2007.02.03

久しぶりに稚内へ行った。(羽田 → 稚内 → 羽田、571/572便)
稚内到着予定時刻は13:00。
14:00頃までお昼ご飯が食べれなくても良いから、稚内の弁当がいいなぁ〜、
と思っていたが、当然のように羽田の弁当がついていた。
ガックリ。
当たり前か・・・・・・。

この時期、北海道方面に行くときは、出社前から天気をチェックし、
その日、一日がどうかなってしまわないかイメージする。
今日は稚内、千歳を含め、全国的にほぼ良好な天気が予想されていて、ちょっと安心♪
北海道の西に低気圧があって接近中だけど、恐らく私達の運航時間帯、
14:00頃までは、ほぼ間違いなく雪は降らなさそうだ。

羽田発稚内行き、571便はほぼ満席の予約だった。
そして代替飛行場として千歳をとっていたので、着陸重量が結構重い。
滑走路のコンディションが気になるところだ。
どれどれ・・・・・・。
おっ!
いいじゃん。
Dry、Dry、Good(Ice 20%未満の Coverage)
滑走路の全長2/3が乾いていて、
残り1/3のエリアは20%だけ氷がはりついてるけどブレーキングアクションGOOD。
これなら着陸重量が重くてもOKさ。
雪が降る可能性はほぼゼロだから、今よりブレーキングアクションが悪くなることはないはず。

羽田を離陸した。

上昇中、ACARS でメッセージが送られてきた。
んっ?
稚内空港、除雪のため12:50まで Runway Close?
雪が降ってないのに、どうして除雪してるの?
METAR を確認。
雪は降ってない。
DRSN か。
久しぶりに「DRSN」って書かれてるの見たな。
「『DRSN』、Drifting Snow って見たことある?」
いえ、ありません。」(コパイ)
「積もった雪が風に飛ばされて、滑走路の上をサーーーッて流れていくんだ。
 川みたいできれいだよ。」

そっか。
Drifting Snow で少し雪が滑走路の上に乗ってるので、それを念のためにかいておこう、ってことね。
雪が降ってるわけではないので、DRSN が積もって分厚くなることはないだろう。
DRSN はほとんどが路面上を流れるだけで、それほど堆積しない。
ブレーキングアクションが悪くなることはあるまい。

巡航高度は 36,000feet。
FL360 のエンルート情報では北行きは気流良好とのことだったが、
花巻で少しゴトゴトしたので 38,000feet の上昇。
その後は、北海道内までずっと気流スムーズだった。

コンピューターが計算していた稚内着陸予想時刻は定刻5分遅れの13:05だった。
羽田が混んでいて離陸前に待たされたからだ。
さて、と。
雲はスキャター程度だし、視程は良好なので、空港を遠くから視認できるはず。
天気は良いので、上空からの VOR Approach circling 26 をせず、
IFRをキャンセルして直接 Left Base を狙おうか。

1分でも早く着陸する作戦をたて、それに基づき通常より早めに高度を下げることにした。

降下を開始し、しばらくしてカンパニーが無線で呼んできた。
なになに?
へっ?
滑走路閉鎖が延長?
12:50に除雪が終わるんでしょ?

ほぼ同時に管制官が無線で読んできた。
All Nipponn 571. 稚内空港が除雪のため13:30まで Runway Close です。」(管制官)

