2014.09.12

自宅から遠く離れた地で、アホな事をして前歯を折ってしまった。
折れ方が幸いしたのか、痛さはあまり無かった。
痛さよりも、とんでもないことをしてしまった、という後悔の思いで心が折れそうだった。
5月に指の骨を折ってしまったが、骨はくっつけば元に戻る。
折れた歯は決して再生しない。
幼い頃から歯は大切にしてきた。
ほとんど虫歯もない。
それなのに一番目立つ歯をほぼ根こそぎ無くしてしまい、本当に落ち込んだ。
折れた歯もどこかにいってしまった。

歯が折れたら、、、差し歯にするのか?
ほとんど歯医者に行かない私だから、知識が全くない。
痛みはないので折角来た遠くの地で遊んで帰っても良かったが、
心が萎えてしまって楽しめそうになかった。
目的地到着後1時間以内の事件。
もったいないけど今日は帰った方が良さそうだ。
そうだ、今から帰れば3時間で帰宅できるので、歯医者に行ける。
折れたままの状態を放置するのもどうか?
ばい菌が入ってさらに状況が悪化するかもしれない。
よし、とにかく帰ろう。

妻にメールして状況を説明した。
超、超、驚きつつもどんな処置をするのか調べてくれた。
差し歯以外にインプラントというものがあるのだそうだ。
何がどう違うのか分からないので、どちらもできる近所の歯医者を検索してくれた。
芸能人がお忍びで行くちょっと有名な歯医者が自宅から5分程度の所にあるのを妻が発見。
きっと腕が良いに違いない。
帰宅後、その歯医者に行くことを決めた。

帰宅道中、少し心にゆとりが出てきた。
いつかダイアリーにアップするかも、と考え、信号待ちしてる間に写真を撮った。
うーーーん、、痛々しい。


(Ugly な中年オジサンのアップ、、すんません!)

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よくチャリで通る道路沿いのその歯医者に到着。
虫歯とかと違い前歯が折れたせいか、緊急度が高かったのか院長先生が診てくれた。

「差し歯とインプラントがあると聞いたのですが、、、どうですか?」
「根っこが殆ど無いのでこれは差し歯は無理ですね。インプラントになります。」(院長)
「そうですか。。料金はいくらぐらいかかりますか?」
「一本50万円です。」(院長)
(ファーーーーーーッ○!?!?!?)と心で叫びながらも冷静に尋ねた。
「差し歯だったらいくらぐらいですか?」
「ピンキリですが保険が効くので一番安いので1万円ぐらいです。」(院長)
「絶対に差し歯は無理なんですか?
差し歯が1万円なら例えば差し歯で治療してみて、強度が足らず取れちゃったら、
インプラントにすればいいんですよね?」
「いいですか? この歯、歯茎から殆ど出てないでしょう?(鏡で見せながら)
ほとんど根こそぎ折れてるので土台が建てられないのです。
ですから、この歯は根っこから完全に抜いて、金属で土台を作り、そこに歯を指すのです。」(院長)
え ッ?! 根っこから抜いちゃうの? そんな……
「本当に、本当に、差し歯を試すことは無理なんですか? せっかくの根っこを抜くのはイヤなんです。」
「試すことはできますが、差し歯は絶対に取れますよ。」(院長)
「分かりました。。 それではインプラントでお願いします。」

心ポッキリ、完璧に折れた。
50万円! マジかよ!!
冗談じゃない。
参ったなぁ〜〜。
何てことしちゃったんだろう?

今日はばい菌が入らないように虫歯の治療同様、歯の神経を抜いた。
そして歯型を取って終了。
後日、日程の調整をすることになった。
最初は院長先生自ら歯の神経を抜く治療をしてくれたが、途中で若手の歯科医に代わった。
改めてその若い先生に尋ねた。
「この前歯、差し歯でいけませんかねぇ。」
「無理です。インプラントしかありませんね。」(若い歯科医)
私は50万円払うことを心に決めた。

インプラントの治療方法を聞いて、また仰天ビックリ、後悔の嵐。
外科手術じゃん!?
パイロット、手術すると長期休暇取らなきゃならないけど、
今年は5月の骨折で3週間も休んでしまい、今年はこれ以上休みたくない。
有給無くなって欠勤になっちゃうかもよ?
それに仮り歯の期間が長過ぎ。
借り歯では噛み切るどころか、食物を優しく噛むのもやめてくれ?
それが1年以上も続くの?
そんなの絶対ヤダっ!!!
もう、どーーすんだよ!!
あぁぁーーーーー、もぉぉーーーー、、困ったなぁ……
えっらいことしちまったなぁ。。

