入れたものに最近変更された。
303便はほぼ満席だったが、たまたまBさんの座る通路を挟んだ列には一つ空席があり、
通路の反対側のお客さんも含め全員が席を一つずつずれることで、
Bさんの席(Aさんの前方の席)を空席にしたのだった。
飛行機を降りる頃にはさすがにAさんも気まずかったのか、
気分が悪くてムシャクシャしていて大人気無かった、と謝罪して出て行った。
私にその話をしてくれた CA さんの回りに集まった他の3名の
CA さん、全員が悲しげな表情だった。
沖縄路線は観光客が多い。
観光客はビジネスマンと違い、移動のための飛行機に乗ることも楽しみにしている。
その機内でイヤな出来事があると、やっぱり旅全体の思い出が楽しくなくなってしまうかもしれない。
私の飛行機に乗る他のお客さん達に申し訳ない。
こういった話は、よく CA さんから聞く。
大変だなぁ、と思う。
それでも笑顔で対応しようとする彼女達、みんな偉い。
だから、少しでも彼女達が楽に仕事ができるようにしてあげようと思う。
とは言ってもコックピットでできることはアナウンスぐらいしかない。
出発前に乗組員、全員が集まってするクルーブリーフィングの時、
できるだけ言うようにしている。
もし、CA さん達だけで対応するのに困ってしまうお客さんがいたら、
状況を教えてください。
こんな感じのアナウンスを入れてくれ、等リクエストがあればそうするし、
私も考えられるベストのアナウンスを入れるから、と。
今回もそうクルーブリーフィングのときに言ったのだが、
飛んでいる時に上空で教えてもらえなかったのが、とても残念だった。
コックピットも忙しいんだろうし、こんなことで迷惑をかけてはいけない、
自分達だけで対応しなければ、と思ったのかもしれない。
それとも、言い出しにくい雰囲気を私が作っているのかもしれない。
CA さん、メモ書きを残していた。
「それ、どうするんですか?」
帰りも当該お客さんが乗ってくるとき、問題を起こすかもしれない、から、と
那覇の地上係員に申し告ぐのだそうだ。
クレームをつけられる前に対処するのだろう。
次もクレームをつけるかもしれないけど、
次はクレームをつける気にすらならないように、
寛大な気持ちになれるように、この便のうちに努力する方が大切かもしれない。
306便で那覇から名古屋に戻った。
この着陸が、私にとって名古屋空港での最後の着陸となった。
Runway 34 の滑走路末端付近には、今日も昨日も、いつになく大勢のギャラリーがいた。
17日からは、見れなくなるもんな。
あっ、でも、中部空港が何らかの理由で閉鎖して、ダイバートで名古屋に降りるかも・・・・。
不謹慎だけど、それもちょっと楽しみかも♪
2005.02.16
伊丹空港で仕事を終え、6番搭乗ゲートからターミナルに入った。
ちょうど7番ゲートに到着した飛行機からお客さんが降りてきているところだった。
ごった返しているターミナルに、不審人物発見。
30mほど先の売店の前で小さな男の子がキョロキョロしている、
なんか動きが変だぞ?
売店の前からトイレの方へ行き、再び売店に戻った。
迷子かなぁ〜。
最近はあまり見かけない、分厚いレンズのメガネをかけている。
きっと視力はあまり良くないはず。
もし迷子なら、遠くにいる親を発見しにくいはずだ。
今日も50才代のキャプテンと一緒に、ダブルキャプテンで飛んでいた。
そのキャプテンに気を使って、差し出がましいことはあまりしたくない。
地上係員(GH)さんでもいいし、お客さんでもいい。
誰かが声をかけてあげても良さそうなものだ。
どうしようかな?
フライト・バッグとステイ・バッグ、合計25kg+紙袋を両手に持った状態で、
人混みの中を走るのは難しい。
そんなことを考えているうちに、男の子、クルッ、と方向転換して、
いきなり手荷物を受け取る方角、他のお客さんが歩いていく方角に向かって、走り出した。
あ〜あ、行っちゃった・・・・・。
あの動きは、親を見つけた感じではないぞ。
5、6、7、8番ゲート専用の長いまっすぐな通路を走り、9、10番ゲートへと続く通路にそって、
左に曲がって男の子は視界から消えていった。
ちょうどそこにこちらへ向かって歩いて来るGHさんを発見。
GHさん、一瞬男の子を目で追ったが、そのままこちらに向かって歩いてきた。
私は一緒だったキャプテンの歩調に合わせて、普通のスピードで歩いていた。
9、10番ゲートへ続くコーナーを曲がり、男の子を探した。
あっ、いた!
