2006.05.03
宮崎発伊丹行き、510便。
前回、この便を飛んだとき、
足摺岬の辺りを飛ぶ伊丹行きの便が、うち以外に3機もおり、
えらい遠回りさせられ一番ビリになってしまった。
そのときは、たまたま便が重なったかのかと思ったが、どうやら違うようだ。
今日の予定高度は 23,000feet。
上昇中、管制官に 21,000feet で伊丹まで向うよう指示された。
ってことは、近くに 23,000feet で飛んでる飛行機がいるはずだ。
どいつだ・・・・。
計器上に TCAS が映し出す機影を見ると、私達の後ろ、
距離にして15kmほどのところに 23,000feet で飛ぶ飛行機を発見。
もしや、こいつは伊丹行きか?
さらに、その後ろ15kmほど、うちの後ろ30kmほどのところに、
29,000feet で飛行する機影もあるではないかっ!?
こいつも、もしや、伊丹行きかぁ?
私達は管制官の指示で、最大巡航速度で飛ぶことになった。
330ktだ。
原油高で、燃費の悪い低高度で、燃費の悪い高速飛行をすることは気が引けるが、
管制官の指示(命令)なので、仕方ないぃ〜♪、
と、とっても嬉しくガンガンに飛ばしまくった。
うちの一つ後ろは300kt、二つ後ろは290ktで飛ぶよう指示されているところから、
恐らくみーんな伊丹行きか?と思ったら、やっぱりそうだったぁ〜♪
数珠のように、金魚の糞のように、みなのものを従えて、
伊丹への到着は一番のりだいっ!、
伊丹空港へは、通常通り ILS 32L からの Circling 32R のはずだった。
A320のような小型ジェット機は、騒音問題から通常短い方の滑走路を使う。
短い方の 32R は着陸後、スポットに入るまでに時間がかかる。
だから、本当は長い方の 32L に着陸したいが、仕方ない。
ところが、今日は、またまた管制官の指示で
ILS 32L に着陸した。
スポットに入るまでも時間が短くてすむさぁ〜♪
定刻より8分も早く到着できたのだった。
2005.05.05 ザリガニのその後
いくつものケースや水槽に小分けにして引き続き飼っているが、
同じ環境でも大きくなるものと、大きくならないものがいるようだ。
読者に頂いたメールによると、ザリガニが育つにはスペースが必要らしい。
水槽に何匹も入れて飼うより、一匹にした方が大きくなる、ということだ。
でも、ザリガニの赤ちゃんは何匹いるか分からないぐらい沢山いる。
そんなにケースを増やすわけにもいかない。
とりあえず、30匹ほど連れて、シンちゃんと川へ行き、放流してきた。
水の流れに流されながらも、底のコケや藻につかまり、元気に歩いて行った。
水温がだいぶ上がり、きっとヤツらは生き延びることだろう。
幸い、ザリガニの赤ちゃんを襲いそうな魚は、夏よりはるかに少なそうだった。
これからも、ちょくちょく川へ行き、少しずつ放流しよう。
2006.05.07
伊丹 → 熊本 → 伊丹 → 福岡 → 伊丹
その後、便乗で佐賀へ移動(コパイは便乗で長崎へ移動)
前線を伴った低気圧が西日本を東に進んでいた。
朝6時には、前線の雲はすでに目的地の熊本にはなく、
鹿児島−松山−広島 を結ぶラインより東にまで移動していた。
これから関西エリアに積乱雲を伴った雲域がかかり、雨が強くなることは分かっていた。
最初に熊本と福岡の飛行場予報をチェック。
んっ?
熊本は朝のうち、少しだけ低い雲と低視程を予想していたが、
CAT−1でも十分に余裕のありそうな気象予想だった。
私の資格はCAT−2。
特に問題はないだろう。
熊本 CAT−1 最低降下高度 約60m、RVR550m
CAT−2 最低降下高度 約53m、RVR500m
CAT−3 最低降下高度 0m、RVR175m (RVR=機械が測定する視程)
福岡はどちらの滑走路も ILS が使えるので、特に問題なし。
伊丹は雨、関空は雨と午後から強風を予想していたが、着陸にはなんら問題ないようだった。
とはいえ、福岡を除くどの便の目的地(熊本1回、伊丹2回)も快晴ではなく、
なんらかの悪天が予期されたので、全ての便に燃料はたっぷり積んであった。
521便。
伊丹を離陸し、熊本へ向った。
ASONO を 10,000feet で通過するため高度を下げている途中、
13,000feet で新しい熊本の天気を入手した。
RVR300m???
ダメじゃん!!
アプローチできないじゃん!!
そんなこと聞いてねーよ!
カンパニー無線で状況を確認すると、
ここ20分ほどRVR300m程度を行ったり来たりしているようだった。
客室乗務員(CA)をインターフォンで呼び、状況を説明し、アナウンスを入れた。
幸いゴールデンウィークの終わりで、ビジネスマンはほとんどいない。
そんなに急いでいる人はいないはず。
しばらくしてカンパニー無線で連絡が入った。
RVRが1000m以上になったが、雲がまだ低いのでCAT−2では恐らく着陸できない。
もう少し待ってくれ、とのこと。
それから数分後、若干雲が取れたからアプローチをして欲しい、とカンパニー無線で要請があった。
着陸できるか、できないか、ギリギリの気象条件で、降りれない確率の方が高そうだったが、
地上にいる人を信じてアプローチしてみた。
「500」(feet)(コンピューターのAuto Callout)
「Stabilized」
「Hundred Above」(コンピューターのAuto Callout)
「Check」
「Minimum」(コンピューターのAuto Callout)
「Go Around」
すかさずパワーを入れて上昇操作を開始した。
飛行機は慣性があり、パワーを入れても降下は直ちには止まらない。
ほんの少し Minimum の高度より下に下がった所で、
アプローチ・ライトが視野に入った。
うーーーん、もうちょっとで着陸できたのにぃーーー!!
残念!!
とりあえず上昇し、落ち着いた所で再度、カンパニーで地上の状況を確認した。
微妙に良くなりつつあるので、もう一度トライして欲しい、とのことだ。
どうしようか?