治療は連続で行われず、待合室で待つ時間があったので、
妻にインプラントの治療代をメールした。
ビックリ仰天、すぐにネットでインプラントについて調べてくれたようだった。
次の治療後の待ち時間中に、妻からの返信メールを見た。
なになに、インプラントの相場は 15〜35万円で、50万円という金額はどこにもない。
治療の仕方が違うのかもしれないけど、何かおかしい気がするので、
契約せずに帰っておいで、か。。

いつもは強気の私だが、今日は心が折れ、萎え、
「ハイ」と素直に何でも聞くムードだった。
次に来れる日を早く決めてくれと、妙に急かされた気がするが、
口からでまかせは私の特技。
外科手術の許可を会社に得なきゃならない。
歯はなくても困らないので、休日の関係でインプラントは来年に持ち越すかも。
などなど、適当な理由を並びたて、歯医者を後にした。

帰宅後、自分でもネットでインプラントの検索をしてみたが、
確かに50万円、という金額はどこにもない。
安くて15万円、高くて35万円。その差は指す歯の質によるようだった。

妻のママ友が通う歯医者でインプラントができる、と聞き、
セカンドオピニオンを聞くため、翌日、その歯医者へ行くことにした。

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そして翌日。

折れた歯を見せると、その折れ方の不自然さに、
何が起こったのか聞かれ、理由を説明し驚かれ、、、
というコミュニケーションを経て、直球で質問した。

「ところで、インプラントはおいくらですか?」
「・・・・・・インプラントは一番高いもので35万円ほどですが・・・・・」(歯医者)

やったぁぁぁぁああああーーーーーーーっ!!!!
マイナス15万円だっ!
良かったがなぁ、こっちの歯医者に来てみて。
セカンドオピニオンって大事だなぁ。
危うく騙されるところだったぜ!!

あれぁ、なんか先生の表情変だなぁ。

「どうしてインプラントがいいのですか?」(歯医者)
へっ???
「・・・・・イヤ、あの、
 こんなに根こそぎ歯が折れてたら、差し歯は無理かな?と思ったので・・・・」
「全然問題ないですよ。十分に根っこが残ってます。
(歯のレントゲン写真を見ながら)
 もっと根っこがないケース、例えばあなたの半分以下の場合も、
 うちではまず差し歯を試しています。
 せっかくある根っこを抜くなんてもったいないでしょう?
 もし差し歯が取れてしまってどうしようもなかったら、
 その時インプラントにすればいいじゃないですか?」(歯医者)

そーだ、そーだ、賛成、賛成、大賛成!!
あったりまえじゃんか?
残った根っこを抜くなんて勿体ない。
保険の効く差し歯で試してみて、ダメなら根っこ抜いてインプラントにすりゃーいいっしょ?
「昨日行った歯医者でも私はそう主張したのですが、
 私のこの状態では差し歯はできない、インプラントした無理、って言われたんです。」
「それ、どこの歯医者ですか?」(歯医者)
半径3km以内の近所の歯科だし、結構有名ぽかったから、名前を言ったら知ってるはず。
でも狭いであろう業界で、私が原因で問題が起こるのは面倒だ。
黙っておこう。
「イヤ、、、それは、、、内緒にさせといてください。」
「そうですか、分かりました。」(歯医者)
「ところで保険の効く差し歯だと料金はいくらになるのですか?」
「指す歯の種類によって全然違います。
 一番安いのは約1万円、高いのだと15万円ほどのものまであります。」(歯医者)
「それぞれサンプルはありますか?」

見せてもらった。
1万円の一番安いヤツは実際に噛む部分は金属でできていて、
その表面、前から見える歯の部分はプラスチックで歯の色、形をしている。
高級なものは、歯、そのもの、に見えた。
個人的には噛めればなんでもかまわない。
見た目を気にする年齢ではない。
「強度はどちらの方が強いですか? プラスチックが割れることはないですか?」
「噛む強さはどちらも同じです。 プラスチックが割れることも殆どないです。」(歯医者)
「元々、差し歯は無理でインプラント、と言われてるので、、、
 一番安い差し歯を入れてみて、問題なければそのまま、プラスチックに支障があれば差し歯を付け替え、
 差し歯がダメならインプラント、という順番はどうでしょうか?」
「それでいいと思いますよ。 では一番安い差し歯にしておきましょう。」(歯医者)

ヤッタァァァアアーーーッ!!!!!!!
これでマイナス49万円!!!