かなり遠くを走っている。
時々立ち止まり、左右をキョロキョロ見渡し、また走っては止まり、
時々振り返って、また先へ進み、立ち止まってUターンしてこっちに向かって走りかけ、
やっぱり止めて、さらに先に進もうとした。
近くにGHさん発見。
でもなぁ〜、GHさんのクツって走りにくいんだよな。
両手がふさがっていても、私が走る方が絶対早い。
「あの子、きっと迷子ですね。」
「そうかなぁ〜。」(年配のキャプテン)
「僕、走って声かけてきます。」
「いいんじゃないの?」(年配のキャプテン)
「そ、そうですか?」
ま、いっか。
きっと、いつかは親、見つかるか。
男の子、ウロウろ、オロオロ、トコトコ、トボトボ歩いてる。
あの年齢で、これだけ親とはぐれたら、たぶん、相当心細いだろうなぁ〜。
「あっぱり、僕、ちょっと走りますね。」
男の子の所まで走って行き、声をかけた。
「どーしたぁ? 迷子になっちゃったか?」
コクッ、とうなずいたとき、分厚いメガネのレンズの下にある彼の目がチラッと見えた。
泣いてる・・・・。
そうさな、そりゃ、泣くわな。
ほっといてゴメンな。
「大丈夫、大丈夫。 お母さんすぐ見つかるから。」
と肩をたたいた瞬間、彼はまた走り出そうとした。
「ちょっと待って。 一緒に探そうぜ。」
とっさに彼の肩を掴んでしまった私。
一瞬、彼は立ち止まり、そして私を振り切って走り出した。
人混みの中、荷物を持って追いかけることができなかった。
あたりにGHさんはいない。
白い制服を着たANA eLIOカードの販促をしてる女の子達が3名、近くにいた。
お客さんはいない。
「すみません。 あそこを走ってる男の子、迷子なんです。
追っかけて助けてあげてくれませんか?」
彼女達、顔を見合わせて、どうしよう?、という顔をしたが、
そのうち一人が走り出した。
「ありがとう♪」
振り返ると年配のキャプテンが私を待っている。
きっとあの女性がなんとかしてくれる。
あとはまかせよう。
「すみません。 お待たせしました。」
年配のキャプテンと再び事務所に向かってガラガラ荷物を引っ張り歩きながら、
やっぱり心配で男の子が走って行った方向へ振り返った。
あれっ?
さっきのお姉さん、一人でこっちに向かって歩いてる。
男の子はどうしたんだろう?
お姉さんはeLIOカードの販促をしている定位置に戻った。
そして私と視線が合った。
えぇ〜っと、どうしよう?という表情の後、
お姉さん、両手を上げて笑顔で頭の上でマルを作った。
その姿は人混みに隠れて半分ぐらいしか見えなかったが、十分だった。
見つかったんだ。
ありがとう♪
そういう思うを混めて私は笑顔で頭を下げた。
見えたかな?
男の子、お母さん(or お父さん?)に会ったとき、ワンワン泣いたかなぁ〜。
お母さん、ちゃんとハグしてあげたかな・・・・。
良かった、良かった。
2005.02.24
YS−11からA320への訓練があった頃、ちょうどダイエットしていた。
90kgで走ってヒザを痛めた。
減量しようにも体重が重過ぎて、走るとヒザ関節を痛めるようではままならない。
スニーカーと言えば、学生時代に買ったテニスシューズとバスケシューズ、一足ずつしかなかった。
底は擦り切れていたが、ウエイト・トレーニング以外で使うことはなかったので十分だった。
歩くこと、走ることが大嫌いだった。
アメリカ留学時代はニューメキシコ州の片田舎で過ごした。
その頃の影響が大きく、私は 「靴」 といえばウエスタン・ブーツばかり履いていた。
牛革、蛇革でふくらはぎまである良いブーツが、2万円程でアメリカでは買えた。
日本で革靴を買うとき、革の部分が少ないことを考えると、
革靴に5千円以上出すのは間違っていると考えていた。
当然、革靴よりもスニーカーが高級なわけはなく、
スニーカーには4000円以上は出さない、と決めていた。
しかし、減量のために走らざるを得ず、ヒザを痛めている場合ではなかった。
「Air」 と名のつくスニーカーで、ソールに空気が入っているなら、きっと関節に優しいはずだ。
ナイキの 「Air」 を買うつもりで札幌の靴屋へ行った。
1万円以上もするスニーカーを買わざるを得ない状況に負いこまれていた。
靴屋に行ってドキドキしながら一番安い 「Air」 を手に取った。
そこへ店員がやってきた。
ナイキの 「Air」 より良い靴がある、と言う。
Reebok製の 「DMX」 だ。
履いてみて感激!!