燃料はまだたっぷりある。
でも、アプローチして、着陸できず上昇すると、
上空で待機している場合よりも余計に燃料を使ってしまい、待機できる時間が短くなってしまう。
できるだけ燃料は節約したい。
もっと天気が回復して、確実に着陸できるようになってからアプローチしたい。
反面、熊本は一度天気が悪くなると、そう簡単には回復してくれない。
長いこと待って結局着陸できず、1時間半後、2時間後にダイバートするぐらいなら、
早めにあきらめてダイバートする方が、お客さんにはいいはずだ。
どうしようか・・・・・。
さっき、もう少しで着陸できそうだったので、もう一回だけトライして、
もしダメだったら、次は完全に回復するまで待つ、とするか・・・・。
続いて管制官に、アプローチするのか、しないで待機するのか、教えてくれ、と言われた。
どうやら離陸機がいるらしい。
今すぐアプローチすれば問題ないが、
それができないなら8分待ってもらう、と言うではないか!
うーーーーん。
ミスって(Missed Approachして=着陸できずに上昇して)しまったら、
お客さんは不安なはずだから、アナウンスを入れておきたい。
でも、まだしていない。
アナウンスしたいなぁ・・・。
でも、アナウンス入れてたら、8分は待たされるだろうな。
さっき、アプローチライト見えそうだったし、今すぐアプローチしたいよな。
今日の CA さん達はベテラン中のベテラン。
CA さんにインターフォンで手短に状況を説明し、アナウンスは
CA さんに任すことにした。
そして、すぐさまアプローチを管制官にリクエストした。
アプローチライト、見えろよ。
見えてくれよ。
祈るような気持ちで再び ILS の電波に乗り、高度を下げていった。
「500」(feet)(コンピューターのAuto Callout)
「Stabilized」
「Hundred Above」(コンピューターのAuto Callout)
「Check」
「Minimum」(コンピューターのAuto Callout)
お゛っ!!
アプローチライトじゃん!
「Landing!」
Autoland でそのまま熊本空港に着陸した。
定刻30分遅れだった。
私達より後に熊本に来た他社便はパイロットの資格がCAT−1だったようで、
アプローチすらできずにダイバートしたようだった。
もし、CAT−3の資格を持っていたら、今日のような天気でも全然問題なく着陸できたのに。
普段、滅多に使わないCAT−2、CAT−3の資格。
今日ほどCAT−3の資格が欲しかったことは過去になかったっけ。
今日のコパイはCAT−3の資格を持っていた。
私がCAT−2だから、CAT−2運航までしかできなかったのだ。
(CAT−3の資格を持ちつつ、その資格を使う気象状況に何年も遭遇しないパイロットの方が多い。)
熊本空港でお客さんの降機が終了する頃、私が着陸したときよりかなり天候は悪化していた。
最初のアプローチでミスッてから、待たずに2度目のアプローチを開始して良かった、良かった。
次便の準備のための外部点検をする頃、さらに視程が悪くなり、辺りは白っぽくなっていた。
飛行機に戻ってクルー・ブリーフィングをし、コックピットに入り、着席した。
シートベルトをして、ヘッドセットをつけて・・・・、
外を見ると・・・・・・・、
なんじゃこりゃぁぁぁあああーーーーーーーっ!!!!
えらいこったぁぁぁぁああああーーーーっ!!!!
外、真っ白じゃんかい?!?!
隣のPBBが見えなくなりそうじゃん??
いつ、こんなに悪くなったと??
こんだけ視程が悪いと・・・・・、離陸の最低気象条件をも下回っているんじゃないのか?
すぐにRVRをチェック。
え゛ぇ゛え゛ぇ゛ーーーーっ!!!!!
Touchdown Point 200m?????
って、それ未満になったら、離陸できないじゃん?!?!
少しドキドキしながらプッシュバックを開始し、エンジンをかけ、Runway 25 へ向かった。
離陸直前はRVR250m。
なんとか熊本を離陸した。
伊丹へ向かう途中、四国の北の端を西から東へ飛行する。
その経路上を含み、南へ積乱雲の林ができていた。
関空、伊丹へ向かう飛行機は、みーんな正攻法で積乱雲を北へ迂回しているようだった。
その辺には神戸、関空があるせいか、無線を聞いていると、
管制官が飛行機をさばくのに苦労しているように思えた。
このまま瀬戸内の上を東に進んでも、どこかで南へ行かなければ伊丹へはアプローチできない。
そのとき、必ず積乱雲を突っ切ることになる。
どこかに隙間はないものか・・・・・・。
松山にある雲の塊と、香川にある雲の塊の間に、ちょっとだけ隙間があった。
この隙間を高知方面に南下し、高知にある雲の塊の手前で東へ向かい、
さらに高度を下げれば、積乱雲にかからずに行けるかもよ・・・・。
行ってみるか?
「Request heading 150 to avoid cloud.」
「・・・・・・. Your request aproved.」(管制官)
一瞬、沈黙があって、それから許可が出た。
そりゃそうだろう。
みんなが行きたくない四国の中心に向けて、南へ旋回するリクエストをしたのだから、
常識的に考えれば、オマエは何をしたいのじゃ?と思われるはずだ。
400kt(時速740km)で飛行中、右へ70度、オートパイロットで旋回した。
オートパイロットはバンク(機体を傾ける角度)を20度までしか入れてくれなかった。
バンクを入れるほど(飛行機を傾けるほど)旋回半径は小さくなる。
20度バンクでは旋回半径が大きすぎ、香川サイドの雲の塊に接近してしまう。
近づけば揺れそうだ。
旋回半径を小さくするため、オートパイロットを切り、手動操縦で
旅客機に許される最大バンク30度まで飛行機を傾けた。
うーん、いい感じに雲の隙間に入りそうだ。
機首が南に向く頃、ジワァーッと30度バンクを水平に戻し、
無線交信の隙間ができたとき、今度は左へ(東へ)向けての70度旋回をリクエスト。
手動操縦のまま左へバンクを30度まで入れた。
前方には高知の雲の塊の広がりが迫ってくる。
ほんの少し高度を下げれば、その雲の下を飛べそうだ。
再び管制官に 21,000feet から 19,000feet までの降下をリクエスト。
バンクを戻し、水平飛行にうつり、オートパイロットを入れ、前方を見ると、
私が向かおうとしている航路上の ARITA へ向けて、雲に穴が開いているではないかっ!