私の歯を診てくれたのは若い女性の先生だった。
女性の先生が席を離れ、しばらくすると年配の院長先生と一緒に戻ってきた。
「うちで治療していただけるのですね?!」(院長)
「は?・・・・」
「うちで治療する、と決めていただけるのですね?!」(院長)
「ええ、もちろんそのつもりですが、最初に行った歯医者になんて言い訳するかまず考えて、それから・・・」
「今、うちで治療する、と決めていただけますね?!」(院長)
なんか、顔つきが怖い・・・。
なんでそんなに急がせるのっ??
たった1万円の治療だよ。
うーーーんと儲けられる話じゃないんだから、
私がここで治療しようとしまいと、利益には関係ないでしょ?
何かある、、、気がする。。。
でも、、、1万円で治療してくれるっていうんだから、
本当は妻に電話して一応相談したいけど、まぁ、いいっか。
最初に行った歯医者には、何か適当な理由を考えて電話して断れば。

「はい、こちらで治療をお願いします。」
その言葉に、ちょっと怖い雰囲気の院長に笑顔が見えた気がした。
「では、今日、仮歯を付けて、次回、差し歯の治療を始めましょう。」(院長)
「仮歯って必要なものですか? 噛む強度はないと聞きました。
 食べるときに仮歯がついてると邪魔じゃないですか?
 前歯が1本抜けた状態で数日経つとギャップが狭まり歯並びが崩れてしまうから仮歯をつける、とか
 何か理由があるのですか?」
「イエ、数日、数週間1本歯が抜けた状態が続いたぐらいでは歯並びに影響はありません。」(院長)
「では、仮歯はいりません。」
「えっ?」(院長、他、スタッフ)
「・・・・・本当に仮歯はいらないのですか?」(院長)
「はい、必要ありません。」
「そのまま過ごすのですか?」(歯医者)
「ええ、だって、何の影響もないんですよね?」
「まぁ、確かに必要ないって言われればそうなんですけど。。。」(院長)
スタッフ全員が苦笑いしていたような気がする。
その意味が後日、明らかになった。

その日は、マイナス49万円の出費に超ご機嫌で帰宅、妻に報告した。
セカンドオピニオンの大切さをシミジミ感じつつ、最初に行った歯医者に何てウソつくか考えた。
「会社の同僚の友人の歯医者で、インプラントを安くやってくれるヒトを見つけたから。」
電話して、治療を他ですることを一方的に告げ、速攻切った。

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休日が終わり、会社に行った。
ニィーーーッと笑うたび、皆んなに笑われた。
「歯、どーしたんですかっ?」
心配した風な質問だが、だーれも心配した感じはなく、ほぼ Max 笑ってた。
当然、あまりにも恥ずかしい理由なので、何が起こったのか話したのは
それからだいぶ経ってから。

前歯がないって、笑いとれるんだね。
これいぃーじゃん、使える。
親からもらった大切な歯を不注意で折ってしまったんだ。
体張ってんだからさ、せめて笑いぐらいとんなきゃ。

飛行機に乗り込む。
お客さんが搭乗開始する前に、必ず客室乗務員(CA)とクルーブリーフィングをする。
そこで前歯を見せたら、笑いとれるかなぁ〜。
問題なのは、ちょっとでも笑って唇が開くと、歯がないのがバレてしまう。
私はいつもニコニコしてる。
特に飛行機に乗り込むときは大きな声でCAさんに声をかけ、
ニィー、と笑顔を見せてしまうから、唇が開いちゃうんだよな。
鏡の前で実験してみた。
しゃべるぐらいなら、前歯を隠しながら話すのは可能だ。
特に真面目な面持ちで、小さめの声で話すなら前歯は見えない。
でも、ちょっとでも笑おうものなら、前歯は丸見えだ。
しゃーない。
ムスッとした感じで静かな雰囲気で飛行機に乗り込もう。
普通のキャプテンっぽくするならそれが当たり前だから、
あれっ?キャプテン怒ってる?不機嫌?とCAさんに思われることはないだろう。

最初に一緒に乗務したコパイ。
関西人でノリの良い男だ。
私の前歯を見てゲラゲラ笑った。
最初の便の操縦は彼に任せることにした。
操縦を担当するパイロットがCAさんへのクルーブリーフィングも担当する。
CAさんへ前歯ネタをどう切り出すか、彼に任せることにした。