脚の裏にバネがついたような感覚なのだ。
ナイキを止め、Reebok の DMX RUN を買うことを即決。
最新型、ということもあり、定価通りの値段で購入したのだが、
¥13,800もしたのだった。
それでも、靴以外に例えばダイエット食品やサプリメント、特別な器具を買ったわけでもない。
20kg痩せるのに¥13,800なら安いものだ。
ところが、A320への移行訓練のために東京にいた頃、
アメ横を歩いていて同じ型の Reebok が半額以下で売られているのにショックった。
クッソーっ!!!
なんで、こんなに安いんだ?
新発売からそれほど時間、経ってないのに・・・・・。
店員に聞いてみると、人気がない、のだそうだった。
やはり、ナイキの 「Air」 にはかなわないようだ。
私にとっては Reebok のこの靴は履き心地が抜群で、人気がないことは気にならない。
購入コストを下げるために、もう一足を¥5,800で購入した。
ダイエットは成功したものの、体重を維持するためにも走るのは止めないつもりだったので、
ジョギングに必要な靴が安いなら買いだめしておけば良い。
さらに、数週間後、今度は渋谷を歩いていて発見!?!?
なんとぉっ!!!
¥3,800の値札がついているではぬわぁいかぁぁぁああああーーーーーっ!!!!
もう、ショックを通り越して、落ち込んでしまった。
しかし、買いだめ、買いだめ。
もう一足、購入した。
¥13,800
¥5,800
¥3,800
あれから7年。
3足の Reebok を履きながら、随分と走った。
最初に買った一足はボロボロだ。
空気の入っている部分に穴があき、クッション性は全くないので、
シンちゃんと散歩へ行くときに履いている。
靴底はボロボロでも、最初に投入した¥13,800を思うと、なかなか捨てることができない。
あるくとカラカラ音がするので、すれ違う人に振り向かれることがある。
でも、気にしない。
一足はステイバッグに入りっぱなし。
仕事で泊まりのときに走るのに使っているが、そろそろ靴底がヤバくなってきた。
雨が降っているときに走り、その後晴れた日に歩くと、
2枚のソールの間に水が入り、キュッ、キュッ、と音がする。
赤ちゃんが履くクツで、歩くと音がするものがある。
あんな感じなのだ。
この間、女子高校生に振り向かれた。
やっぱ、変だよなぁ〜。
でも、気にしない、気にしない。
ずっと大切に保管していた3足目を、去年、投入した。
最後の Reebok がダメになる前に、次に履くジョギング用のスニーカーを探さねば。
Reebok製 の 「DMX」 はあるが、デザインが嫌いだ。
履き心地はいいのに、もったいない。
結婚してから後も、お出かけはずっとウエスタン・ブーツだった。
それが、シンちゃんが生まれ、外で一緒に遊ぶようになると、
立ったり、しゃがんだり、走ったりするのにブーツだと使い勝手が悪い。
かといって、おろしたての大切なジョギング・シューズを履くのはもったいない。
そこで、最初に買った Reebok のボロボロの靴を使っている。
ところが、家族でちょっとお出かけするのには、みすぼらし過ぎる雰囲気だ。
幸い、結婚後に¥3,800で買った唯一の靴、「ジャングルモック」 もどきが役にたっていた。
私は靴は大切に使う方だと思う。
表の生地、革が擦れたり傷が入らないように細心の注意を払っている。
靴底に関してはかなりのケチだ。
歩く時は、かかとを置くようにすれば、意外と靴底は減らない。
ちょっとでもかかとを引きずると、靴は長いこともたないのだ。
そんな私でも、シンちゃんと遊んでいるときは靴底に気を使っている余裕がない。
「ジャングルモック」 もどきの底は減り、表の生地は擦れ、使い古した感じになってきてしまった。
あぁ〜ん、どーしよーっ!!!
「ジャングルモック」 を見に行ったが、あいつはほとんど値引きしていない。
定価¥10,500のところが¥9,500程度にしかならない。
先日、心斎橋で¥8,570で見かけた。
しかし、すぐに靴底が減る履き方をするものに、そんなにお金は使えない!!!