もらったゼイッ!
あそこ、あそこ、あの穴を突っ切ろう。
「Request direct ARITA.」
その後、ARITA までベルトサインを消し続けること30分。
きっと、客室では快適なサービスを提供できたことだろう♪
熊本から伊丹へ向かうとき、気流が完璧にスムースな場合、
着陸10分前の合図を出すポイントが ARITA
から少し伊丹寄りの場所だ。
今日の天気状況の中、ARITA までベルトサインをつけずに飛行できたのだから、
自分としては大満足だった。
残念ながら、熊本出発時の遅れは取り戻すことができず、伊丹空港への到着は定刻30分遅れだった。
423便。
福岡へ向かった。
上空で福岡の天気を取った。
出発時と同様、アプローチタイプは ILS 34。
う〜〜〜〜〜ん・・・・・・・。
ILS 34 だと到着時刻が大幅に遅れてしまう。
まいったなぁ。
追い風7ktぐらいなら、ILS 16 でもいいのにな。
ILS 16 に変わんないかなぁ。
ILS 34 で着陸した場合の到着予定時刻は12:55。
定刻より45分も遅れてしまうではないかっ!!
しばらくして、福岡の最新の天気を入手。
んっ?
お゛お゛お゛ーーーーーーーッ!!!!
ILS 16 に変わってるじゃんかい!!
いいぞ、いいぞ、いいぞぉぉおおーーーーっ!!
しかも、福岡への到着は一番だ。
後ろに飛行機がつかえているのか、管制官にスピードをもっと出すよう指示された。
イィーエェーーーッス!!!!
MAXスピードでガンガンに飛ばしまくって、ILS 16 で追い風で着陸した。
よっしゃ!!
で、何分遅れさ?
へっ? まだ定刻30分遅れ?
ぜーんぜん、縮まってないじゃ〜ん♪
ガーン、ガーン、ガーン、ピョーーーン♪
ダーメーじゃーーん!!
どーすんだよっ!
どーしてだよっ!
おっかすぃ〜なぁ〜?
折り返し伊丹行きは、再び四国の上を通らなければならない。
雲の塊達は、どこまで東に進んだかなぁ?
ディスパッチに行ってチェック。
うーーん、これから関空と伊丹に雲達がかぶってくる感じだぞ。
それに、香川から東はさっきより雲に隙間がなさそうな雰囲気だ。
次は満席だから、CA さん、きっとベルトサイン、25分は消して欲しいだろうな。
でもなぁ・・・・・、15分ぐらいになっちゃうかも。
いや、頑張って、粘って20分、消せるかな?
微妙だな。
おっと、こんなとこで、こんなに時間を使ってしまってはいけない。
とっとと飛行機に戻って、出発の準備をしないと。
急げ、急げ。
お客さんの搭乗が始まってしばらくすると、
私達の飛行機に向かってランプを歩いてくる、見慣れた歩き方のおっちゃんが視野に入った。
(ランプ=飛行機が止まってるコンクリートのエリア一帯)
あれっ?
○○キャプテンじゃん?
なにしてんの? こんなとこで。
あっ!
あれって、僕チンの帽子?
コックピット内の、いつも帽子を置く場所を振り返った。
ない。
ないぞ。
いかん、いかん。
急いでて、ディスパッチに置いてきてしまったんだ。
ランプからPBB(パッセンジャー・ボーディリング・ブリッジ)を登る階段を
○○キャプテンがニヤニヤ笑いながら上がってきた。
お客さんが全員搭乗を終えてから、○○キャプテンからPBB操作担当者経由、
CA さんに私の帽子は手渡されたのだった。
あいにく福岡空港の使用滑走路は34に戻っていた。
Runway 34 End まで地上滑走するのは、 16 End
へ向かうより時間がかかる。
しかも、離陸後、16ならまっすぐ南へ向かって上昇するが、
34からだとしばらく北へ上昇し、その後右旋回して南へ向かうので、さらに時間がかかってしまう。
まぁ、着陸だけでも ILS 16 に変わってくれたので、運が良かったと思うしかない。
四国の雲の塊を今回は避け切れず、ベルトサインを消していた時間は18分。
それでも、CA さんが頑張ってくれたおかげで、サービスは一通り終わったようだった。
結局、426便は定刻から37分遅れて伊丹に到着した。
熊本で一回ミスッたために、全便30分程度遅れてしまい、
ゴールデンウィーク明けのお客さん全員に大変な迷惑をかけてしまったが、
もしタイミングをはずして熊本空港に着陸できず、ダイバートしてしまったことを考えると、
(大いにありえるケース)
不幸中の幸いと思って、みんなに我慢してもらうしかないのかなぁ?
後々、同期と話をする機会があった。
ヤツはこの日、天気が悪すぎて○○空港に着陸できず、ダイバートしたらしかった。
きっと、お客さんは困ってしまったことだろう。
たまたま天気が悪かったので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、
でも、やっぱり迷惑をかけてしまったのだから、申し訳ない。
私が変わりに謝ります。
ゴメンナサイ。
2006.05.08
羽田へ向けて降下して行った。
Cloud Top(雲の頂上の高さ)は 4,000feet 程度。
層雲系ではなく、どちらかというと積雲系のモコモコした形状の
Top だ。
既に着陸10分前の合図は出していたので、
お客さんも客室乗務員(CA)さんも、座ってシートベルトをしているはず。
雲に入るとき、少々揺れても大丈夫。
あれっ?
なんだ、あれは?
モコモコした Top の中に、ひときわモコモコ感が強い場所が一箇所あった。
その形状が他の場所と違う。
最初はある程度遠くだったので、視力2.0の私でも形が他と違う、としか分からなかった。
時速500km/h程で飛んでいると、
遠くにあった小さく見えたものが、数秒、数十秒で急激に大きくなる。
近づくにつれ、その形状はモコモコではなく、穴が開いている形に近いことが分かってきた。
刻々と雲がズームアップするように大きくなっていく。
円を描いた白い雲が、円の頂上付近でほつれている?