Shipへ向かった。
入り口に知ってる整備さんがいた。
あっちゃぁーーー、、、いつものように笑いながら声をかけることができない。
審査の時よりずーーーっと真面目な面持ちで、
いつもヘラヘラ話をする整備さんと業務の話だけして、
外部点検してすぐにコックピットへ戻り、こもった。
いつもどおり搭乗開始時刻の約20分前、クルーブリーフィングをするため客室へ出た。
エアバスには4名のCAさんがいて、立って待ってくれている。
いつもならニコニコ笑いながら客室へ出て行く私だが、
今日はニコリともせず、無表情な面持ちで出て行った。
(ちょっぴり、凛々しい感じのANAのキャプテンのイメージを醸し出せたかもしれない。)

「みなさん、お座りください。」(コパイ)
クルーブリーフィングが始まった。
「飛行機って、普通、全てのパーツが故障してない完璧に整備された状態で飛ばすものですが、
 時にはすぐには修理できない不具合を抱えた状態で飛ばすことがあるんです。 ご存知ですか?」(コパイ)
CAさん達は、何故、クルーブリーフィングでいつもはしないはずの話をコパイがするのか、
???という顔をしていた。
どんなネタでいくのかコパイに聞いていなかった私なので、この先どう進むのか、
???と私も思っていた。
「それをMELとかCDLっていうんですけど、聞いたことあります?
 例えば、コックピット内の照明の一部が使えない、とか。。」(コパイ)
私も含め、みんなシーーーンと静まり返っている。
「今日はですね、飛行機じゃなくてキャプテンの一部に不具合があるんです。
 さて、それはなんでしょうか?」(コパイ)
そーきたか。
CAさん達、顔を見合わせたり、私を見たり、????という顔になり、
数秒でなんて答えたらいいか見当がつかず困った感じの表情になった。
そこで・・・
それまで糞真面目な表情をしていた私は、突然、ニッコリ笑った。

「え え え ーーーーーーーっ!?!?!?!?」(CAさん一同)

偉いなぁ、と思ったのは、笑ったのは1名だけだったこと。
他の3名は「どうしたんですか?」、「大丈夫ですか?」と本気で心配してくれた。
ネタをバラしたので、飛行機の入り口のドア外で待機していた整備さんとこに行って、
実はぁ、と笑いながら前歯を見せたら、整備さんは「どうしたんですか?」と言いつつ笑ってくれた。
「すみません、整備さん。僕、飛行機に乗り込む時、無愛想だったでしょう?
 ちょっとでも笑うと、歯がないのが見えちゃうんですよ。
 せっかくのネタなんでできるだけ唇が開かないように静かーにしてたんです。」
「なーーんだ、そうだったんですね。 いや、おかしいなぁ?、と思ったですよ。
 いつもニコニコしてるのに、今日はやけに怖い顔してるからどうしちゃったんだろう?って。」(整備)
クルーブリーフィングに戻り、必要事項をCAさんに伝え、搭乗開始前にコックピットに戻った。

「イヤー、全然、笑わなかったですね。 絶対ウケると思ったんですけど。
 滑っちゃいましたよ。 すみません。」(コパイ)
「いやいや、初対面だからしょうがないよ。
確かに、前歯が折れてるの見て、初めて会ったヒトを指差して笑ったら、失礼だもんな。」
二人でコックピット内で反省会のデブリーフィングをした。

上空でインターフォンでCAさんと話しをし、何度か受け答えしてると、
クルーの雰囲気が伝わって、徐々に打ち解けていった。
初便が終わった後、客室に出て行ったら、普通に笑って突っ込んできた。
「どーしちゃったんですか? その歯?」(CA)
「初対面であんな振りから無い歯を突然見せられたら、
 そりゃーどう反応していいか分からないですよ♪」(CA)

「なんで折れたか、理由はさておき、前歯ないと結構便利なんだよねぇ?。」
「え?」(CA)
「紙コップにストローつけてくれてるでしょ?
 さっきの便で気がついちゃったんだけどさぁ、
 歯が無いと口をつぐんでても、お茶、飲めちゃうんだなぁ。
 だって、ほら、こーーんな感じでストローが入っちゃうんだよねぇ〜。」
空の紙コップを持ってストローを咥えて見せたら、ようやくCAさん、笑った!
「でもね、結構、困っちゃうのがさ、
 ご飯食べてて、例えば米を咬んでるとするでしょ?
 呼吸して息を吐くと口から米粒がピューッって飛んでくのよ。
 歯の隙間通って、唇の隙間通って飛んでっちゃうんだよね。
 それ、相手の食器にはいっちゃったりしたら最悪でしょ?」
米の飛んでく様子をジェスチャー付きで話したら、CAさん笑った、笑った、ゲラゲラ品なく笑った。
それを見てた、聞いてたコパイも笑った、笑った。
それから後は、スゲェー楽しい一日になった。

