去年(2003年)の11月に欲しい中古物件が見つかり、その3日後に仮契約をした。
持ち主は2004年の3月31日に引っ越すことが決まっていた。
何にでもせっかちな私なので、そんなに待てな〜いっ!!と思ったが、
先方の都合上、仕方ない。
結婚も電撃だった私にとって、「待つ」 という、人生で初めての試練だった。
ジョギング・コースの途中にこの家があったことから、休日に走りに行く度に前を通り、
ジロジロ眺めながら思ったものだ。
もう少しでこのおうちが手に入る〜♪ 我慢、我慢。 後、○○日の辛抱だ。
あ〜あ、おうちのことばっかり考えてて、もう頭がいっぱいだぁ〜。
機長昇格訓練はゴールデンウィーク明け頃って決まってるっていうのに、
全然勉強が手につかないじゃんかよぉ〜。
築18年の鉄骨の家(ヘーベルハウス)で、丁寧には使われていたが、やはり中も外も古く見えた。
全面改装をする予定だったので、リフォームに時間がかかる。
一か月で終わるかなぁ〜?
終わらなかったら、リフォームの途中で訓練に突入かぁ〜?
ギリギリ、リフォームが間に合ったとして、訓練直前に引越しするのは辛いぞぉ。
アトリエは工具の山で移動不可能に見える。
裏庭のウェイト・トレーニング・ジムをどうやって移設しようか?
借家で屋根までつけたジムだから、屋根の撤去もせにゃならん。
家の中には分解したバイク(750cc)のパーツがあちこちに転がっている。
一番厄介なのは、エンジンだ。
こいつはマジ重い。
そりゃ鉄の塊だから当たり前か。
普通の引越しとはわけが違うから、どこから片付けていいのか分からない。
購入したおうち、庭は和風で植木が密集していたが、妻と私の趣味には合わない。
洋風に造り変えたかったが、外溝工事は意外とお金がかかる。
私が外溝工事をしてみて、もし失敗したら工務店にお願いする、というのはどうか?
妻は、外溝工事など未経験の私一人で、
妻が満足のいく仕上がりにするのは不可能、と考えていたようで、
私が妻の反対を押しきった感じだった。
確かにそうだ。
私は庭造りをしたことが今までに一度もない。
妻が希望するオシャレなカフェのお庭風の雰囲気を出せるかどうか?
素人がやったっぽくてはダメなのだ。
妻が妥協してくれたとしても、私自身がイヤだ。
家を買う、ということは一生で何回もあることではない。
当然、庭を造る、という行為も一生で何回もあるわけではない。
何でも自分でするのが好きだし、不可能と思われるとこを成し遂げるのは快感だ。
さらに、妻に 「できっこない」 と思われれば思われるほど、闘志が湧いてくる。
私にとっては、良いホームページ・ネタでもある。
自分一人でする、となると、10mある生垣を撤去するのは無理、と判断。
生垣は残し、その内側を素敵なお庭に造りかえることにした。
ただ、洋風の庭が希望なので、日本風の30年前からある生垣は似合わないような気もした。
この程度なら妥協してもいいか・・・・。
作業工程をイメージする。
物件の引渡し日から3日間、連休を取ろう。
引渡しの直後、リフォーム屋さんが来て、まず解体工事をする。
そのとき、必ずゴミが出るからゴミを運搬するトラックが来るはずだ。
解体工事にかかる数日の間に抜いた植木、ひょっとすると持っていってくれるかも。
解体工事が終わるまで全ての植木を抜き終え、
その後は休みの日に、アトリエを片付け、その他必要のないもののパッキングをし、
引越しの1週間前にジムの解体作業をしよう。
体、もつかなぁ・・・・。
植木を自分で抜く、という話しを、
今回リフォームしてくれた工務店の社長さんにしたところ、
「休みの日に毎日作業したとして、きっと1年以上かかりますよぉ♪」 と言われてしまった。
すかさず、「それ見ろ」、という表情をした妻。
イヤ、イヤ、負けてなるものか。
3月いっぱいかかってリフォームの打ち合わせをした。
そして、3月26日に生まれて初めてローンを組んだ。
借金は嫌いだが仕方ない。
よく映画で見る光景。
ジュラルミンのアタッシュケースに大金を入れ、麻薬取り引き現場に持っていく。
相手がカバンを開け、札束の一つをとり、バラバラと紙幣を確認する。
そして、アタッシュケースを手渡した男は言う。
「You wanna count ?」
あぁ〜〜〜っ。
あれ、やってみたかったなぁ〜。
あれをするのが、夢だったんだよなぁ〜。
そうすれば借金しないで済んだし。
でも、そんなに持ってないもんなぁ〜。
もう、家を買うことはきっとないはずだし、一生、あれ、できないんだなぁ〜。
悔しいなぁ〜・・・・。
植木を抜くための準備、開始。
ホームセンターで1000円でスコップを1本買った。
体力を温存するためにジョギング、ウエイト・トレーニング等、全てを1週間停止した。
3月31日に引渡し。
後でホームページに 「ビフォー&アフター」 をアップするために、写真撮影を開始。
家の内装の写真は撮ったが、庭の写真を撮り忘れてしまった。
写真撮影後、ささやかながら、持ち家の感動に浸りながら、現地でピザハットの宅配でピザパーティーをした。