なんであんな変な形をしてるんだ?
・・・・・・??
さらに拡大した雲の穴を見て、フ、と思った。
先行機があそこを通ったのか?
あのほつれ方・・・・、あれって、Wake の形じゃないのか?(Wake=飛行機が通った後にできる後方乱気流)
ハッ、として計器に映し出される先行機の機影の場所と、雲の場所を比較した。
そうだ、そうに違いない。
先行機がジャンボ、トリプルのような大型機ではないことは分かっていたし、
管制間隔が10マイル以上あったので、
それほど強い後方乱気流にはならないだろう、と直感的に分かっていた。
その雲の穴を避けるには既に遅すぎた。
翼の下の圧力の高い空気が、翼端から外に流れ、翼上の圧力の低い方へ巻き込む渦が後方乱気流、Wake だ。
ちょうどその雲のそばを通るとき、ボワァン、と飛行機があおられ、
一瞬、弧を描くように機体が右に傾き、左斜め上に持ち上げられた。
きっと、先行機の左の翼が作った Wake に入ったのだろう。
すぐにインターフォンで CA さんを呼んだ。
みんな座っており、無事だった。
良かった。
普段は見えない Wake が、形になって見えたのは初めての経験だった。
2006.05.13
那覇空港へのアプローチは VORTAC 18 だった。
操縦していたのコパイ。
私は管制との交信を担当していた。
那覇空港へ向けて降下を開始してしばらくすると、
左斜め前方に飛行機がいることが分かった。
計器に移る機影は、私達から約10kmほど先で、高度は 5,000feet 下。
その辺の空を探すと・・・・・、いたっ!
あれはJALだ。
10km離れてるにしては、随分、大きく見える。
きっと大型機だ。
案の定、那覇の管制官から、減速するよう指示がきた。
那覇空港へアプローチする飛行機同士の管制間隔を開けるための措置だが、
なかなか距離が広がらない。
すると、私達に右へ旋回するよう指示がきた。
指示された方角には雲がある。
入れば揺れそうな形の雲だ。
コパイをチラッと見た。
表情から察するに、そちらには行きたくないようだ。
それまで Direct RABIT の指示をもらっていたので、RABIT
へ向けて飛行していた。
何事もなければ RABIT を通過後、左旋回して YVETT へ行き、
そこから VORTAC 18 アプローチが始まる。
今日の場合、RABIT より少し南西に雲があったので、
できればオリジナル・ルートで飛びたいのだ。
「どうする?」
「あんまり右には行きたくないですよね・・・・。」(コパイ)
先行機との間隔は全然広がっていかない。
「左旋回させてもらう?
それとも、もっと減速するから Direct RABIT
に行かせてくれ、ってリクエストする?」
そうこうしているうちに、管制官が那覇から沖縄に代わった。
ここからは米軍基地の空域なので、管制官は外国人だ。
コパイの返事を待たずに、私は左旋回させてくれるよう、管制官にリクエストした。
「Request heading 150.」
「Do you have the proceeding traffic Japan Air Boeing 747?」(管制官)
「Affirmative. We have him insight.」
「Do you accept visual approach?」(管制官)
へっ???
こんな空港から遠い所から Visual Approach くれちゃっていいの?
コパイの顔を見て言った。
「どうする? Visual しちゃう?」
「えっ? (こんなに空港から遠い所から Visual Approach やって)いいんですかね?
いいですか?」(コパイ)
「いいでしょ? 管制官がいいって言うんだし。
雲ないし、先行機見えてるし、空港の場所、分かってるし。」
「じゃあ、accept します。」(コパイ)
「OK. We accept visual approach.」
「All Nippon 465. Follow the traffic and clear for visual approach. Caution wake turbulence.」(管制官)
通常、ビジュアル・アプローチは空港からそう遠くない場所で開始する。
RABIT の手前、10km、つまり空港から100kmも離れている地点で
ビジュアル・アプローチが許可されたためし、過去にない。
土曜日で米軍機は休みなはずだし、休日に働かされてて、きっと、管制官、やる気がないんだ。
雲を避けるために機首を振るレーダー・ベクターのパイロットからのリクエストに、
いちいち答えるのが面倒だから、
『雲を避けたいなら、そっちで勝手にやってくれる?』
みたいなニュアンスでビジュアル・アプローチを許可した感じ、丸見えだった。
先行機のジャンボを見失わないように、かつ、後方乱気流に入らないように、
ジャンボより高めで、後にくっついて飛んだ。
大空を勝手に飛んでいいよ♪、という管制指示は滅多にこない。
私はとっても楽しかったが、コパイは時々首をかしげている。
これって、本当にいいの?あってる?みたいに、半信半疑だったのだろうか。
2006.05.19
仕事が終わり、ホテルにチェックインした。
いつもどおりフロントでカギを受け取り、エレベーターに乗って部屋へ行き、
カギを開け、ドアを開けた。
入り口は通路になっており、さらに先へ進むと・・・・・。
へっ???
最初に目に飛び込んだのは C.C. Lemon のビン。
ほとんどまだ中身が残っている。
掃除、まだ終わってないのか?と思いきや、
ナヌッ???
カウンターの上には、携帯電話の電源が。
あの四角い形状の電源に、コードをきれいにグルグルと巻きつけ、
輪ゴムできちんと止めてある。
四角のちょうど真ん中にくるように、直角に、きちんととめてある。
さらに奥へ目を移すと・・・・・、
ナヌィィィイイイイーーーーーーッ!?!?!?!
かばんがあるじゃん!?!!?
黒いボストンバッグだ!!
まだお客さん、チェックアウトもしてないじゃんかいっ?!?!
ハァァアアーーーーッ????!!!!
180度方向転換して入ってきたドアへと突進した。
お客さん、室内におるんちゃうか?
洗面所か??
他人の部屋に入るなんて、なんて失礼なっ!と思いながら、
目を伏せた状態で歩きつつ、
出しなに洗面所のドアをチラッと見たが、ドアは閉まっていた。
もう、ビックリ仰天だ!