次の日は、クルーブリーフィングまでは無表情で唇を開かないように気を配ったが、
クルーブリーフィングは私が担当、まどろっこしい話しは抜きで、
無表情からいきなり笑顔で、おはよーっ!と声をかけ、ニィーッと笑って見せたら、
全員ゲラゲラ笑ってくれた。
あれぇー、おっかしいなぁ〜、と思ってたら、CAさんが教えてくれた。
「キャプテンが乗ってくる前に、整備さんが教えてくれたんです。
 今日のキャプテン、前歯が1本ないよ、って。」(CA)
え え ーーーーっ?!?!?!
体張ってギャグ取ろうとしてるのは私なのに、ネタをバラしちゃダメでしょ?
まぁ、でも最初から笑ってくれればいっか。

クルーブリーフィングを始めた。
私は真面目な話しをしてるのに、CAさん、私を見てすぐに目をそらし、
下向いて笑いを噛み殺し、前を向いて私を見て、またすぐ下を向いて目をそらし、
を4人が4人とも繰り返してる。
しまいにチーフパーサー(CP)言われた。
「お願い。顔見てると笑っちゃってちゃんと話が聞けないから、
 キャプテン、向こう向いてしゃべって。」(CA)
それを聞いて全員、笑った、笑った、猛烈に笑った。
ずっと堪えてたんだろうね。
止まんなくなって、しばらーーくたったら、後ろの二人は涙が流してたさぁ〜♪

それからというもの、歯が無い、という衝撃を初対面でも心配させずに笑かす術を身につけ、
クルーが代わる度にCAさん達を笑いの渦に巻き込んだ。
結果的に数名は必ず涙を流すまで笑い転げ、、、、
あぁ、これじゃ、仕事になんない・・・・。
私はそう悟った。

次の休みの日に歯医者に予約を入れ、仮歯をつけに行った。
若い女性の歯医者に聞かれた。
なぜ今、気が変わって仮歯を付ける気になったのか?
理由を話したら、先生も笑った、笑った、大笑い。
仮歯はなぜ付けなきゃいけないのか?
それは、アホすぎ、間抜けすぎる容姿に他人が自分を直視できないから。

(こんな感じの顔じゃあ、CAさん達、直視できなかったんだろうなぁ〜♪)


(差し歯を取り付けるためのパーツがセッティングされた)

完璧に差し歯とは別件だが・・・。
左の鼻の穴から鼻毛が一本出ていることに後日気がついた。
ショックだったなぁ〜。。
若かった頃はこういうことにも気を使えた。
ジジイになったなぁ〜、、と実感したさぁ〜〜♪(TT▽TT)


歯を折ったあの日、目の前が真っ暗になるほど本当に落ち込んだが、
これだけ笑いを取れ、まっ、せーせーしたよ。

そうはいっても差し歯をつけて数ヶ月、
安物で本体が金属のせいか、口の中のそこだけ冷たく、
やっぱり自分の体じゃないものが入ってる、という違和感を覚え、
事ある度に後悔してる。

さらに約半年後、鏡を見てビックリ。
歯が、、、欠けてるっ!?!?!?

え、ぇ゛〜〜〜〜?!?!
なんで、なんで、なんでぇ〜〜〜〜??????
固いもの咬んだっけなぁ?。
記憶にないなぁ〜。
あぁぁ〜、前日、酔ってて何食べたかも覚えてない。
昨晩、何か変なものかじっちゃったのかなぁ〜〜。。

それから約半年、私生活が忙しすぎて歯医者に行く暇がなく、欠けた歯は放置していたが、
あまりにも見た目がアホだし、青ノリがくっついてる様にも見えるし、
歯医者に行って直してもらった方がいい、との妻のアドバイスがあり、
直せるはずがない、と思いつつ、差し歯してくれた歯医者にアポなしで行ったところ、
やっぱり、抜いて、新しいのを入れる以外に方法はない、と言われ、
2015.11.05 現在、欠けた歯のまま放置している。
まぁね、アホに見えるのはゆる〜い印象を他人に与えてとても良いので、
このまま放置しておこう。
でも、時間がないからと歯石を取ることもせず、1年以上、歯を放置するのもどうしたもんか。。
歯医者にいかなきゃ!!