ゲェェエエーーーッ!?!?
マジ??
どーゆうこと?
「カンパニーで状況聞いてみてくれる?」

へっ?
SLUSH?
この時期に稚内で SLUSH(SLUSH=シャーベット状の雪)はないでしょ?
気温低いんだからさ・・・・・。
って、+2℃かいっ!!
でも、雪は降ってないんでしょ?
雪が降ってないのに SLUSH になるってどういうこと?
おっかしいなぁ?
Drifting Snow は滑走路の上をなめるように流れていくだけだろ?
待てよ。
Drifting Snow が風に流されて滑走路面に流されてきて・・・・・・、
恐らくこの時期には珍しく気温が高すぎて、路面で雪が解けて濡れた状態になり、
その上にさらに細かい雪が流れてきて、濡れた部分で解けて、付着して堆積し、
それが長時間続いたためにシャーベット状になっているのか。
それしか考えられない。
でだけど・・・・・、Drifting Snow が SLUSH になったりするか?
Drifting Snow って、気温が低くて雪がサラサラだから風に飛ばされるわけでしょ?
SLUSH になる気温が高い時期は、雪がベチャベチャだから
風が吹いても表面の雪が飛ばされたりしないもんな。

すでに降下していたが 21,000feet で水平飛行に戻り、あわてて速度を落とし、
稚内空港の上空で待機する準備をした。
上空到着予定時刻は13:05。
着陸重量は満席だったし、万が一に備えて燃料も多めに積んでいたため、予想着陸重量は 130,000lbs。
滑りやすさがMG(MEDIUM to GOOD)以上でないと着陸できない。
SLUSH は 2mm 以下でも着陸不可能だ。

しばらくして13:00の天気を入手した。
030400Z 22027G42KT 9999 DRSN FEW020 BKN030 02/M04 Q0997 RMK 2CU020 6CU030 A2947

え゛っ!?
220度の方向から27ktで、ガスト42kt?
これって・・・・・、横風20kt超えてんじゃん?!
でも、まぁ・・・・、一時的だろう。
これより南に振らなきゃ、滑走路コンディションが GOOD ならタイミングを見計らって降りれる。
MG は横風15ktまでだからダメだ。
降りれたとして、着陸前、かなり揺れるんだろうな。
仮に 2mm 以下の SLUSH だったら、横風は15ktまで。
着陸重量は・・・・・、5,000lbs もオーバーじゃん?!
それだけ着陸重量を減らそうと思ったら、上空で1時間待機しながら燃料を燃やすしかない。
オルタネートの千歳と旭川の天気は・・・・・・、良好か。
SLUSH でも着陸できる機体重量まで燃料を燃やしてからアプローチしたとして、
強風で気流が悪くてゴーアラウンドしたら、そのまま千歳に向かわないと燃料は足らない、ってことね。
旭川だったら、もう一回ぐらいアプローチできるのか。

13:05に稚内上空に 21,000feet で到達し、Holding を開始した。
Minimum Holding Altitude は 3,000feet だから、除雪作業が終わり、
滑走路がオープンしてアプローチクリアランスが出るまでに 18,000feet 降下できる。
1,000fpm で降下するなら18分かかる。
13:30に滑走路がオープンするので13:12から高度を下げよう。

カンパニーで風をチェック。
風はおおむね230度の方向から30〜35kt程度。
30度 OFF だから横風成分は半分。
横風が15kt以下の時もあるようだし、20ktは超えていないようだ。
ってことは、滑走路コンディション GOOD から MEDIUM、SLUSH 2mm 以下なら風的にはOKだ。
重量的には SLUSH は不可。
MEDIUM to GOOD まで。

アナウンスを入れた後、アプローチクリアランスが来たあとの作戦会議。
上から見た感じ、所々雲に隙間があるからキャンセルIFRをする予定。
空港の北側が海なので、北側へ飛行し雲を避けながら 1,500feet まで高度を下げるけど、
あまり北に行くとソ連領に接近するから、決して10マイルより向こうには行かない。
グルッと左旋回して Direct right base に入る。
ゴーアラウンドは FD Off から。
シミュレーターと同じ要領で 400feet で加速して Flap 1 にして 1,500feet の right downwind に入る。
Auto Thrust だけ入れて FD とオーパイは入れない。
着陸予想重量から滑走路コンディションは MG までなら降りれる。
MG だと横風15ktまでOK。
SLUSH だったら着陸不可なので、さらに燃料を燃やすかダイバートするか、再度検討。

13:27頃には稚内空港の上空 3,000feet に到達。
とほぼ同時に滑走路オープンが報じられ、稚内空港への進入許可が出た。
滑走路コンディションは、All Section GOOD。
着陸重量はOK。
風は・・・・・・、230度の方向から30kt、ガスト36kt。
横風成分もOK!