たまたま部屋の外にいたホテルの従業員さんに声をかけ、状況を説明した。
フロントへ行くと、お姉さん、とっても恐縮しまくっていた。
イエイエ、僕はいいんですけど、
無断で部屋に侵入されたお客さんは、きっと、とても気分が悪いと思います。
こういうのって、本人に黙っておいた方がいいんでしょうか?
そんなこんなで、新しい部屋のカギをもらい、新しい部屋へ向かった。
通常、泊まる部屋よりずっときれいで大きな部屋だ。
ヘェ〜〜、このホテルに、こんな部屋、あるんだ?、と関心していると、
電話が鳴った。
フロントのお姉さんからだ。
なになに?
さっきの部屋のお客さん、チェックアウトしてたって????
そんなわけないですよ!!
私もかなり几帳面なヒトだけど、
携帯の電源をあそこまで丁寧に、神経質過ぎるほどキチッと巻き取って、
コードと垂直に、四角い電源のセンターにくるように輪ゴムでとめる、
なんてことしない。
それほど几帳面なヒトが、カバンを置いたままチェックアウトする?
おかしい。
絶対おかしい。
夜逃げでもしたかのような状況だった。
フロントのお姉さん、お客さんに電話するって言ってたけど、
何事もなかれば良いのだが・・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
どうしても気になったので、同期に電話して話した。
「朝、起きてさぁ〜、便所行ったら、ウ○コが浮いてて、
誰か部屋に入ったのかっ!って思ったことないかぁ?
そのカバン、ナオのだったんじゃないのぉ?」(同期)
そりゃぁ〜・・・・、そういうこともあった気がするけど、
でも、今回はそれとは違うケースだ。
「ナオが後で晩メシ食いに外に出てさぁ〜、
部屋に戻ったら、そのカバンがあるんだなぁ、きっと。
もちろん、ナオのカバンはなくなっててさ。」(同期)
イヤ、それ、キモイだろ、オイッ!!
「多分さぁ、明日起きたら、そのお客さんが隣で寝てるよぉ。」(同期)
やめてくれぇぇええ〜〜〜〜〜〜。
「やっぱ、それって、気になるわな。
その後、どうなったか、フロントに電話して聞いてみたら?」(同期)
そうだよ、そう言ってくれるのを待ってたんだよ。
やっとまともな答えが返ってきた。
恐る恐るフロントに電話してみた。
え゛ぇ゛え゛ぇ゛え゛ぇ゛ーーーーーっ!!!!
お客さんが見つかったですって???
要約するとこうだ。
Bさんが泊まるので、一泊分の予約をAさんが入れた。
Bさんは2泊するのだと思っていた。
Bさんは一泊した。
Aさんがフロントに現れ、Bさんのチェックアウトを済ませた。
BさんはAさんとホテルを後にした。
フロントのお姉さんは、Aさんに電話をした。
幸い、AさんとBさんは、まだホテルの近くにいた。
2人で荷物を取りにホテルに戻った。
めでたし、めでたし♪
2006.05.24
粗大ゴミの日♪
もちろん、有休をリクエストした。
狙いはシンちゃん用、14インチ or 16インチのチャリンコ。
先月の粗大ゴミの日は、キティちゃんの16インチの自転車が落ちていたが、
古くて錆びまくっていたし、車体全体がピンクなので、あまりにも息子が可哀想に思えた。
でも、補助輪は貴重なので、はずして持って帰った。
14インチ、16インチの自転車となれば、そろそろ補助輪をはずす練習をする頃。
補助輪がなしで乗れるようになったら、補助輪を燃えないゴミの日に捨て、
その後、自転車はボロボロになってから粗大ゴミの日に捨てる、というケースが多そうだ。
補助輪だけでも確保しておけば、補助輪なしの自転車でも拾ってこれる。
ピンクの補助輪(16インチ用)が、新たに拾われてくる自転車を待ちながら、
ここ一ヶ月間、我が家の庭で雨ざらしになっていた。
私は小さい頃から体が弱かった。
偏平足なので立っているとすぐに疲れる。
妻も偏平足。
息子には体力をつけさせたかったので、よく歩かせた。
目標は、連続3時間、歩き続けることができること。
疲れても、泣いても、決してダッコしない。
我が家の方針だ。
おかげで自転車に興味を持ってくれなかった。
12インチの自転車も粗大ゴミの日に拾ってきたが、ほとんど乗らなかった。
思えば、転勤シーズンの3月末、あっちこっちで16インチの自転車が捨ててあった頃、
拾って数台、確保しておけば良かった。
全く自転車に興味を持たない息子だったので、歩かせればいいや、と、
新しい自転車を拾ってやらなかった。
ところが、入園後しばらくして、自転車に乗り出した。
12インチは小さいので、大きい自転車を買ってやりたい、という母の希望を、
私はどうしても受け入れることができなかった。
買うなら14インチはすぐに乗れなくなるから16インチが良い、と当然考える。
しかし、平均より若干身長が低く、明らかに短足の息子には、まだまだ12インチがちょうど良い。
私にはそう思えた。
それでも、ママ友の子供達が、入園祝いに、と子供に16インチの自転車を買い与えているのを見て、
妻も買ってやりたくなる。
親として当たり前か。
「ジージとバーバに、入園祝いにお金をもらったから、自転車、買ってあげようよ。」(妻)
「お金の問題じゃない。
拾って直して使うことを教えることに意味があるんだから、自転車は絶対に買わない。」
言い出したら聞かない、完璧な頑固オヤジだ。
そんなこんなで、新しい自転車を早急に息子のために拾ってやらなければならなかった。
不思議なもので、欲しいと思って探しているときほど、捨ててないものだ。
過去の経験則から知ってはいるものの、
程度の良い子供用自転車がなかなか見つからず、私は落ち込んでいた。
家を出て、100mほどのところのゴミ捨て場。
以前、トミカが山ほど捨ててあった場所だ。
いいタイミングで男の子が成長している家庭が、きっと近くにあるのだろう。
チェックしてみると・・・・・・、プラレールのレールがかなり沢山、出してあるではないかっ!