あくる4月1日から予定通り、解体工事が始まる。
私も予定通り3日間、連休をとっていた。
食べ終わってすぐ、シンちゃんと妻を追い返し、植木の撤去に取り掛かった。
1日目
予想以上に大変だった。
植木を抜くために、そこらじゅうを深さ30cmは掘り返す必要があったが、
土の中にジャリが多く含まれており、体重をかけてもスコップが全然入らない。
焦った私は何度も何度も力の限りスコップを叩き込むように土に突き刺した。
1cmずつぐらいしか掘れない。
それでも力の続く限り続けた。
手のひらを強打し続けたため、手首から先がジンジンした。
幸い手袋とテーピングはしていたので、皮は剥けずにすんだ。
ずっと前傾姿勢で腰が立たなくなってきた。
この調子で作業をしたら、3日ももたないかもなぁ・・・・。
不安がよぎったが、止めるわけにはいかない。
約5時間、土を掘り続けた。
その間、もちろん休憩はなし。
暗くなり、作業を終え、腰が曲がったままなんとか車に乗りこんだ。
家についてもシートから出たくない。
このまま、ここに座っていたいなぁ〜。
手のひらの皮から骨にかけて、ジンジンした感じが寝るまで続いた。
明日も作業をすることを考えると、
テーピングをしていて皮が剥けずに本当に幸いだった。
2日目。
次の日起きると腰が抜けそうだったが、まだ動けたので現地に向かった。
リフォーム屋さんが来ていた。
植木を捨てる件、聞いてみると・・・・・、OKが出たっ!
超、スーパー・ラッキーなのだ!
疲れてはいたが、やる気がでてきた。
両方の手のひらはボロボロ。
スコップを握る握力も半減していた。
これ以上スコップは握りたくない。
どうしよう・・・・。
問題なのは土にジャリが混じっていて、簡単に土が掘れない、ということだ。
手のひらが痛くて作業が進まず、どうしようかと途方に暮れているとき、
前の持ち主が置いていったクワが目に入った。
あれを使ってみよう。
使ってみると、なんと仕事のはかどること!
スコップより軽いし、握り方が違うので、手のひらが痛くない。
クワで土を掘り、軟らかくなった土をスコップでどける、という方法に転換したところ、
作業のスピードが大幅にアップした。
とはいっても、やはりずっと前傾姿勢なので腰はつらかった。
この日は丸1日作業した。
「こんなことをしていて良いのだろうか? 機長昇格の勉強、全然してないけど大丈夫だろうか?」
時々、心配にはなったが、そんなことを考え、思い悩んでいる余裕はなかった。
2日間で低い植木のほとんどは抜き終わった。
私は、もともと体が弱い。
過労ですぐに熱を出すタイプだ。
今回の植木の撤去作業の間、熱を出して倒れ、
連休明けの勤務を休む事態にだけは陥りたくなかった。
2日目を追え、体は衰弱し切っていたが、
なんとか、植木の撤去が完了する前に自分が倒れないであろう、
という、めどがついた感じだった。
こんなに動いても、まだ無事でいる自分に、
本当に体が強くなったなぁ〜、と思わざるにはいられなかった。
きっと、ウエイト・トレーニングとジョギングのおかげだ。
3日目。
高さ3〜4mある木を3本抜いた。
これも結構、きつかった。
家の解体屋さん、外溝の工事もしているらしかった。
「こんな木、ユンボだったら一発で抜けるなぁ。」
「へぇ〜、やっぱり機械ってすごいですねぇ。 どれぐらいで作業終わります?」
「30分ぐらいかな。 兄さん、頑張るねぇ〜。 でも、まだまだ掘らないとな。
根っこ、はってるから。」
一瞬、戦意喪失しかけたが、すぐに気を取り直して作業を続けた。
そして、全部、抜いたぞぉぉぉぉおおおお〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!
いきなり!黄金伝説。 「芸能人節約バトル! 1か月1万円」 で濱口が
「タコ取ったどぉぉぉおおおーーーーーーっ!!!!!!」
と雄たけびの声を上げているシーンがあったが、まさにあんな感じだった。
植木、抜き終わったどぉぉぉおおおーーーーーーーっ!!!!!
男は、一度やる、と決めたら、死んでもやる。
そんな信念を持ち続けて今まで生きてきたが、
今回ほどピンチだったことはなかったような気がする。
とてつもない充実感を味わうことができた。
3日目は半日で仕事を終え、服は土と汗でドロドロ、心は爽やかに帰宅したのだった。
走ったり、ウエイト・トレーニングを始める前の昔の私だったら、
きっと1日目で熱を出していたのではないか?と思うほど働いた。
疲れの具合は、過去の経験と比べてMAXだった気がするが、
激務の3日間を終えて次の日の朝、体は無事だった。
特に支障なく動ける。
生垣まで引っこ抜く余裕、あったかも・・・・・。
なんとか目標どおり作業を終えて、2泊3日の仕事へ向かった。
4月の残りの休みは、引越しの準備に追われた。
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