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沢山見に行く
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私達夫婦は家が大好きで、冷やかしで見に行くのが夫婦共通の趣味だ。
良いものがあれば買ってもいいが、会社の借り上げ社宅制度もあるし、無理に急いで買う必要はなかった。
じっくり選ぶ余裕が与えられていたのが良かったと思う。
家を買おう、と思って探すとどれも素敵に見えてしまうので、
家を買うつもりが全くないときに、沢山見るのが良いと思う。

自分が買うであろう価格帯の物件のほか、
確実に手に届かない物件、ちょっと背伸びすれば届く物件、買うはずのない安過ぎるものまで、
新築の分譲住宅、中古物件を問わず、休みの日はよく見に行った。
きれいでも安っぽい新築分譲住宅もあれば、中古で築15年を超えていても立派で高級なものもある。
数を見ることで、使われている材料、建て方、職人さんの仕事の丁寧さ等、見極める目が養われると思う。
角地、南向き、北向き、旗状の土地など、
土地の値段がどういう風に決まっているのかも、想像できるようになる。
チラシの目玉で土地が広いのに安い物件などは、それなりに理由があることが分かってくる。
税務署で路線価を調べつつ、その付近の物件を物色するのも面白い。
うまいこと値段がつけられている。
また、路線価にも何種類かあることが分かってくる。

自己破産して持ち主が夜逃げした家や、裁判所の持つ競売物件も見た。
住人が残していった洗われていない食器や、散らばったままの生活用品を見て、
妻は薄気味悪い、と感じたようだった。
しかし、そういう家を見ておくと、通常の中古物件に抵抗がなくなってくる。
誰でも新しいものの方が良く見えるものだ。
安っぽい新築物件と古めかしい高級な中古物件、どちらが価値があるか、
正当に評価できるようになるためには、その価値観を捨てなくてはならない。
持ち主が住んだままの状態で売りに出している中古物件があるが、
これらを見ることに最初は抵抗があった妻も、段々抵抗がなくなってきた。
他人の生活空間にづかづか入り、ジロジロ見て回るのは、意外と抵抗がある。
しかし、ここでもよく見ることが大切だ。
どんなにしっかり建てられた家でも、使う人が雑だと家が傷む。
整理整頓されている家庭、水周りをきれいに保っている家庭、要所要所を抑える勉強になる。

付近の土地の相場から、あまりにも安過ぎると思われる物件を見に行ったところ、
そこで殺人事件があった、といったケースもあった。

中古物件の場合、広告に初めて出る物件は、
売主が少しでも高く売ろうとするため、市場の相場より割高な場合が多い。
(これも、沢山見ているから分かるのだが)
今回、購入した家は、初めて広告に登場したのに、価格設定が妥当であることがすぐに分かった。
持ち主がよっぽど売り急いでいるか、不動産屋さんの意見を聞き入れる理解ある持ち主、と考えられる。
後者の場合、人格から判断して、家もきちんと管理していると思われる。
持ち主と直接を話した時、恐らく後者ではないか?と思われた。

家を見た瞬間、妻は 「これっ!」 と感じたらしい。
私も見た瞬間、これを買わなかったら一生何も買えない、と何の迷いもなかった。
そして見に行ったその次の日に仮契約していた。

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