ラッキ〜♪
待てよ・・・・・。
最近、オモチャ増えすぎたから、もう拾うな、と妻に言われているっけ・・・・・。
トミカは全部でバケツに2杯ほど拾ってきたので、たしかにもういらない。
でも、プラレールはまだまだ。
それに、レールは多いほど楽しいことを、自分の経験から知っている。
拾っとこうっと。
案の定、いくら探しても子供用、14、16インチの自転車は見当たらなかった。
また、来月も粗大ゴミの日に有休をリクエストしてるし、もう、今日は諦めるか。
おっ!
これは!
図鑑じゃんっ!!
先週、妻と昆虫の図鑑を買ってあげよう、という話をしていたっけか。
動物、昆虫、魚、鳥、貝と水の生き物、生き物の飼い方、地球、人間とからだ、全8巻。
とっても状態の良い百科事典だ。
カバーつきで、しかもひらがながふってある。
これは持って帰ろう。
家路についた。
結局、自転車はなかったなぁ〜。
30分も自転車をこぎ、あっちこっちを探したが、ダメだった。
ま、いっか。
家まであと100m、というところを通過。
お゛お゛お゛お゛ーーーーーーーッ!!!!!
見ーーーけっ!!
これは16インチだぞ。
補助輪はなし。
先月、拾っておいて良かった。
程度はまずまず。
MIFFYちゃんだけど、白に黄色の色使いがなかなか良い。
男の子でも許せる。
しかも National 製だ。
家の近くにあったなんて、なんて、ラッキーなんだ!
家に直行。
妻は8冊の図鑑を見て、場所をとる、と、最初はとってもイヤそうだったが、
中身を見て納得してくれた。
自転車もボチボチ喜んでくれた。
白と黄色のMIFFYちゃんの自転車に、早速ピンクの補助輪をつけた。
ピッタリだ。
でも、色がいかん・・・・・。
これからも程度の良い子供用自転車を拾いまくって、アップグレードしていくぞぉ〜♪
2006.05.25
伊丹 → 宮崎 → 中部 → 那覇 → 中部
上空は珍しく北北西の風。
那覇へ向かうときは到着に時間の余裕があり、
那覇から中部に戻る際、反対に時間が足らないケースだった。
中部発那覇行き、303便。
前便、宮崎からの到着は定刻だったにも関わらず、
隣のスポットからの Push Back と重なり、反対隣のスポットへの到着便と重なってしまい、
私達の Push Back は定刻4分遅れ。
この間に他のスポットから Push Back する飛行機に抜かれ、離陸は4番目だった。
さらに悪いことに着陸機も多数あったようで、離陸までに20分もかかってしまった。
これだけ遅れてしまうと、北北西の風による余裕はほとんど吹き飛んでしまう。
それでも、機上のコンピューターが計算する、那覇空港着陸予想時刻は定刻。
スポットインまでの時間を考えると、定刻5分遅れ程度を予想していた。
ところが、いつも通り那覇へアプローチする飛行機は多数あり、
私達は順番待ちで管制官に上空をあっちこっち引っ張り回され(ベクターされ)、
ジグザグ、ジグザク、時には飛行場から離れる方向に飛ばされ、
結局、到着は定刻18分遅れとなってしまった。
せっかく上空で飛ばしてがんばっても、これでは報われないのだ。
306便は案の定、定刻10分遅れで出発した。
客室乗務員(CA)さん達には、搭乗開始前のクルーブリーフィング時に説明した。
1.出発が遅れる。
2.上空が追い風ではなく、向かい風で時間がかかる。
3.中部空港の使用滑走路が、303便の出発時は36だったけど、306便の到着時は18で、
アプローチに時間がかかる。
3重パンチで、確実に遅れます、と。
那覇を離陸してすぐ、機上のコンピューターが中部空港着陸予定時刻をはじきだした。
15:45だ。
定刻が15:30だから15分遅れ。
着陸後、スポットインまでの時間を考えると、到着は15:50かな?
CA さんのアナウンスが聞こえてきた。
「到着は定刻20分遅れの、15:50です。」(CA)
だよな。
どう頑張ったって遅れるわな。
しかも、中部空港では航空局の飛行機がテストフライトしてるから、ILS
が使えないみたいだ。
VOR アプローチをやってるのか・・・・・。
303便の離陸時にもテストフライトで待たされたから、着陸も待たされるんじゃないかな?
下層は南西の風で追い風だった。
低空を上昇中、最大速度で飛び、1分は縮めることができたか?
涙ぐましい努力だ。
巡航は行きと違い、北北西の風ではなく、西北西の風に変わっていた。
ラッキーだ。
向かい風成分が減る。
それでも、コンピューターの予想では、到着時刻は15:45。
ぜーんぜーん、変わんないじゃーん!!
クッソーッ!!
那覇から中部までの予定航路はほとんど直線だが、
一箇所だけ、ジグザグになっている所がある。
そこを一番効率よくショットカットさせてもらえるよう、管制官にリクエストして飛んでいくと・・・・、
気がつくと着陸予定時時刻が15:40になっているではないかっ!!
ヨッシャ!!
俄然、やる気が出てきた。
中部空港へ向けて降下していく途中、コンピューターを見ると・・・、
おぉおぉーーーっ!?!?!
着陸15:36だってぇ〜?
ありえねぇーーーっ!!
でも、スンゲェー嬉スィ〜〜〜♪
中部の管制に入った。
無線を聞いていると・・・・、ナニナニ、航空局のテストフライト機が飛んでるな。
で、その飛行機は・・・・、これか?
計器にTCASが映し出す機影を見ながら考える。
キャセイもいるな。
減速させられてるな。
他には飛んでる飛行機はいなさそうだから・・・・。
ってことは、こっちがテストフライト機で、こっちがキャセイか。
空港のすぐ近くにいるテストフライト機は、管制官の周波数は
Tower に代わった。
かなり空港に近くにいる。
やっぱ、こっちの一番目の機影だ。
その後ろがキャセイで2番機だ。
うちはキャセイの次だろ?
キャセイとの間隔は20マイルちょっと。
これは・・・・、ひょっとしてVORしないですむかも?
Visual pproach 18、もらえるかもよ。
VORで飛ぶと、空港までの距離がかなりあるので、時間がかかる。
VORで飛ぶパターンの内側をショートカットできるのがビジュアルだ。
着陸まで3分は縮まるっしょ。
すぐにスピードブレーキを引き、高度処理開始。
キャセイはどこだ・・・・。
滑走路18の延長線上を目で追うと・・・、いたぁーーーっ!!