ちょうどそのとき Holding Pattern を南向きに、空港から遠ざかる方向に飛行していた。
即座にIFRをキャンセル。
オートパイロットOFF。
左旋回しながら空港の真上を通過。
滑走路に対してほぼ直角に北へ飛び、滑走路からの距離が2.5マイルのところで再び左旋回。
速度150ktで30度バンク、270度旋回。
旋回半径はおよそ0.5マイル。
南西風だから幅2.0マイルの Downwind に入れる。

270度ほぼ回りきったところで、Downwind 幅が2.0マイルより広めになりそうだったので、
機首を right base の方向へ向けた。
風は引き続き230度方向から30kt、ガストで40kt弱。
ベースからファイナルにかけて気流は若干悪かったが、何事もなく Runway 26 に着陸した。

着陸後、ディスパッチへ行った。
この時期の稚内で Drifting Snow が SLUSH になることなんてあり得ない、と思いつつ
ディスパッチャーに聞いてみた。
すると、やはり2月の上旬に SLUSH になったことが過去になくて驚いた、とのことだった。
きっと暖冬のせいだろう。

コンピューター画面で赤外線画像を確認。
稚内の西にある低気圧と前線の位置は・・・・・。
ゲッ!
もう、すぐそこまで来てんじゃん?!
まずいよ、風向が変わる前に早く帰ろう。
「もし、もう少し早く低気圧が来て風が南に回ってたら、降りれなかったかもしれませんね。」
そうなんです。
 実は、風が弱まった時期があって、そこで風が変わるかな?って、一瞬、ドキッとしました。
」(ディスパッチャー)

571便で着陸したときは、雲はあまりなくIFRがキャンセルできたのに、
572便で Push Back を開始する頃は空は真っ暗、雲ビッシリ。
風は少ーし弱まってはいたが小雪が降り出し、横殴り。
地面から吹き上げているのか、上から振ってるのか、分からないぐらいだ。
とっとと稚内を後にした。

離陸後、稚内の天気をチェック。
すると・・・・・、
030544Z 22019KT 2300 -SHSN SCT007 BKN010 01/M01 Q0998 RMK 3ST007 7ST010 A2947
最低気象条件は視程2400mだったよな?
今、2300mでしょ?
サークリング Below じゃん?
危なかったなぁ。

572便は定刻15:45羽田着のところを16:19に到着した。
遅れてはしまったが、稚内に着陸できただけでも良かったのかもしれない。

次は弁当食いに行くぞぉぉおお〜〜〜♪



2007.02.07

羽田発能登行き、747便。
いつもどおりオープンスポットで、お客さんはバス案内だった。
飛行機に到着し、バスを降りたお客さんを眺めていたら、
薄いベージュのスーツに、薄い紫色のサングラスがとてもよく似合う、
大柄なスタイリッシュな男性と目が合った。
あれっ?
あの人、どっかで見たことあるぞ。
どこで見たんだろう?

記憶をサーチすること数秒。

あ゛っ!
あれって、元力士の輪島じゃないの?
いや、違うかな?
テレビで最後に輪島を見てから、もう何年も経ってるので違うかもしれない。
うーーーん、どうだろ?
あれは・・・・、どう見ても輪島だ。
やっぱ、そうでしょ。

また輪島さんと目が合った。
すかさず会釈してみた。
そしたら、輪島さん、会釈を返してくれた。
慌ててもう一回会釈したら、また返してくれた。

お客さんが全員搭乗を終え、ドアが閉まった。
旅客情報を伝えるため、インターフォンで客室乗務員(CA)さんがコックピットを呼んできた。
そこで聞いてみた。
「元力士の輪島さん、乗ってますか?」
ハイ。 1Fに座ってらっしゃいます♪」(CA)