JUNGLE MOC by MERRELL
靴屋を見かけたら必ず入った。
REGAL や TIBERLAND の革靴で、¥10,000ぐらいのが¥5,000程度で売っているのを目撃することはある。
関空のプレミアム・アウトレットで¥20,000以上のものが¥9,800で見かけることもある。
でもなぁ〜、まだまだ高いんだなぁ〜。
それにシンちゃんと遊ぶときに使う履き方するのにはオシャレ過ぎる。
やっぱり、私のイメージにぴったりなのが 「ジャングルモック」 だ。
前回、「ジャングルモック」 もどきを買ったときも、本当は本物が欲しかったが、止めた経緯があった。
いつかは本物を買おう。
そう決心していた、のだが、つい先日、やっぱり 「ジャングルモック」 もどきを¥2,900で買ってしまった・・・・。
でも、前回買ったものはスェード生地で、今回のは革製で、ちょっぴりグレード・アップした気がする。
あぁ、いつになったら本物を買ってもいい人になれるんだろう。
本当はスニーカーで¥5,000ぐらいのものを探していた。
できれば、ジョギングにも使えて、
可能なら¥13,800した Reebok 並に足の裏にバネがついた感じの、メッチャ高級なものがいい。
靴屋を見て回ったが、¥5,000以下で買えるジョギング・シューズはどことなく安っぽいものが多い。
デザインも最悪だ。
高級なものも含めて、沢山見たが、私が欲しい、と思うデザインのものは、なかなかない。
くるぶしまで覆うバスケ・シューズには格好いいものがあるが、履くのがめんどくさい。
テニス・シューズも重そうだし。
安くて、デザインが美しいスニーカーがないのなら、
値段が安くても、本当にちゃちで安物、とは見えない 「ジャングルモック」 もどきを買うことにしたのだった。
まぁ、きっと一生、私はこんなことをしているのだろう。
それにしても、今、履いている最後の Reebok の底に穴が開いたら困るではないか。
なんとか次の靴を探さないと・・・・・。
そして・・・・・・・、見つけとわぁぁぁぁああああーーーーーーっ!?!?!?!
マジっすかぁ〜?!?!?!
ナイキの 「Air」 で、定価¥16,800のものが¥6,398??????
店員さん曰く、新しいモデルのものが出るから、とか。
ウレぴぃぃいい〜〜〜〜〜♪
ほんとは、これが欲しかったのよねぇ〜♪
¥13,800になってるのは見かけたけど、買えなかったんだよねぇ〜♪
あぁ〜、待ってて良かったぁ〜♪
そうなんだよね、我慢して待ってると、必ずいいことってあるんだよねぇ〜♪
2足、買っちゃおうかなぁ〜?
って、アレェ〜?!?!
財布には¥11,000しか入ってないなぁ〜。
そうなんだよな。
財布にはできるだけお金は入れないようにしてるんだよね。
いっぱい入れると、使いたくなるかもしれないし。
キャッシュ・カードも入ってないんだよね。
銀行があったらアウトだし。
クレジット・カードも入ってないんだよね。
あれが一番、最悪だわな。
でも、困ったなぁ〜・・・・・・。
¥6,398
一足買い、一旦家に帰り、シンちゃんが寝ている間に現金を持って、もう一度靴屋に行った。
まさか、どこかへお出かけしたときに、これと同じヤツを¥3,800とかで見つけたらイヤだなぁ〜。
しばらく靴屋に入ったり、靴屋の表に並んでるお買い得商品とかを見るのはやめよう。
そんなことを考えながら、ちょっとドキドキしながら、憧れのナイキの 「Air」 を2足買った。
買いだめ、買いだめ。
ソールには Reebok の 「DMX」 ように空気ではなく、ガスが充填してあるらしい。
「Air」 の履き心地は Reebok には及ばない。
フワフワ感は雲泥の差だけど、でも長年の夢だったナイキだ。
所有できるだけでも嬉しいではないかっ!!
妻は飽きれていた。
2足も同じものを買ったことと、あまりのケチさに。
でも、結婚してからスニーカーを1足も買っていなかったので、怒られはしなかった。
「いいだろう〜。 ナイキだぞ、ナイキ。 ナイキ、履いたことある?」
「ナイキは持ってナイキ。」(妻)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
夫婦って結婚してしばらくすると似てくるもんだけど、
妻にオヤジ・ギャグが移ってしまったか・・・・・・。
今回、買ったナイキ。
一足はきっと、数年、押し入れの中で眠るのだろう。