見ーつけっ!!
「先行機のキャセイ、見える?」
「いえ、見えません。 見えてます?」(コパイ)
「18ファイナルのちょっと手前に川があるじゃない?
あそこの川の先にコンビナートがあるでしょ? そのちょっと上。」
「えぇーっと・・・・・。 ああ、あれですか! 見えました!」(コパイ)
「見えた? 見えてるよね?」
「はい、見えました。」(コパイ)
「よっしゃ。 ビジュアルもらってくれる?」
管制官にビジュアルアプローチをリクエストした。
「Clear for visual approach runway 18.」(管制官)
きたぁぁぁあああーーーっ!!!!
空港まで15マイル、高度 8,000feet。
オートパイロットを切り、スピードブレーキをフルに引っ張った。
(オートパイロット使用時より、手動操縦の方が、スピードブレーキが2倍、きく)
5,000feet 以下では、許される最大降下率が
2500fpm(feet per minutes)。
250ktでスピードブレーキをフルにすると、それ以上の効果率が出てしまう。
手動操縦で 5,500feet までスピードブレーキをフルに使い、
5,000feet までにスピードブレーキを一旦たたみ、200ktに減速し、降下率を減らす。
フラップを1に降ろして、再びスピードブレーキ、フル。
190ktまで減速して 4,000feet でギヤ・ダウン。
ギヤが降りるのに合わせてスピードブレーキを2分の1にし、
Path に追いついてきたら4分の1にし、
最後にスピードブレーキを完全にたたんだ。
後はアイドルで降りていけば間に合う。
計画通り、1,500feet までに通常の3度の Path
に乗せ、普通に着陸した。
15:28!
あとは普通の速度で8番スポットに入った。
到着はなんと、15:32!!
定刻2分遅れにまで縮めることができたのだった。
次のクルーに飛行機を引き渡すとき、次便の客室乗務員(CA)さんに言われた。
「到着時刻、ものすごく早まりましたね♪」(CA)
最高のねぎらいの言葉に、長時間のフライトの疲れも吹き飛んだ。
明日も長い一日だけど、頑張るぞぉ〜♪
2006.05.27
那覇 → 新潟。
高高度は揺れていたので、25,000feet で計画した。
飛行計画の段階では、定刻に那覇を出発しても、
新潟到着は定刻20分遅れの16:20のはずだった。(定刻は16:00着)
高度が低いのでスピードが出ないのだ。
赤外線画像の雲の形を見れば、那覇から鹿児島などの九州から四国は、
30,000feet 後半は確実に揺れることが分かっていた。
事実、通常飛行する 30,000feet より上の高度は全て揺れていたし、
下は 27,000feet まで揺れているとのことだった。
那覇空港は定刻3分遅れで Push Back を開始。
那覇を離陸してすぐに客室乗務員(CA)さが、新潟到着時刻を機内アナウンスしていた。
16:20着。
この時点で飛行機に搭載されたコンピューターが計算する新潟空港着陸予定時刻は、16:10。
実際の到着時刻より、CA さんのアナウンスした時刻が遅い分には特に問題ない。
16:20に到着する、と言っておいて、
16:10に着陸し、16:13に到着する方が、その反対よりはマシだ。
25,000feet で水平飛行に移ってから、ベルトサインを消した。
それからしばらくして、CA さんにインターフォンで呼ばれた。
「お客様の中で、2名、新潟から佐渡に乗り継ぐ方がいらっしゃます。
乗り継ぎ便の出発時刻は16:20です。 一応、ご報告しておきます。」(CA)
あっちゃ〜。
それ、マズイじゃん。
実際には16:13着だけど、乗り継ぎにかかる時間を考えると、間に合いそうにない。
しばらくして、再びインターフォンで CA さんに呼ばれた。
「16:20発の佐渡行きが最終便だそうで、それに乗れないと今日は帰れないのだそうです。
間に合わなかったら新潟で一泊する、とおっしゃってます。」(CA)
そ・・・・、そんな・・・・・。
可哀想すぎる。
16:20の便に乗れるかどうか心配なお客さんにとって、絶望的よりは、
少しでも希望があった方がいいのではないか?
私がお客さんの立場だったら、正確な到着時刻を知りたいだろう。
「今、現時点で、新潟到着時刻 16:13 です。
そのようにアナウンス入れ直してあげてください。」
最初、25,000feet は気流良好だったが、
北へ行くほど少しずつ Cloud Base(上の雲の底)が下がってきており、
揺れだしたので、奄美近辺で仕方なく 23,000feet まで降下した。
到着予定時刻は、それだけで1分遅くなった。
さてどうしたものか・・・・・・。
中国地方にエコーの塊があったっけ。
美保の少し西から若狭湾の西ぐらいまで、山陰、山陽を覆っていた。
あの雲の中は揺れるだろう。
移動速度から察するに、私たちがあの辺に到達する頃、
あの雲の塊は西の端が美保、東の端が小松ぐらいだろうか?
飛行計画では大分を過ぎて岩国(広島)の近くを通り、美保に行き、
そこから小松へ向かう。
広島、美保の辺りは東京、中部、大阪と福岡、長崎などの九州北部を飛ぶ飛行機が
東西に行き交っており、とても混雑している。
その隙間を見計らって、管制官は広島の辺りから小松までまっすぐ飛ばしてくれることがある。
美保、鳥取、広島、岡山を通過する飛行機は、雲の塊を避けるため、みんな高高度で飛んでいるはずだ。
(中国地方は高高度が揺れている、というレポートは少なかった。)
23,000feet だったら誰も飛んでないはずだから、広島→小松の Direct をもらいやすいだろう。
でも、エコーに突っ込むと揺れるので、スピードを落とさなければならない。
かと言って、広島から小松 Direct を管制官にもらった後、37,000feet
まで上昇させてくれ、って言っても、
なかなかもらえないだろうなぁ・・・・・。
大分ぐらいから先に 37,000feet をもらって、広島では水平飛行に移り、そこから
Direct 小松をもらうか?