そっか、そっか。
やっぱ、輪島さんだったんだ。

能登到着後、飛行日誌に必要事項を記載していた。
下を向いて字を書きながら・・・・・、
1Fに座ってた輪島さん、降りるのは早そうだ。
羽田で私に会釈してくれた、あの人懐っこい感じだと、
ひょっとするとPBBを通りながらこっちを振り返るかもしれない。
振り返った瞬間、また会釈しなくっちゃ。

そんな思いが一瞬頭をよぎり、視線を上げてPBBを見ると・・・・、
あっ!
輪島さん、いたっ!

他のお客さんに追い越されるほどゆっくり歩きながら、
こっちをチラッ、チラッと振り返っているではないか!?
やはり!
もちろん会釈した。
輪島さんも会釈。
私が会釈。
輪島さんが会釈。
その頭の下げ方が、ドモ、ドモ、みたいな、ヒョコ、ヒョコした動きでとっても可愛らしかった。

お客さんが全員降機してからコックピットを出ると、CAさんが輪島さんの名刺をくれた。
『キャプテンによろしく』って名刺をくれましたぁ♪」(CA)

なんとも柔らかい、暖かい笑顔だったなぁ。
もと、ファイターだ、なんて、信じられない。
あのヒト、絶対いいヒトだぁ〜。



2007.02.08

羽田でターミナル内を歩いていた。
そこは細い通路。
背中を少し丸め前かがみで、かなり早い速度で歩く人物が向こうからやってきた。
前と後ろにヒトを一人ずつ、従えて。
ニットのキャップを深くかぶり、ヒゲ、ボーボー、コートの襟を立てたかなりラフな格好だ。

誰だこいつ?
なんか普通と違うオーラが漂っている?
パッと見、小汚い感じだけど只者ではない雰囲気だ。

肩が接するほど接近し、通過するとき、チラッと顔を見た。
???
見たことあるぞ。
誰?

あ゛っ!
イチローだっ!

振り返ったが、もうずっと遠くに行ってしまっていた。
イチロー?
んなわけないか。
うちの整備さんか?
(整備さんにイチロー似のひとがいる。)
いや、あのひとはあんなオーラ出さないだろ?
やっぱ、イチローか?

一緒にいた同僚がしばらーくして言った。
今のヒト、イチローですよね?」(同僚)

やっぱりイチローだったんだ!




2007.02.21

千歳空港で外部点検を終え、機内に戻った。
早く体が温まるよう冷え切った上着を脱ぎ、客室乗務員(CA)さん達と出発前のクルーブリーフィングをした。
お客さんの搭乗時刻がせまっていたが、冷えると上空で小便に行きたくなるので、
コックピットに入る直前にトイレで用を足した。
トイレのドアを開け、客席に置いた上着を探したが・・・・・、ない?

あっ!
仲の良いCAさんが、私の上着を勝手に着て、そっぽを向いてすましている。
時には帽子をかぶっている場合もあるので、上着だけなら大したことはない。
でも、相手もリアクションを期待しているはずなので、大げさに反応した。

「あ゛ぁ゛〜〜〜。 上着ぎてるぅぅう〜〜〜〜!! 早く脱いでちょうだいっ!」
そう言いながら上着に手をかけた。
私も、もう approaching 40歳なので、上着がオヤジ臭でプンプン臭っているかもしれない。
恥ずかしいではないかっ!
早く脱がせてしまわないと。

あらぁ〜、男性に脱がされるなんて、ひ・さ・し・ぶ・り♪♪」(CA)

え゛・・・・・・・・、え゛え゛え゛ーーーーーっ!
どう反応すればいいのぉ〜〜???
うろたえつつも、作り笑いしてコックピットに逃げ込んだのだった。