でも、きっと、今日は 37,000feet で東西に飛ぶ飛行機が多いだろうから、
Direct もらいにくいかもなぁ。
中国地方は FL350、FL370 は南西の風で100ktは吹いてたよな・・・・・。
広島から小松に行くなら、完璧追い風だな。
これを使わない手はないわな。
CA さんをインターフォンで呼んだ。
「14:50頃にシートベルトサインを入れて、10〜20分つけたまま雲の中を突っ切ります。」
種子島近辺を飛行中、カンパニー無線で中国地方の雲の状況を聞いた。
なになに、西の端は美保で、東の端は小松ってか?
予想通りじゃん♪
大分までくると、美保近辺の雲の塊が見えてきた。
うーーーーん、これは入ったら揺れるぞ・・・・・・。
あまり入りたくないなぁ。
広島から雲の隙間を狙って進路を東に向けさせてもらえるよう、管制官に要求した。
高度がまだ 23,000feet だったせいか、意外とあっさりくれた。
ここで、シートベルトサインON。
時刻は14:55。
ほぼ予定通りだ。
次に、上昇をリクエスト。
北東に向かって上昇すると東西を飛ぶ飛行機の邪魔になる。
自分も東西に飛びながら、東に向かって上昇する方が、管制官も調整しやすいかも。
すると、最初 29,000feet をくれた!
ラッキー!
TCAS が計器に映し出す機影を見ていると、
東から西へ向かって飛んでくる 30,000feet にいる飛行機を発見。
これが通り過ぎたら多分、FL370 くれる。
その飛行機が私達のほぼ真上を通過して、しばらくすると
35,000feet までの上昇を許可してくれた。
FL370 でなくても、FL350 で十分だ。
33,000feet を超えて上昇すると、ほぼ雲の塊の頂上が見えてきた。
もう雲を避けなくても大丈夫。
ここで、図々しくも、私は管制官に Direct 小松をリクエストした。
「Standby.」(管制官)
やっぱ、ダメかな・・・・・。
「All Nippon 466. Proceed direct Komatsu. Climb and maintain FL370.」(管制官)
ヨッシャーーーッ!!!!!
ありがとーーーーー!!!!
シートベルトサインを再びOFFにした。
なんと!
FL370 の風は220度の方向から110kt。
メチャメチャ強烈な、完璧真後ろからの追い風だ!!
コンピューターが計算する着陸予定時刻は15:58。
新潟のディスパッチには、乗り継ぎのお客さんのことは
ACARS で連絡してある。
466便の定刻16:00までに到着できれば、なんとかなるはずだ。
インターフォンで CA さんを呼んだ。
「到着時刻は16:00です♪
多分、もう少し時間をつめて15:58に到着するつもりです。」
「乗り継ぎのお客さん、乗れるでしょうか?」(CA)
「大丈夫。 必ず私が乗せてみせます。
2名のお客さん、一番前の席に案内していただけますか?」
「すでに一番前に案内してます♪」(CA)
「ありがとう♪」
幸い、新潟の使用滑走路は10だった。
小松方面から Runway 10 へは進入方向は真っ直ぐで最短距離だし、
着陸後もスポットインするまで最短コースだ。
着陸後、スポットインまで2分でいける。
降下を開始する前、シートベルトサインを入れた。
雲の中は揺れたが、27,000feet まで降りると風がぐっと弱まり、気流が安定した。
ここから加速開始。
安全運航は当たり前、当然中の当然なので、
国が定める法律と会社が定める規定は1000%守りつつ、
ヘッドウィンドシヤも考慮に入れなくてはならないので、
規定で定められる許容範囲の最大値より安全サイドで、
なおかつ可能な限りのMAXスピードでかっ飛ばした。
(以前、『定刻を守るために急ぐ』 内容の日記に、安全運航に関して心配のメールが寄せられましたので、
読者の方はみなさん理解されているとは思いますが、
念のため、くどいですが、安全運航に関して誤解がないように説明しておきます。)
新潟へのアプローチはVOR10。
それでも、十分到着は早かったが、さらに時間を短縮するために Visual Approach をもらった。
視程は良好。
空港はかなり遠くから見えていた。
「All Nipponn 466. Clear for visual approach runway 10.」(管制官)
イエーーースッ!!!
来た、来た、来たぞぉぉぉおおおーーーっ!!!
タッチダウン。
早めにリバースを戻し、オートブレーキを解除して、さくっと滑走路を出て、スポットまで一直線!
到着時刻は、なんとっ!
15:52だったぁ〜♪
エンジン・カットして、After PArking Procedure が終わった頃、飛行機のドアが開き、
PBBを地上係員に連れられて、いそいそと歩いていく夫婦の姿が見えた。
ご年配の方のようだった。
お客さんの全員の降機が終わり、コックピットを出ると、
CA さんが私の方へ小走りで向かいながら、大きな声で言った。
「キャプテン、ありがとうございました!」(CA)
「え? なに、なに?」
「佐渡に乗り継ぎのおばあちゃん、
感激して目をウルウルさせながら、『機長さんにありがとうとお伝えください。』
って言って降りていかれました♪」(CA)
そう、私に報告しながら、その CA さんもウルウルしていた。
私まで、危うくウルウルするところだった。(ちょっとしたかも?)
良かったぁ。
本当に良かった。
2006.05.31
能登空港へ行った。
私達が着陸する30分前ぐらいまで土砂降りで、
地面に当たった跳ね返りが、膝の高さまであったとか、雹が降ったとか、
その時間帯にアプローチ、着陸が重ならなくて、本当にラッキーだった。
折り返し羽田行きの便の外部点検をしているとき、セミを見つけた。
セ・・・・・セミ???
なんで能登に5月にセミがいるの?
しかも、ちいさっ!!
体長さ3cmぐらいだろうか。
ニイニイゼミよりう〜んと小型。
関西でよく見かけるクマゼミの赤ちゃんみたいだ。
セミの赤ちゃんって、セミか?
イヤ、セミの赤ちゃんは、幼虫だろ?
ありえん・・・・。
記念に連れて帰りたかったが、何年も土の中で生活して、ようやく出てきたセミさんがかわいそう。
写真を撮って放してあげた。